旬とは?

果物の旬とは、その果物の味が最もよい食べごろの時期で、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなるので、安い価格でおいしく栄養価の高い状態の果物を手に入れることができます。

旬のなかには、さらに三つの時期があります。「走り」は出回り始めの初物の時期。「盛り」は最も多く出回る時期。そして「名残」は最盛期を過ぎて徐々に店頭から姿を消す時期です。これらは、季節のうつろいとともに味わいの変化も感じさせてくれます。

11月が「走り」の果物

冬の果物を代表する温州(うんしゅう)ミカンの早生(わせ)品種が、和歌山、愛媛、長崎、熊本などの各産地から出荷され、食べ比べも楽しめます。カリンや黄ユズなど、風邪予防によいとされる果物もこの時期から出回り始めます。

温州ミカン

一般的に「ミカン」と呼ばれる日本の代表的なかんきつ類。9月頃から爽やかな酸味の極早生品種が出回っていますが、11月から12月上旬にかけては酸味と甘みのバランスがよい早生品種が収穫されます。昔から食べてきた果物ですが、近年は骨の代謝を助ける機能性成分βークリプトキサンチン、袋や筋に含まれ毛細血管を強くするビタミンPなどの栄養素が注目されています。保存は直射日光の当たらない風通しのよい場所で。

調理例:フレッシュミカンジュース、ミカンティー、ミカンと白菜のサラダ

黄ユズ(黄柚子)

かんきつ類の中でも強い酸味と香りを持つ香酸かんきつ類の一つ。薬味や風味づけに使われます。8月から9月に収穫される青ユズに代わって11月からは「黄ユズ」の時期。熟してから収穫されるのでより風味を増しています。ビタミンCが豊富で果皮により多くの抗酸化作用があるので積極的に調理に取り入れたいものです。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。

調理例:ユズピール、ユズ大根(漬物)、ユズみそ

カリン(花梨)

緑色の果実は秋に熟して黄色になり、甘い香りが漂いますが、果肉はとても硬く渋いため生食には向きません。主に果実酒、ジャム、シロップなどへの加工に使われます。シロップを早く作りたいときは煮だす方法もあります。主な栄養素は、炭水化物、有機酸、ペクチン、タンニン、サポニンなど。せき止めの効果があり、喉によいとされています。保存は新聞紙などに包んで冷暗所で。完熟していない場合は、果皮が完全に黄色になるまで追熟させます。

調理例:はちみつ漬け、コンポート、ゼリー

11月が「盛り」の果物

その果物が最も多く出回るだけでなく、それらの品種が豊富にそろうのも「盛り」ならでは。品種の食べ比べを楽しんでみてはいかがでしょう。近年、産地が増えている国産キウイは、短い旬のまっただ中です。

カキ(柿)

海外でも「kaki」で通用する柿は、日本の伝統的な果物。約95品種が品種登録され、11月には「富有」「太秋」「太天」など晩生(おくて)種の大玉の甘柿や、主に山陽山陰で生産され、干し柿にも適した西条などが出そろいます。栄養面では、ビタミンC、カロテン、食物繊維が豊富。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間。熟すのを遅らせるには、濡らしたキッチンペーパーをヘタに当てて下にしておく。熟しすぎたものは冷凍してシャーベットに。干し柿作りにも適しています。

調理例:柿の天ぷら、柿とホウレンソウの白あえ、焼き柿

リンゴ(林檎)

国内で品種登録されているものだけで260品種以上。中でも最も多く作られている「ふじ」が11月上旬から出回ります。甘みと酸味のバランスがよくジューシーで香りが高いのが特徴。黄色品種の「シナノゴールド」「王林」「金星」なども11月が盛りです。これらは貯蔵性が高く春先まで出回ります。有機酸、ポリフェノール、食物繊維などを含み、栄養価が高いことから、欧米では「1日1個のりんごは医者を遠ざける」といわれています。保存はビニール袋に入れて冷暗所で。長期保存は冷蔵庫へ。

調理例:リンゴとレーズンのコンポート、リンゴとサツマイモのレモン煮、リンゴの豚肉巻きソテー

西洋ナシ(洋梨)

香りが高く、果肉は緻密でやわらかくなめらかな口当たりが特徴。代表品種の「ラ・フランス」は11月が出荷の最盛期です。それよりも果実が一回り大きい「ル・レクチェ」も同時期に出回ります。水分と食物繊維のほか、喉の炎症を鎮めるとされるソルビトール、疲労回復によいとされるアスパラギン酸が含まれています。保存は新聞紙などで包みビニール袋へ入れて冷蔵庫へ。未熟なものは常温で追熟させます。

調理例:洋ナシとカブのサラダ、洋ナシの生ハム巻き、洋ナシとジャガイモのポタージュスープ

キウイフルーツ

中国が原産ですが、ニュージーランドで改良が進み、見た目が国鳥のキウイに似ていることからこの名が付きました。日本で生産が本格的に始まったのは1970年代。輸入品は周年出荷されていますが、国産は11月が収穫の最盛期。果肉の色によって、グリーンキウイ、ゴールドキウイ、レインボーレッド(黄色い果肉に赤い色素が入ったもの)などの商品名で販売されています。栄養素はビタミンC、Eが多く、肉をやわらかくするたんぱく質分解酵素を含んでいます。未熟なものは常温保存。完熟果はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間。

調理例:キウイフルーツビネガー、キウイ入りグリーンサラダ、豚肉のキウイソース漬け焼き

11月が「名残」の果物

一般的に、名残の果物は水分が少なく味が凝縮されています。11月がシーズン最終のイチジク、栗などは、旬のうちに楽しむのはもちろんのこと、冷凍するなどして保存しておくと、年を越しても料理や菓子作りに活用できます。

イチジク(無花果)

夏果と秋果があり、初夏から出回ってきたイチジクは11月で当シーズンの収穫が終わります。秋果は夏果と比べて水分が少なくサイズが小ぶり。そのぶん味が凝縮され、ねっとりとした食感になります。栄養面では食物繊維のペクチンが豊富。たんぱく質分解酵素も含んでいます。すぐに食べきれない場合は、皮ごと一つずつラップに包んで冷凍保存で1カ月。1/4程度にカットして天日干しでドライフルーツにして保存するのもいいでしょう。

調理例:冷凍イチジクの甘露煮、スムージー、ドライイチジクのチョコレートがけ

クリ(栗)

栗のピークは9月から10月で11月頃まで出回ります。栄養面ではビタミンC、B1、カルシウムを含み、消化もよいのが特徴。名残りの栗を長く楽しむには、鬼皮(外皮)付きで冷凍保存がおすすめ。冷凍保存は、生でもできますが、ゆでる・蒸すなど加熱しておくと自然解凍ですぐに使えて便利。皮もむきやすくなります。栗は冷凍しても食味が落ちにくく、2~3カ月ほど長持ちします。

調理例:冷凍ゆで栗のスープ、冷凍ゆで栗の茶巾しぼり(栗きんとん)、冷凍生栗の渋皮煮

まとめ

温州ミカン、柿、リンゴなど、国内で多く生産されなじみのある果物が、品種も豊富に出そろう11月。洋ナシや国産キウイも食べ頃です。まずは生食で旬を味わい、料理の材料として違った味わいも楽しんでみてはいかがでしょう。ドライフルーツ、ジャムにしたり、シロップやビネガーに漬けたり、また、冷凍して保存しておくとより長く、晩秋の味覚を楽しむことができます。

参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|髙橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)
新食品成分表FOODS2023(進食品成分編集委員会編|東京法令出版株式会社発行)