11月10日に公開を迎えた映画『正欲』で今まで演じたことのない役どころに挑戦した稲垣吾郎と新垣結衣が、難役との向き合い方について語った。
朝井リョウ氏による小説『正欲』を、監督・岸善幸氏、脚本・港岳彦氏で映画化。稲垣、新垣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香を出演者として迎え、家庭環境、性的指向、容姿――異なる背景を持つ人たちを描写しながら、人が生きていくための推進力になるのは何なのかというテーマを炙り出す。先日行われた「第36回東京国際映画祭」では、コンペティション部門に出品され、観客賞&最優秀監督賞をダブル受賞した。
実力派キャスト陣の集結でも話題の本作で、ひと際注目を集めているのが、映画初共演となった稲垣と新垣の存在。稲垣は、『十三人の刺客』(10)で第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞助演男優賞、第65回毎日映画コンクール男優助演賞など数々の名だたる賞を受賞。その後も『半世界』(19)、『ばるぼら』(20)、『窓辺にて』(22)など精力的に映画主演を務めてきた。
新垣も主演映画『恋空』(07)で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞、『ミックス。』(17)で第41回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、第60回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞、近年も映画『GHOSTBOOK おばけずかん』(22)、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22)、『風間公親-教場0-』(23/フジテレビ)など話題作に出演し、2024年には『違国日記』で主演を務めることも発表されている。
そんな2人の映画初共演作となる『正欲』では、それぞれがこれまでのイメージを覆す新境地とも呼べる役柄に挑戦。稲垣が演じたのは、横浜検察庁に務める検察官にして、マイホームを持ち妻と子を養う主人公の寺井啓喜(てらい・ひろき)。強い正義感で物事を測ろうとする余り、不登校の息子の教育方針を巡って妻と度々衝突している。
新垣が演じたのは、広島のショッピングモールで契約社員として働く桐生夏月(きりゅう・なつき)。実家暮らしで代わり映えの無い日々を過ごしているが、実は“ある秘密”を抱えている、という役どころだ。
「東京国際映画祭」などで早くも映画を鑑賞した観客からは、「作品における寺井啓喜の重要性、難しさ。稲垣吾郎が見事に演じきっている」「稲垣吾郎氏の気迫が凄すぎて、優しそうなイメージだったけど覆った」「見たこともない新垣さんの表情や演技にも驚きました」「新垣結衣さんの抑えているけど、静かな怒りを感じる演技すごい」「稲垣吾郎と新垣結衣は、これまでのテレビドラマなどでは見せたことのない新たな一面を見事に醸し出してくれています」と、彼らの演技を絶賛するコメントが相次いでいる。
稲垣は啓喜役について「とても静かなチャレンジだった」「新しい挑戦だった」と話しており、「頭でいろいろ考えずに、心が動いて芝居をすることの大切さを再確認できた気がします」と、心のままに演じていたことを明かす。
新垣は、「夏月はなにを考えて、どんなふうに感じているんだろうって。本当に想像し尽くして、考えに考えたと思います」と夏月役へのアプローチについて振り返りながら、「でも演じているときは、考えていたようでもあるし、考えていなかったようでもあるし……現場では常に体が重たかったです。ここは自分の居場所じゃないという感覚が、ずっとまとわりついていたような気がします。確実だったのは、夏月のような人が絶対にどこかにいるはずだということだけでした」と、夏月というキャラクターがいかに難しい役どころであったかを語っている。
また、お互いの印象について稲垣は「今まで抱いてきた新垣さんのイメージが覆されたというか、思い描く印象とまったく違っていて、最初に現場で会った時は本当にびっくりしました。皆さんも観たらびっくりすると思いますよ!」と新垣の演技を絶賛しており、それに対して新垣は「ご一緒したシーンがとてもシリアスで重要なシーンだったので、そういう時間を共に過ごして、一つのシーンを一緒に作り上げることに力を尽くすことが出来たのはとても光栄でした」と稲垣との共演について振り返っている。
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