米労働省が11月3日に発表した10月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数15.0万人増、【2】失業率3.9%、【3】平均時給34.00ドル(前月比+0.2%、前年比+4.1%)という内容であった。
【1】雇用者数
10月の非農業部門雇用者数は前月比15.0万人増と市場予想の18.0万人増を下回った。また、8月分と9月分が合計で10.1万人下方修正された。このため、米労働市場の基調的な動きを見る上で重視される非農業部門雇用者数の3カ月平均の増加幅は20.4万人に縮小した。
【2】失業率
10月の失業率は3.9%と、市場予想の3.8%を上回り2022年1月以来の水準に上昇した。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も、前月の7.0%から7.2%へと上昇した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は62.7%に低下した(9月62.8%)。
【3】平均時給
10月の平均時給は34.00ドルと前月の33.93ドルから0.07ドル増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+4.1%で、市場予想は前月比+0.2%、前年比+4.0%だった。金額ベースでは過去最高を更新したものの、前年比の伸び率は2021年6月以来の水準に鈍化した。
まとめ
今回の米10月雇用統計では、自動車業界の大規模ストライキの影響もあって非農業部門雇用者数の伸びが鈍化。労働参加率が低下したにもかかわらず失業率は悪化した。平均時給は増加基調を維持したが、前年比の鈍化傾向があらためて確認された。人手不足で賃金が上昇してきた労働市場のひっ迫状況に緩和の兆しが見られたとして、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が12月も政策金利を現在の水準に維持するとの観測強まった。利上げ期待の後退によって米長期金利が低下すると、ドルは円をはじめとする主要通貨に対して全面的に下落した。もっとも、FRBが次回12月13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、実際に利上げを見送るには、まだハードルがありそうだ。FOMCは9月会合で「年内にもう一回」の利上げ見通しを示している。この見通しに反して12月FOMCで利上げを見送るためには、11月14日に発表される米10月消費者物価指数(CPI)の鈍化を確認する必要がある。さらには12月FOMCまでに、「もう一回」雇用統計が発表される(11月分、12月8日)。利上げ見送りか追加利上げかを巡る市場の観測も、これらの経済指標に左右されそうだ。