藤井聡太竜王に伊藤匠七段が挑戦する第36期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は第4局が11月10日(金)・11日(土)に北海道小樽市の「料亭湯宿 銀鱗荘」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の熱戦を129手で制した藤井竜王が開幕4連勝として竜王3連覇を飾りました。
研究範囲の角換わり
対局会場となる銀鱗荘は国の登録有形文化財を有する歴史ある建物。気温17度で雨が降る小樽の朝、立会人の渡辺明九段の合図によって対局が始まります。0勝3敗と後がない挑戦者が選んだのは角換わり腰掛け銀でした。
右玉に組み替えた後手の伊藤七段に対して先手の藤井竜王は軽い桂跳ねで局面を打開。両者研究の範囲内か、1日目の午前中から異例の速さで指し手が進みます。伊藤七段が玉頭に拠点を築いたところで戦いはようやく一段落を迎えました。
一気に終盤戦へ
手数が70手を超えるとようやく両者ペースダウン。藤井竜王は2時間を超える長考を経て、2筋からの敵陣突破を目指す角打ちを放ちます。さらに飛車を犠牲にして右辺からの右玉攻略を目指し、戦いは2日目に入ります。
手番を握った伊藤七段も先手玉そばに銀を打ち込み反撃開始。ガリガリと守備駒を削って飛車先突破を確実にしたのは好調な攻めに見えましたが、玉頭に迫った歩を相手にせず玉の早逃げを図ったのが好判断。 たとえ王手でと金を作られても玉を逃げ出せるのが大きいと見た藤井竜王の大局観が光りました。
盤石の3連覇
形勢容易ならずと見た挑戦者も勝負手を連続して肉薄しますが、藤井竜王はすでに終局までの道筋を描いていました。伊藤七段が王手と跳ね出した桂を馬と刺し違えたのはその後の詰み手順を読み切っての着手ですが、その詰み筋は優に30手を超えるものです。
終局時刻は17時32分、最後は自玉の詰みを認めた伊藤七段が投了。七番勝負は藤井竜王の4勝0敗で幕を閉じました。局後、勝った藤井竜王は「充実したシリーズではあった」、敗れた伊藤七段は「自分の力不足が顕著になったシリーズ」と総括しました。
水留 啓(将棋情報局)
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