第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが進行中。11月7日(火)に豊島将之九段―菅井竜也八段戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、三間飛車対居飛車の対抗形を112手で制した菅井八段が3勝目を挙げて挑戦権争いに踏みとどまりました。
挑戦権争いの山場
ここまで2勝2敗の豊島九段と2勝1敗の菅井八段の対局は挑戦に向けた勝負所。4勝0敗で独走する永瀬拓矢九段を追うために負けは許されません。今年1月以来となった豊島九段戦、後手となった菅井八段が用意していたのはノーマル三間飛車でした。
左香を上がって居飛車穴熊をチラつかせる先手の豊島九段に対して菅井八段は石田流への組み換えを見せて揺さぶります。3筋の歩を守るために上がってあった左銀をじっと引いて立て直したのが玄人好みの工夫。流行形のなかに細かな気配りが見られます。
菅井八段が快勝
打開を図る豊島九段は銀捨ての鬼手で飛車先突破を目指しますが、菅井八段の対応は巧妙でした。左辺は受け流しつつ自らの飛車を軽く浮いてさばきを狙ったのが軽妙手。これを見た棋士も「居飛車の銀損手筋に警鐘を鳴らす完璧な応対」(山本博志五段)と賛辞を惜しみません。
形勢をリードした菅井八段は、端攻めで追いすがる先手の反撃を余しにかかります。自然な受けを続けながら手順にダイヤモンド美濃を完成させたところで後手優勢が明らかに。終局時刻は18時31分、攻防ともに見込みなしと認めた豊島九段が投了を告げました。
これで勝った菅井八段は3勝1敗となり、永瀬九段と星一つの差に迫りました。敗れた豊島九段は2勝3敗でプレーオフ進出の可能性がなくなっています。11月10日(金)に佐々木勇気八段戦を控える菅井八段は「次戦も精一杯がんばりたい」と語っています。
水留 啓(将棋情報局)
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