旬とは?
その野菜の味が最もよい食べごろの時期を旬といい、その栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなり、安い価格でおいしく栄養価の高い野菜を手に入れることができます。
11月が「走り」の野菜
冬が近づくと多くの種類の葉物野菜が店頭に並びます。特にアブラナ科の野菜が多く、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツは同じ仲間。キャベツに似ていますが種類は異なるトレビスも走りです。走りの野菜はみずみずしさと柔らかさが持ち味。調理時に火を通し過ぎないことがおいしくいただくポイントです。
カリフラワー
ブロッコリーが突然変異したもので、花蕾(からい)を食用とします。11〜3月がおいしい時期で、水分を多く含み食感もよくなります。乳白色のほかにオレンジ色や紫色の品種もあり、イタリアの伝統野菜ロマネスコはカリフラワーの晩生(おくて)品種です。アクが強いので下ゆでしてから調理します。ビタミンCを多く含み、加熱しても損失が少ないのが特徴。高温に弱いので保存はラップに包んで冷蔵庫の野菜室へ。または小房にカットしてゆでて冷蔵・冷凍保存します。
調理例:カリフラワーのカレー炒め、カリフラワーとゆで卵のサラダ、カリフラワーライスのチャーハン
ブロッコリー
野生のキャベツを改良したもので花蕾(からい)と茎を食べます。カロテン、鉄、カルシウムを多く含み、ビタミンCはキャベツの4倍と栄養豊富。調理は下ゆでしてから、サラダ、あえ物、炒め物、グラタンやフライなどに幅広く使えます。11〜3月がおいしい時期。花蕾が開くと食味が落ちるので、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保存します。
調理例:ブロッコリーのペペロンチーノ、エビとブロッコリーの温サラダ、ブロッコリーのナムル
寒玉(かんだま)キャベツ
キャベツは種をまく時期によって、春キャベツ、高原キャベツ、寒玉キャベツに分けられます。寒玉は11月頃から出荷され、1~3月がおいしい時期。球が締まって葉はしっかりとし、甘みがあるので、煮込み料理に適しています。栄養面では、胃炎や潰瘍(かいよう)の回復に効果があるといわれるビタミンU(別名:キャベジン)が含まれています。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫へ。芯をくり抜いて濡らしたキッチンペーパーを詰めておくとより長持ちします。カットしたものはラップに包んで切り口の変色を防ぎます。
調理例:蒸しキャベツ、キャベツのステーキ、ロールキャベツ
トレビス
見た目は紫キャベツに似ていますが、キク科の野菜で和名はキクニガナ。イタリアが主な産地ですが、日本でも栽培されるようになりました。おいしい時期は11~3月。シャキシャキした歯ざわりと少し苦みがあるのが特徴で、オリーブオイルと好相性。長時間加熱すると変色して苦みを増すため生食に向いています。栄養価は、ビタミンC、カリウム、食物繊維などを含みます。保存はラップに包んで冷蔵庫で1〜2日。鮮度が命です。
【調理例】トレビスのグリル、トレビスときのこのマリネ、トレビスと生サーモンのサラダ
11月が「盛り」の野菜
11月は鍋料理に欠かせない葉物野菜が出そろいます。盛りの野菜は味が濃く、栄養価が高く、どんな調理法にも適しています。出荷量が増えると価格が下がってくるので、いろんな料理でたくさん食べましょう。
ハクサイ(白菜)
全国的に栽培され、通年手に入りますが旬は冬。11~2月がおいしい時期です。葉の肉質は柔らかく水分が多い。淡泊な味わいで、鍋物、炒め物、煮物、お浸し、汁物、漬物など、どんな料理にも合います。水分が大部分を占めますが、ビタミンCは比較的多く、カルシウム、食物繊維も含みます。保存は丸のまま新聞紙に包み、立てた状態で冷暗所で2~3週間。便利で長持ちな野菜です。
調理例:白菜と生しいたけのうま煮、豚バラ肉と白菜の重ね蒸し、白菜の中華スープ
生しいたけ
1年中出回っていますが、旬は春と秋。春物は3~5月、秋物は9~11月がおいしい時期です。秋物は香りのよさが特徴です。流通しているものの多くは菌床栽培で、一部の地域で原木栽培も行われています。豊富に含まれるエゴステロールは日に当たると骨の形成に寄与するビタミンDに変化します。きのこ類の多くは水につけると風味が落ちるので、ふきんで軽く拭いて使います。保存は、ひだを上にして密閉容器に入れて冷蔵庫へ。すぐに使い切れない場合は天日干しに。
調理例:生しいたけの肉詰め、生しいたけのふくめ煮、焼きしいたけ
シュンギク(春菊)
菊の葉に似た形で春に黄色い花を咲かせるため春菊と称されています。関西では菊菜と呼ばれることも。栄養価の高い緑黄色野菜で、カロテンの含有量はホウレンソウ以上で、ビタミンC、カルシウム、鉄なども多く含まれています。独特の香り成分は、食欲増進、胃もたれ解消などの働きがあります。香りを楽しむために、加熱しすぎないことが調理のポイント。生食もできます。保存は湿らせた新聞紙に包んで、ビニール袋に入れて冷蔵庫で2日程度。
調理例:ナムル、春菊と牛肉のオイスターソース炒め、春菊と長ネギのチョレギサラダ
ビート(ビーツ)
赤カブ(アブラナ科)に似ていますが、ホウレンソウと同じヒユ科(旧アカザ科)の野菜。根を輪切りにすると同心円状の輪模様があることから火焔菜(かえんさい)とも呼ばれ、赤以外に黄や白のものも。旬は2度あり、6~7月と11~12月。調理は色の流出を防ぐため、皮つきのまま丸ごとゆでてから使います。切って煮込むことでスープを赤くしたものがボルシチです。栄養素はカリウム、鉄、葉酸などを含みます。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間程度。
調理例:ビートとルッコラのサラダ、ビートとニンジンのきんぴら、ビートとジャガイモのポタージュ
11月が「名残」の野菜
秋が旬のイモ類。寒さに弱いサツマイモやサトイモは、11月に収穫が終わる名残の野菜です。水分が減って味が濃くなる名残の野菜は、煮物や蒸し物などの調理に向いています。少しでも長く楽しむために冷凍保存するのもいいですね。
サツマイモ
収穫期は9~11月。食味は大きく分けると、紅あずまなどのホクホク系、安納芋などのねっとり系、その中間でシルクスイートなどのなめらか系。収穫後にキュアリング処理をして表面にコルク層ができたサツマイモは長期保存でき、甘みを増した状態で年明けまで出荷されます。食物繊維が多く含まれ、ビタミンCは加熱しても壊れにくいことが特徴。保存は新聞紙に包んで冷暗所へ。冷凍保存は皮ごと角切りにして下ゆでし、保存袋に入れて空気を抜きます。使うときは自然解凍で。
調理例:冷凍サツマイモの豚汁、サツマイモのチーズ焼き、大学芋
サトイモ(里芋)
縄文時代に日本へ伝わったといわれています。親イモを取り巻くように子イモ、孫イモが多数つくため豊作や子孫繁栄の縁起がよい食べ物とされています。おいしい時期は9~11月。イモ類の中では特に低カロリーで、カリウムが多く体内の余分な塩分の排出を促す効果が期待できます。寒さと乾燥に弱いため、保存は新聞紙に包んで冷暗所へ。冷凍保存はきれいに洗って丸ごとラップに包み保存袋へ入れて空気を抜きます。使うときは電子レンジで火が通るまで加熱すると、外皮は手でつるりとむけます。
調理例:冷凍里芋の芋煮、甘みそだれ、煮っころがし
まとめ
ブロッコリーやハクサイなどの葉物野菜(葉茎菜類)が出回り、サツマイモやビートなど根菜類はバラエティ豊かで、秋の味覚きのこもおいしい11月。秋から冬への季節の変化を、この時期にとれる国産野菜で味わってみてはいかがでしょう。
参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|髙橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)
新食品成分表FOODS2023(進食品成分編集委員会編|東京法令出版株式会社発行)