スマートフォンの全世界の出荷台数順位は1位サムスン、2位Apple、3位シャオミが定位置。そのあとをOPPOとvivoが追いかけるという図式が続いています。Appleは新型iPhone発売後の毎年第4四半期(10月-12月)はサムスンを抜いて1位になりますが、それ以外に大きな変動がないのがここ数年の動きでした。
ところが今年になって、第2四半期(4月-7月)と第3四半期(7月-9月)、トップ5位に入っていたvivoが6位に後退しました。その代わりに入ってきたのがTrasnsionです。あまり聞きなれないメーカーですがそれもそのはずで、Transsionは傘下に「Infinix」「Itel」「Tecno」の3社を保有しており、それぞれが製品を販売しているのです。しかも主戦場はインドやアフリカ、東南アジアなどの新興国。とはいえ「新興国メーカーだから安物ばかりだろう」と思ったら間違いで、最近では折りたたみスマートフォンも発売しています。
Transsion 3社のうち特徴的な製品を次々と出しているのがTecnoで、2023年9月には縦折りスタイルのスマートフォン「Phantom V Flip 5G」を発表しました。大手メーカーでもまだ数社しか手掛けていない製品をTecnoはすでに出しているのです。また年始めの2月には横折り式の「Phantom V」も投入しました。他にも色の変わるスマートフォンも発売しています。これまでにTecnoのスマートフォンの記事をいくつか書いているのでぜひ検索して読んでいただきたいのですが、先進国のメジャーメーカーに負けない製品を次々と送り出しているメーカーなのです。
Infinix、Itel、Tecnoの3社はそれぞれ特徴を分けた製品展開をすることで新興国の消費者から注目を集めることに成功しています。総合スペックではサムスンやシャオミに負けるものの、Tecnoは前述したように折りたたみモデルを2種類も出していますし、Infinixは2億画素カメラ搭載スマートフォンを展開しています。Itelはバジェットモデル、低価格を売りにしています。
ちなみにTranssionの創立は2006年で、2008年からアフリカ向けにフィーチャーフォンの展開を始め、2014年からスマートフォンの投入を開始しています。2022年のマーケットシェアは、アフリカと中東を合わせたMEA地域でTranssionが28%で1位(Tecno 10%、Infinix 10%、iTel 8%)、2位がサムスンの24%、3位シャオミ10%、6位Apple5%と続きます。
中国・深センにあるTrannsionの本社には、Itel、Infinix、Tecnoの歴代モデルの展示コーナーもあります。かなり古いフィーチャーフォンも展示しているあたり、過去の製品に対してもしっかりと愛着を持って育ててきたメーカーであることがわかります。
Tecnoは今年に入ってから折りたたみスマートフォンで大手メーカーに追いつきましたが、次世代ディスプレイのスマートフォンではトップグループ入りを目指します。8月に発表した「Phantom Ultimate」は巻き取り式ディスプレイを採用したローラブルスマートフォン。本体が左右に動き、ディスプレイが巻き取られながら収縮するのです。コンセプトモデルで製品化はまだ先でしょうが、こんな製品を開発できるほど技術を持っているわけです。
ここまで紹介したようにTecnoのハイエンド・最新技術搭載モデルは「Phantom」のブランドで展開されています。このPhantomシリーズなら先進国でも十分通用する製品でしょうね。Tecnoは他にも「Camon」や「Pova」、「Spark」などのラインを持っており、上位モデルから下位モデルまで多くのバリエーションのスマートフォンを出しているのです。
ネット上でインドやアフリカの映像ニュースを見ると、街中にTecnoやInfinix、Itelの看板のお店を見かけることがあるかもしれません。東南アジアではまだシェアは低いのですが、フィリピンでは大々的な販売を行っています。地元の巨大ショッピングモール「SMモール」のスマートフォン売り場では、サムスンやオッポなどの大手メーカーと同じように、InfinixとTecnoがブースを構えて最新モデルを中心とした販売を行っていました。
Tecnoのスマートフォンが日本で販売されることはないでしょう。でも縦折りスマートフォンのPhantom V Flip 5Gは約600ドル(9万円前後)という価格も魅力です。折りたたみモデルのような特徴的な製品を、クラウドファンディングで興味あるユーザーだけに売るというビジネスならありかもしれません。