今年は例年にない早さでインフルエンザが流行しています。これから予防接種を受ける予定だったのに感染してしまった…という方も多いのではないでしょうか。

今回は、医師の甲斐沼孟先生にインフルエンザに関するお話しをお聞きしました。感染した場合の自宅待機期間や感染後の予防接種の必要性などまとめていますので、参考にしてください。

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■今年流行しているインフルエンザはどのような種類?

インフルエンザ感染症は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前まで年間1000万人前後の人が発病する冬場の代表的な感染症でしたが、2019年から新型コロナウイルス大流行となり、三密回避、マスク着用、手洗い励行の厳格な感染予防処置などが行われると流行しなくなりました。

しかし2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染法上の扱いが5類相当となり、これまで行われてきた感染予防処置がほぼ撤廃され、再びインフルエンザが復活してきました。

2023年現在もオーストラリアなど南半球ではインフルエンザが流行しており、我が国でもA型インフルエンザの発生が続いています。

今年は例年にない早さで流行が拡大し、9月から各地の小中学校や高校などで学級閉鎖が相次ぐなど異例の事態になっています。

■インフルエンザが疑われる場合の適切な受診のタイミングは?

病気にかかると、重症化する前(できるだけ早く)に病院へかかるのがよいという考え方が普及していますが、インフルエンザの場合は、症状の進行や診断の確定、投薬のタイミングなど様々な条件から、適切に医療機関を受診するタイミングがあります。

インフルエンザが疑われる場合、正確な検査を行うためには、初期症状が現れてから12時間以降、48時間以内に病院へかかるのが最適とされています。

インフルエンザの検査は「迅速抗原検出キット」を用いるのが一般的ですが、体内にいるウイルスの数が少ないと検出されない可能性があります。的確に検査するためにはある程度ウイルスが増えている状態が好ましく、発症から12時間以降の検査が推奨されています。

■インフルエンザを発症した場合、外出を控える期間の目安は?

インフルエンザに感染した場合、「一週間程度は外出を控えるべき」と一般的にはいわれています。

学校や幼稚園などでは「出席停止期間」が設けられており、一週間程度は学校や幼稚園に行くことが禁止されています。(「学校保健安全法」では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」を出席停止期間としています)

インフルエンザウイルスの排菌期間は、発症前日から発症後3~7日間と言われていて、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は、鼻やのどからウイルスを排出していると考えられています。

その該当期間は二次感染を引き起こす可能性が非常に高いことから、二次感染を防ぐためにも外出は控えるべきだと認識されています。

■同じシーズンに複数回、同じ型のインフルエンザにかかることはある?

インフルエンザウイルスは、それぞれのウイルスの中で毎年のように小さい変異を繰り返しています。これらの型が同時期に流行することがあるため、同じシーズンの中でA型インフルエンザに2回罹患することはあり得ます

■予防接種前に発症したらどうする?

厚生労働省によれば、インフルエンザに自然感染した場合免疫抗体を獲得するため、病気の進行(発症)を軽減することは可能と考えられ、明らかにインフルエンザに罹患した者は、同シーズンにおいては同株のワクチンを接種する必要性は乏しいと提唱されています。

しかし今年のインフルエンザは流行時期が例年と異なり、罹患した場合に以前のウイルスの型なのか今年のウイルスの型なのかがわかりません。同シーズン内で複数感染した際の重症化を防ぐためには、前回感染後から3~4か月程度間隔をあけて、インフルエンザワクチンを接種することを推奨します。

■タミフルやリレンザの服用が推奨されるのはどのようなケース?

インフルエンザに有効な薬は症状が出てから48時間以内に服用を開始することで、発熱期間が短縮(通常1~2日間短縮)され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少しますが、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果が期待できません。

タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を防ぎ、高熱や関節痛などのつらい症状を軽減してくれますが、これらは、発症から48時間以内に投与しなければ十分に効果が発揮されにくいと考えられています。

したがって、インフルエンザ発症から12時間以降、48時間以内に病院へかかることが望ましいとされていますが、病状がひどい場合にはこの限りではないため、すぐに病院での診察を受けてください。

■発症した際の症状は?

インフルエンザウイルスに感染すると、38℃以上の急激な発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・倦怠感等の症状が急速に現れるのが特徴です。

高熱が出てから2~3日後にせきがひどくなりピークを向かえ、腹痛、嘔吐、下痢などの症状が続くというケースもしばしばみられます。

また、発熱3~4日目で一度解熱したものの、1~2日後に再び発熱するケースもあり、インフルエンザのニ峰性発熱と呼ばれています。2度目の発熱が2日以上続く場合は、中耳炎、肺炎など細菌感染の合併も疑われるため、必ず医療機関を受診しましょう。

インフルエンザが重症化した場合、まれに急性脳炎(乳幼児)や肺炎(ご高齢の方や免疫力が低下している方)を伴うことがあります。

特に高齢者、呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ方は、インフルエンザそのものや、もともとの病気が悪化しやすく、死に至る原因となることもあります。

乳幼児は、気管支炎・肺炎・中耳炎・熱性けいれん・ライ症候群・インフルエンザ脳症などがみられる場合があるので、十分注意しましょう。

監修ドクター: 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生

TOTO関西支社健康管理室産業医。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長


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