農作業安全について情報発信する「アグリステーション」

アグリステーション代表の黒木榮一(くろき・えいいち)さんは、鹿児島県の農業試験場でトラクター免許指導などに携わる傍ら、20年来農作業安全について啓発活動をしています。危険性を文章だけで伝えても興味を引かないのではと、イラストやX(旧Twitter)を使い、多くの人に広めてきました。黒木さんは2014年農作業安全ポスターデザインコンテストで農林水産大臣賞を受賞したこともあり、そのポスターにも黒木さんが作り出した農作業安全のキャラクター「若葉エリ」が登場しています。

今回は冬場において特に気をつけることを、若葉エリさんを通じて解説してもらいました。

意外? 冬も必要な目の日焼け対策

アグリステーションでは、冬も紫外線対策は必要と発信しています。夏と違い日差しを強く感じられないので対処しない人も多いのですが、紫外線による目の日焼けが蓄積すると、白内障や加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)になる危険性が高まるといわれているそう。特に夕方になると目が疲れて視界がボヤけてくる人は要注意です。

冬もサングラスをかけよう

その対策としては、UVカットサングラスがおすすめとのこと。外に出る時は、紫外線の約99%をカットできるUV400以上のものを常時着用するのが良いそうです。

サングラスというと色が濃い方が効果が高いと思われがちですが、色が濃いほど瞳孔が広がり、より紫外線のダメージを受けやすく、また色付きでは視界が暗くなったり、植物の色が判別できなくなったりして農作業に支障がでます。

アグリステーションからのオススメは、色がない透明なクリアレンズサングラスです。

目を保護すること自体が安全につながる

UVカットサングラスに限らず、メガネなど目を保護するものを装着することには別のメリットもあります。農作業の事故で多いのが稲の葉など鋭利な葉が目に刺さり、角膜を傷つけることです。最悪の場合失明することも。これもサングラスがあることである程度防ぐことができます。

画像提供:アグリステーション

機能性からみた冬の農作業着コーディネート

冬というと防寒対策で農作業着も厚着になりますが、寒い屋外から暖かい室内やビニールハウスに移動すると、気温差で結構汗をかくことがありきます。その汗が冷えることで一気に体温が奪われます。体が冷えると思考や注意が散漫になり、それが事故につながるケースも少なくないとのこと。

速乾性素材のインナーを着る

その対策としてアグリステーションがおススメするのは「速乾性のインナーを着る」こと。速乾性というと夏専用と思われがちですが、汗を残さないことで体の冷えを抑えることができるといいます。

上着はヤッケが便利

気温差、天候の変化が激しい冬場では上着の脱着も頻繁に必要となります。そんな時に便利なのがヤッケ。ヤッケとはフード付きの防寒着のことで、主に上からかぶるもので脱着が簡単です。

ヒモ付きの服が増える冬は巻き込まれに注意

注意してほしいのは、腰部分やフード部分についているヒモです。トラクターのロータリーなどに巻き込まれると大事故につながりますので、あらかじめヒモを抜いておく、また必ず結ぶなど、対策をしてください。

画像提供:アグリステーション

冬場のトラクター移動は追突の危険が!

日が短い冬場は暗くなるのが早く、また一気に暗くなります。そんな夕暮れに畑から家にトラクターで移動する時は細心の注意が必要です。

トラクターで公道を走行する時はロータリーを上げるのが一般的。そのロータリーに隠れて尾灯や反射板が見えず、後部から来た車に追突されることがあります。

法令を守り、反射板を所定の位置に!

最近のトラクターは最初から反射板がついていますが、作業の邪魔になるからと取り除いたり、割れてもそのままにしている人もいます。

令和2年1月よりロータリーなど作業機付きのトラクターでの公道走行は認められていますが、「灯火器類」「車両の幅」「走行速度」「免許」の4点について条件を満たしたものであることが法律で定められています。走行の際には改めて条件をしっかりと確認しましょう。

その法律自体知らず、以前から走行していた人も多いと思います。ホームセンターなどでも反射板は簡単に手に入れることが出来ます。反射板を購入し、ロータリーの後ろなど所定の位置に貼りましょう。

画像提供:アグリステーション

事故の例を情報共有して、みんなで安全を目指そう

この他にも、冬場は暖房施設つきのビニールハウスで不完全燃焼による一酸化炭素中毒になることなどもあります。また、日々の農業機械のメンテナンスとして、グリースや潤滑油を注油して可動部の擦れを防止したり砂や土の侵入を防いだりすることで、機械の故障防止や耐用年数の向上にもつながるとのことです。

こうした小さなトラブルから大きな事故の事例まで、多くの人が知ることが農作業の事故防止につながります。

でも情報を共有することで、他の農家の事故を未然に防ぐことにもつながります。何かあった時には地域の農業普及所、またはアグリステーションまで連絡くださいね。さまざまな事例をSNSなどで共有し、少しでも事故が減るよう、みんなで力を合わせていきましょう。

それではみなさま、今日も一日ご安全に!