もっといい自転車に乗ってみたい。そんな希望を安価で叶えてくれるのが、中古マーケットだ。少しでも安く中古ロードバイクの入手方法は、大きく分けて個人売買か専門業者の2パターン。新未使用やレアなパーツや完成車以外は業者から買う方がリスクは少ない。
個人売買のほうが安いこともあるが、売り手の希望額と市場価格に差があることも。その点、業者は頻繁に価格の見直しをしているため、コンディション相応の値付けがされている。いずれにせよ、欲しいモデルが決まっているなら相場を調べるところから始めよう。
■妥協してはいけないポイント
はじめてのスポーツバイクならば、モデル選びはさほどシビアにしなくてもいい。どんなに知識をつけたところで、自分の好みが分かるようになるのは、それなりの経験を積んでからだ。
しかし、ラフにフレームサイズを決めるのはNG。“少しぐらいフレームサイズが違っても、パーツで調整すれば…”と思いがちだが、そうではない。フレームサイズが違えば、ハンドルやステム、クランクなどのサイズも異なる。
限られた予算の中で値引き率の高いバイクを選びたくなるが、高級車ほどパーツも高価なので、自分に適合するサイズのパーツに買い直すときの出費も大きい。さらに、ステムやシートポストで大きくサイズを調整しても、それはメーカーが意図した走行性能とは異なる。フレームサイズの判断は自分で行わず、メーカーのWebを参考にしよう。適合しないときは縁がなかったと諦める潔さも大切だ。
■ブレーキ型式と対応タイヤは最初に決めておく
スポーツバイクは乗り込んでいくうちに好みのサドルに交換したり、ハンドルを変えてみたくなるもの。コンポーネントパーツをアップグレードしたりしてカスタムが楽しめる互換性の高さは、他の乗り物にない魅力の一つだ。だが、できないこともある。それはブレーキ形式の変更とタイヤクリアランスの拡張だ。
ロードバイクのブレーキにはトラディショナルなリムブレーキと、ディスクブレーキの2種類がある。歴史あるリムブレーキは機械的な完成度が高く、完成車のタマ数も豊富。高級車を安く乗りたい! というなら、リムブレーキ形式のバイクは割安感がある。
だが、ディスクブレーキが主流になりつつあり、いずれは、リムブレーキ仕様の高級ホイールや新型ブレーキが入手できなくなるだろう。長く乗りたいと思うなら、ディスクブレーキ仕様を入手するほうが将来的なリスクは小さい。
続いては、フレームの買い換えの見極めになりつつあるフレームとタイヤのクリアランスについて。実はフレームの買い換えを決めるポイントは、この問題に起因することが多いのだ。
ここ数年、ロードバイクのパーツでもっとも変化したのはタイヤ幅だ。2~3年前は25cが標準サイズだったが、今や28cがスタンダードに。最新フレームは30~32c対応している。タイヤが太くなると、連動して外周径は大きくなる。タイヤがフレームに接触、ホイールが装着できないという問題が起きる。
現在、「走行感の違いは、フレームのグレードよりもタイヤが支配的である」という言い方をされるほど、ホイールシステムの性能は重視されている。なので、後々アップグレードを考えているなら、対応しているタイヤ幅をしっかりと確認しておこう。
■駆動系パーツのアップグレードは
スポーツバイクの変速機やブレーキは、統合的に設計され機能する。グレードに応じてシリーズ名が与えられる、それがコンポだ。シマノであれば最高級モデルのデュラエースを筆頭に、アルテグラ、105、ティアグラ、ソラ、クラリス…と続く。コンポは数年おきにモデルチェンジし、新しい機能が加わったり、ギア数が増えたりする。
問題は同じグレードのコンポでも、世代が違えば互換性がないことが多い。たとえば最新のデュラエースはリア側のギア数が12枚、旧型は11枚しかないので駆動系パーツをミックスして使うことはできない。また、最新モデルであっても、グレードによってギア数が異なる場合、こちらもミックスして使うことはできない。
そのため、コンポの違いは完成車価格にも大きな影響力を持っている。
同じフレーム、同じグレードのコンポでも世代が変われば、それは別モノと言っていい。だが、条件次第でミックスコンポが可能な場合もあるので、駆動系パーツのアップグレードを考えている人は、購入前にしっかりと互換性を調べること。
■消耗品はすべて新品に!
新車購入後、ほぼ走らないまま手放される中古車もある。そんな恵まれたコンディションのバイクでも、新車と同じ走行感は得られない。理由は消耗品が劣化しているから。少なくともタイヤ、ワイヤ類、ブレーキパッドは新しい製品に交換しよう。新品のように見えてもゴムや樹脂は紫外線で劣化している。
劣化したタイヤがグリップしなくて、ブレーキの効きが悪くて…といった理由で事故には遭いたくないだろう。工賃を含めると、高級車は車格なりの出費となるが、その費用が出せないと思うなら、そのバイクはあなたに相応しくない。
コンディションの悪い高級品よりも、新品の廉価モデルのほうが安全で気持ちよく走れる。自分の愛車のコンディションを知るためにも、消耗品は交換してしまおう。
文・写真/菊地武洋