テレビやエアコン、照明機器などの操作に欠かせないリモコン。いつのまにか電池切れを起こしていて困った経験がある人は少なくないと思いますが、いずれ電池交換の手間を省けるリモコンが登場するかもしれません。そんなちょっと先の未来のカタチを、シャープの技術展示/体験イベント「SHARP Tech-Day」で見つけました。
シャープが出展していた新しいテレビリモコンのプロトタイプには、同社が開発した屋内光発電デバイス「LC-LH」(Liquid and Crystal Light Harvesting)を搭載。家の中の照明などで発電した電力をリモコンの電源として使える点が大きな特徴です。
LC-LHは、電卓などで広く使われている屋内用途向けのアモルファスシリコン太陽電池よりも発電効率が高く、既にある液晶ディスプレイの製造技術・製造フローを活用可能なため低コスト・高品質で製造できるほか、使い捨て電池の廃棄量削減にもつながり、環境配慮の面でもメリットがあるといいます。これまでCEATECなどの展示会では、主にスーパーの店頭に並ぶ電子棚札を想定した展示が中心でしたが、SHARP Tech-Dayでは新たに、テレビリモコンに入れる乾電池をLC-LHに置き換えたモックアップを出展。より身近なプロダクトへの導入事例として、個人的にも注目していました。
説明員によると、これはシャープが海外市場に投入するテレビ製品のリモコンをイメージして作ったものだそうで、現在は商品化に向けて前向きに検討を進めているとのこと。ネット動画を呼び出すダイレクトボタンとして「Netflix」、「Amazon Prime Video」、「YouTube」の3つを備え、Bluetooth機能も搭載し、音声操作に対応するといった仕様面もある程度固まっているようでした。
このリモコンに積んでいるLC-LHのサイズは、動作に必要な電力から逆算して決定。だいたい500ルクスの明るさで0.3ミリワットの電力を発電し、内蔵している二次電池に充電していきます。これにより、リモコンを握ることでLC-LHを覆ってしまっても(一時的に発電できなくなっても)使用でき、照明を落とした暗い場所でも使えるように設計されています。
リモコンに電卓のようなソーラーパネルをつけるというのは、ありそうでなかった発想ですが、説明員によると、海外ではサムスン電子(Samsung)が既に製品化した事例があるとのこと。「SolarCell Remote」と名付けられたこのリモコンには、従来タイプのアモルファスシリコン太陽電池を裏面に積んでいるため、充電するにはリモコンを裏返してソーラーパネルを上にする必要があるといいます。シャープが開発したLC-LH搭載リモコンは、裏返すことなくテーブルにそのままポン置きしても充電できるので使いやすいだろう、と説明員は話していました。
海外のテレビリモコンはボタン数をできるだけ少なくしてシンプルかつコンパクトに作る傾向がある一方で、国内向けにはある程度大きく、地上波の選局ボタン(数字ボタン)などを多数載せて作るのが一般的。今回の展示機は比較的上面に余裕があって、LC-LHを載せるには最適だったと思われますが、国内向けリモコンに載せるならどこに配置するのか? などなど興味は尽きません。
LC-LH搭載リモコンが国内市場にいつ頃、どのようなかたちで投入されるかはまだ分かりませんが、現在国内で展開しているAQUOSテレビのリモコンにLC-LHが載る日はそう遠くないのかもしれません。いずれ、すべてのリモコンから乾電池を交換する手間がなくなる日が来ることを楽しみに待ちたいと思います。