第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は5回戦が進行中。11月13日(月)には佐藤天彦九段―豊島将之九段戦が名古屋将棋対局場で行われました。対局の結果、四間飛車対居飛車の対抗形を76手で制した豊島九段が5勝0敗として単独首位キープに成功しました。

天彦流の四間飛車

豊島九段4勝0敗、佐藤九段1勝3敗で迎えた5回戦は挑戦と残留どちらを目指すにも負けられない戦い。先手番を得た佐藤九段の用意は四間飛車でした。これを受けたSNS上は「王道の四間飛車だ」「天彦先生振ってた!!」とファンの歓声で溢れます。

一方で居飛車側を持った豊島九段の選択はトーチカ囲い。持久戦にして玉の堅さを主張する狙いが見て取れます。実戦は豊島九段が金銀4枚の堅陣を完成させようかというタイミングで佐藤九段が中央から戦端を開きました。

歩の手筋連発で豊島九段快勝

中飛車に振り直した佐藤九段は盤上左方にただよう後手の角をターゲットに攻めを展開しますが、ここで後手の豊島九段に好手が出ます。銀での角取りを手抜いて飛車先突破を優先したのがそれで、ここは駒損でも自玉の堅さが物を言うという大局観が光りました。

リードを許した佐藤九段も底歩の受けでなんとか戦いの長期化を図りますが豊島九段は歩の手筋で先手の受け駒を翻弄。①成り捨ての歩から②垂れ歩そして③タタキの歩という歩の手筋の3連打が決まっては佐藤九段の玉は一手一手の寄り形です。

終局時刻は21時24分、攻防ともに見込みなしと認めた佐藤九段が駒を投じて豊島九段の勝ちが決まりました。これで勝った豊島九段は5勝0敗で単独首位をキープ。敗れた佐藤九段は1勝4敗の厳しい星取りとなっています。

  • 豊島九段は佐藤九段との直近15局すべてで勝利を収めている(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

    豊島九段は佐藤九段との直近15局すべてで勝利を収めている(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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