第54期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)は決勝三番勝負第3局の藤本渚四段―上野裕寿四段戦が10月31日(火)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、矢倉対雁木の熱戦を113手で制した上野四段が自身初となる優勝を飾りました。
18歳対20歳の同門対決
藤本四段と上野四段はともに井上慶太九段門下で兄弟弟子。今年10月付けで四段昇段を果たした上野四段に対し、2歳年下の藤本四段は1年早くプロデビューを飾っています。1勝1敗で迎えた決勝第3局は振り駒で上野四段の先手と決まりました。
上野四段が矢倉、藤本四段が雁木に組む本局の進行は決勝第1局と同じ展開。この将棋を制していた上野四段ですが本局では先に手を変えます。4筋の歩を突いたのは持久戦を目指す狙いですが、後手の藤本四段はこれを許さじと反発を見せます。
待っていたドラマ
飛車を縦横に活用して攻勢を取る藤本四段に対して上野四段も飛車先の歩突きから反撃開始。盤面全体を使った押し引きののち優位に立ったのは先攻した藤本四段でした。両者一分将棋のなか上野四段が金打ちの詰めろで下駄を預けた局面がポイントとなりました。
中継アプリに備え付けられている将棋ソフトは藤本四段に100%の勝率を示します。これは先手玉に即詰みが生じているためですが、秒に追われる藤本四段が選んだのは詰めろをかける香成り。この瞬間、勝敗が入れ替わりました。
終盤の逆転で上野四段が優勝
九死に一生を得た上野四段は桂打ちの王手から収束に乗り出します。逆転を悟った藤本四段は目元を押さえてうつむきます。終局時刻は17時2分、最後は自玉の詰みを認めた藤本四段が駒を投じて上野四段の勝ちが決まりました。
執念の粘りを実らせた上野四段は対戦成績を2勝1敗として第54期新人王の座に輝きました。上野四段は局後、「一つ結果を出すことができたので他の棋戦でも活躍できるよう頑張りたい」と喜びを語っています。
水留 啓(将棋情報局)
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