生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なうネオマーケティングは、11月9日「メンズメイク」のリサーチの結果を発表した。同調査は2023年10月12日~10月17日の6日間、全国の16歳以上の男女を対象に「メンズメイク」をテーマにインターネットで行われた。
まずはスクリーニング調査にて、「男性がメイクをすること」についてどう思うか聞いた。
やや揺れはあるものの、男女ともに年齢が若くなるにつれて、メンズメイクに抵抗感を抱かない割合が上昇していることがわかる。
中でも、「16歳~18歳」の女性は、「抵抗がない」「やや抵抗がない」の合算が73.7%と、メンズコスメに肯定的な立場を見せている。
全体的に、男性よりも女性の方が「男性がメイクをすること」に抵抗感を持っていないことがわかる。メンズメイク浸透の障壁となっているのは、同性からの理解なのかもしれない。
ただ、「抵抗がない」「やや抵抗がない」の合算割合が最も小さかった「37歳~39歳」の男性も、「とても抵抗がある」と強い拒否感を示したのは26.0%にとどまっている。
中立的な立場の割合が未だ多いことを考えると、メンズメイク理解には伸びしろがあると言えるだろう。
そんな、未だメンズメイクに抵抗感の強い男性だが、昨年おこなった同調査と比較すると、今年は「抵抗がない」「やや抵抗がない」の合算が微増している年代が多いことがわかった。
少しずつではあるが、同性理解も進んではいるようだ。
スクリーニング調査にて、メイクをしない男性に対し「メイクをしない理由」を聞いた。
36.0%が「必要性を感じない」と回答する一方で、「やり方がわからない」が24.4%、「何を選んだらよいのかわからない」が16.9%と、“知識不足が原因でメイクできていない”男性が一定割合いることがわかった。
また、これらの理由の割合は「周りにいない」「他人の目が気になる」といった、自身がメイクすること自体の恥ずかしさや後ろめたさといった類の理由よりも上回っているため、知識さえ満たされればメイクにトライする可能性も考えられる。
とはいえ、メイクをしない要因として「面倒」が33.4%集まっていることを考えると、メンズメイクを広く浸透させるには“手軽さ”や“工程の少なさ”がメイクアイテムのポイントになってきそうだ。
また、昨年おこなった同調査と比較すると、年代ごとの内訳はやや変動しているものの、各項目に対する全体の回答割合はほぼ変動せず、順序も変わらなかった。
メイクをしない男性を動かすための有効なアプローチが、この1年では無かったということだろうか。
メイクを習慣的にしている人に対し、いつからメイクをしているか聞いた。
男性は5年以上前や「5年以内」は5%前後にとどまる一方、「3年以内」(本調査では2020年以降から現在)からは15.3%と、一気に増加。コロナ禍のタイミングでメイクを始める人の多さが浮き彫りとなっている。
また「1年以内」が26.0%、「半年以内」が16.5%、「直近2.3か月以内」が22.5%と、スタート時期が比較的コンスタントに分布していることがわかる。
2023年5月8日の新型コロナウイルスの5類引き下げに伴い、現在コロナ禍も終焉を迎えつつあるが、今後もこの流れは続きそうだ。
昨年おこなった同調査でも、「5年以内」(新型コロナ以前)と回答した男性の割合は6.0%にとどまっている一方、「3年以内」つまり新型コロナウイルスが蔓延し始めた2020年以降を含む期間からは19.0%と、一気に急増。やはりメンズメイクの浸透において、コロナ禍というタイミングがいかに重要であったかがうかがえる。
メイクを習慣的にしている人に対し、どこのメーカー・ブランドのメイク用品を使っているか聞いた。下の図は選択肢上位10項目をランキング形式で表示している。
男女ともに「キャンメイク」や「セザンヌ」「ケイト」といった“プチプラ”コスメブランドの人気の高さがうかがえた。
しかし男性の場合、女性の「キャンメイク」61.5%や「セザンヌ」55.0%のように、特定メーカー・ブランドへの偏りは見られず、1位〜9位まで20%前後で推移している。
そんな中、いわゆる“デパコス”の中でもさらにハイブランドのコスメの使用率は男女差が少なく、むしろブランドによっては男性の使用率が上回る実態も明らかになった。
上位10項目の中では、「ディオール」が男性20.0%の使用率で女性の19.0%とほぼ同率となり、女性のランク外(12.0%)であった「シャネル」が19.5%で男性の7位にランクインしている。
使うアイテムが女性より少ない分、1点に対し予算を高めに設定する男性が多いのだろうか。
また、昨年おこなった同調査でも男性は、今年と同じく「ディオール」、そしてまたしても女性では10位圏外であった「サンローラン」といったハイブランドコスメが上位ランクインしていた。
メイクを習慣的にしている人に対し、メイクに関する情報をどこで知ることが多いか聞いた。
男性の場合、「店頭」よりも「異性の友人」「恋人/パートナー」から情報を知る割合が多いことがわかる。
店頭にて売り場状況を眺め、店頭スタッフと話をし、商品を手に取り情報を自らキャッチするという情報収集よりも、メイクを始めるきっかけとなった身近な女性の持つ情報源を頼りにする男性が多いのかもしれない。
「店頭」でスタッフとコミュニケーションを取るのはハードルが高いため、まずは身近な友人・恋人に情報を聞いて知識をつけるのが先、と考えての行動とも考えられる。
また、昨年おこなった同調査と比較すると、今年はSNSの割合が増加していることがわかった。「Instagram」をきっかけとする女性の割合は昨年75.0%から今年81.0%に増加、「TikTok」をきっかけとする男性の割合は昨年38.0%から42.0%に、女性28.5%から42.5%に増加している。
メイクを習慣的にしている人に対し、メイクを購入する際にどこの情報を参考にすることが多いか聞いた。
日頃のメイク情報収集だけでなくメイクアイテムの購入時であっても、前掲した設問【メイクに関する情報をどこで知るか】と同様に、男性の情報源として「異性の友人」「恋人/パートナー」の強さが目立つ。
「Instagram」や「YouTube」は、実際にメイクアイテムを購入しようという場面になると、(日頃のメイク情報収集時よりも)使用率が下がる傾向にあるものの、だからといって「店頭」を参考にする割合が大幅に上昇することはなかった。女性にいたっては、むしろやや減少している。購入を検討する段階では、依然としてSNSの情報が最も強いようだ。
また、昨年おこなった同調査の全体の回答割合を見ると、「Instagram」「YouTube」に次ぐ3番手に「店頭」が挙がっていた。今年は「TikTok」が、昨年の25.8%より15.5ポイント増加させ41.3%の割合で3番手に着地している。
前掲した設問【メイクに関する情報をどこで知るか】でも、今年の調査におけるSNSの増加が目立っていたが、メイク情報収集ツールとしては、SNSの中でも「TikTok」の重要度がこの1年で非常に高まったことがわかる。
メイクを習慣的にしている人に対し、メイク用品を購入する際どこの情報が決め手になることが多いか聞いた。
日頃のメイク情報収集としても、メイク用品購入時の参考情報収集としても強かった「Instagram」と「YouTube」は、いずれも全体の50%以上を集め、やはりここでも圧倒的な強さを誇っている。
一方、“決め手”としてのインパクトを持っているのが「店頭」。前掲した設問【メイクを購入する際に参考にする情報】にて男性は24.5%、女性は34.5%だった「店頭」は、“決め手”となると女性の場合40.5%にまで上昇。男性は19.5%とむしろ下がっていることを考えると、現時点で、女性に限っては、店頭での体験が購入の後押しになることが多いと言えるだろう。
男性の場合、決め手の段階であってもSNSが圧倒的な強さを持っている点が特徴的だ。 また「異性の友人」からの情報も20%を切ることは無く、情報源としてかなりの重みを持っていることがうかがえる。
また、昨年おこなった同調査を見ても、女性は「店頭」が40.0%と、今年とほぼ同様の割合を集めていた。
女性の場合は、メイク情報収集ツールとしてのSNSの存在感がどれだけ強まっても、購入を決する情報として、“店頭での体験”、つまり自ら商品を試して得る情報などには未だ敵わないということがわかる。
メイクを習慣的にしている人に対し、メイク用品はどこで探すことが多いか聞いた。
女性の場合「ドラッグストア」に87.5%と集中しているのに対し、男性の場合は61.0%の「ドラッグストア」を除いて、どの場所も割合が近しい結果となった。
昨年おこなった同調査と比較すると、「@コスメ(店舗)」や「アエナ」「ハンズ」「専門店」「メーカー直販サイト」「その他ネット通販」など、男女差が小さくなった項目が多いことが読み取れる。
昨年、男女差が激しかった「アエナ」(14ポイント差)と「ハンズ」(14.5ポイント差)も、今年の結果を見ると、それぞれ12ポイント差・3.5ポイント差に。今後、メイク用品を探す場所が、男女で徐々に一致していく可能性もありそうだ。
メイクを習慣的にしている人に対し、メイク用品をどこで買うことが多いか聞いた。
前掲した設問【メイク用品を探す場所】と同じく、実際の購入場所としてもやはり「ドラッグストア」はトップとなった。
また購入時においても、昨年おこなった同調査と比べ「アエナ」「ハンズ」「その他バラエティショップ」「専門店」「メーカー直販サイト」など、男女差が小さくなった項目が多いことが読み取れる。
「ドラッグストア」が一強となる中、女性は「その他ネット通販」が、昨年より10ポイントアップの29.5%となっている点にも注目だ。