第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグの6回戦が進行中。11月14日(火)には羽生善治九段―永瀬拓矢九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相居飛車の力戦を113手で制した羽生九段が4勝目を挙げて挑戦権争いに踏みとどまりました。
相掛かり空中戦
羽生九段3勝2敗、永瀬九段4勝0敗で迎えた本局は挑戦権争いに向け負けられない直接対決。羽生九段は敗れれば挑戦の可能性がなくなります。羽生九段が矢倉を志向して始まった対局は駆け引きのすえ相掛かり調の力戦に進展しました。
横歩を取って一歩得を果たした先手の羽生九段は左銀を前進させて攻勢をキープ。自陣の桂取りを手抜いて攻め合ったのが好着想で、手にした角を敵陣に打ち込んで馬にした局面は羽生九段有利を思わせます。しかし迎えた終盤に山場が残っていました。
超難解な終盤戦
守りの時間が続く後手の永瀬九段ですが持ち駒の金銀を盤上に打ち付けて「負けない将棋」を展開。盤面全体を使った押し引きののち、羽生九段が詰めろとなる銀打ちで下駄を預けた局面が最大のポイントとなりました。羽生九段の玉は王手が続く形でいかにも危険です。
一分将棋になるまで考えた永瀬九段は銀と桂を犠牲に詰めろ逃れの詰めろをかけますが、対して羽生九段の打った守りの金打ちが冷静な決め手。局面が落ち着けば駒得が生きるという大局観で、こうなると駒損の永瀬九段からは有効な追撃がありません。
挑戦権の行方は最終日へ
終局時刻は19時1分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた永瀬九段が駒を投じて激戦に終止符が打たれました。これで勝った羽生九段は4勝2敗で今期リーグをフィニッシュ。4勝1敗で並ぶ永瀬九段および菅井竜也八段の対局結果を待ちます。
11月22日(水)に行われる最終7回戦の一斉対局では永瀬九段と菅井八段が①ともに勝った場合はこの両者でのプレーオフ、②ともに敗れた場合は羽生九段と永瀬九段のプレーオフが行われることになります。
水留 啓(将棋情報局)
この記事へのコメント、ご感想を、ぜひお聞かせください⇒コメント欄