第36期竜王戦(主催:読売新聞社)は、2組昇級者決定戦決勝の斎藤慎太郎八段―佐々木勇気八段戦が11月1日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の熱戦を139手で制した斎藤八段が1組昇級を決めました。

最後の1枠はどちらに

竜王戦2組は①ランキング戦と②昇級者決定戦それぞれにおける上位2名の合計4名が1組に昇級するシステム。これまでに豊島将之九段・佐藤康光九段・菅井竜也八段の3名が昇級を決めています。本局、先手となった斎藤八段は角換わり腰掛け銀に誘導しました。

両者ハイペースで指し手を進めるなか斎藤八段が指した55手目の金上がりで前例を離れます。手を渡された佐々木八段は猛攻を開始しますが、攻めが一段落したところで長考。134分の熟慮で指された遠巻きの銀打ちは苦心の一手で、変調の感が否めません。

終盤に事件発生

後手の攻めをいなすことに成功した斎藤八段は手にした豊富な持ち駒を使って敵陣攻略に乗り出します。手裏剣の歩から控えの桂という基本手筋の合わせ技が決まった局面では佐々木玉の受けは難しく、終局は目前かと思われました。

しかし、決め手を見いだせないまま攻め駒を補充したのが斎藤八段の後悔した一手。ここは5筋の香を支えておけば手堅く、こうなれば後手の入玉の望みはありませんでした。実戦は数手後に佐々木八段から角をタダ捨てする妙手が飛び出して瞬間的に形勢が逆転しています。

斎藤八段が再逆転

角を犠牲に自玉の逃げ場所を確保した佐々木八段は「急に勝ちになった」と自覚しますが、時間切迫のなかでミスが出ます。歩頭に差し出された金を素直に取ったのが佐々木八段が後悔した一手で、感想戦では代えて歩成りの王手で玉を危険地帯に呼ぶのが急務とされました。

佐々木八段はその後も王手の連続で迫りますが、斎藤八段は自玉がギリギリ詰まないのを読み切っていました。終局時刻は21時44分、攻防ともに見込みなしと認めた佐々木八段が投了。二転三転の激戦を制した斎藤八段が第34期以来となる1組復帰を決めました。

  • 感想戦で斎藤八段は「(終盤で)一番逆転しやすい順を選んでしまった」と後悔を見せた(写真は第79期名人戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    感想戦で斎藤八段は「(終盤で)一番逆転しやすい順を選んでしまった」と後悔を見せた(写真は第79期名人戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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