11月9日に行われた楽天グループ2023年度第3四半期決算説明会のなかで楽天モバイルへのプラチナバンド割り当てについて言及されたため、エリア整備に関する内容をかいつまんで紹介する。
既報の通り、700MHz帯の空き帯域を活用した上下各3MHz幅の狭帯域プラチナバンドが楽天モバイルに割り当てられることが決まり、10月23日に総務省が同帯域に関する楽天モバイルの基地局開設計画を認定した。
楽天モバイルが総務省に提出した開設計画の内容は、2026年3月頃までに全国で10,661局を開設するというものだが、ここで提出する内容は確実に守らなければならないラインとなるため保守的に見積もられており、実際には前倒しで2024年早期の利用開始を目指すという。
決算説明会の資料では、都市部ではまず既存の1.7GHz帯やKDDIローミングで対処しきれない残りのカバレッジホール、具体的には屋内エリアなどの補完を優先すると説明。設備投資額は今後10年間の合計で544億円と見積もっており、これには隣接帯域のサービスへの干渉対策費用も含まれる。
全国的に新たな周波数でのエリア整備を行うコストとしては相場からみれば低い金額といえるが、既存の1.7GHz帯を運用している基地局への700MHz帯用の無線機器の増設やソフトウェア更新などで実現可能と見込んで計算された額となる。
ただし、参考までに補足しておくと、プラチナバンド(700~900MHz)の伝搬距離や回折といった特性を活かしてカバレッジを向上するには、1.7GHz帯の運用を前提に置局設計された既存基地局への追加では不十分ではないかという疑問も残る。
一般論としては、低所でカバー範囲が狭い(裏を返せば1局あたりの収容台数が少ない=速度を稼ぎやすい)スモールセルには高周波数帯、高所から広範囲をカバーするマクロセルにプラチナバンドといった運用が効果的とされている。楽天モバイルが1.7GHz帯のために設置している基地局の大半は15m程度の低いコンクリート柱であり、既存基地局への機器追加でプラチナバンドを使っていくという目論見通りに事が進むかは不透明だ。