日本照明工業会(以下JLMA)は10月27日、「Lighting 5.0 ~未来のあかりアイデアコンテスト2023~」の表彰式を開催。TOPPANの会社員チームが提案した、1人ひとりの生活シーンに併せてあかりを届ける「住人灯色 -JUNIN TOIRO-」が最優秀賞に選ばれた。

  • 「Lighting 5.0 ~未来のあかりアイデアコンテスト2023~」の表彰式が開催

■どんな作品が選ばれた?

本アイデアコンテストは、JLMAが提唱するLightning 5.0の推進に向けたアイデアを広く募集したもの。みんなの暮らしを豊かにする、「健康」「安全」「快適」「便利」をもたらす未来のあかり、というテーマでアイデアを募った。

JLMAの西原隆史会長は「今回が初めてのコンテスト開催となります。募集期間は5月からの2カ月間でしたが、期間中には8歳から81歳まで、全国から290件もの応募をいただきました。人々の生活に役立つもの、生活を豊かにしてくれるものなど良いアイデアがたくさんあり、どれも甲乙つけがたく、受賞作品を絞るのにとても苦労したと聞いています。また審査員から強い要望があり、急きょ、キッズアイデア審査員特別賞ももうけました。こうしたアイデアコンテストは、私たち照明に携わる者の刺激になると期待しております」とあいさつをした。

  • 一般社団法人 日本照明工業会 会長の西原隆史氏

最優秀候補に残った7作品を対象に、一般WEB投票なども実施。そして最優秀賞が決定した。TOPPANの会社員(田中瑛人さん、岡部諒さん、小野彩音さん、神田航平さん)による「住人灯色 -JUNIN TOIRO-」は、いわば天井から光が差し込む可動式の照明器具。同じ家に住んでいても家族1人ひとりに必要なあかりは異なるという気付きから、人が移動すると追従する「自動追尾機能」と、場所・光量・色温度・範囲を自由に変えられる「カスタマイズ機能」を備えた照明を提案した。

  • 1人ひとりの生活シーンに併せて変化するあかり「住人灯色 -JUNIN TOIRO-」。住人それぞれの生活シーンに最適なあかりを届ける

  • TOPPANの田中瑛人さん、岡部諒さん、小野彩音さん、神田航平さん

コンテスト実行審査員は「在宅勤務も1つのライフスタイルとなり、住空間の照明に求められるものが多様化してきていると感じています。その中で、1人ひとりの生活シーンにあわせて変化するあかり、という生活者目線のアイデアをいただきました。近未来ではこんな照明になっているのではと思える、最優秀賞にふさわしいアイデアでした」と評価する。

学生特別賞は、兵庫県立大学の平田雛子さんの「安全のあかし 安心のあかり」。歩道に埋め込むタイプの照明で、普段は町のあかりとして機能し、災害時には高台など安全な避難場所に人々を誘導するあかりとなる。

  • 災害時には避難誘導灯となる「安全のあかし 安心のあかり」

  • 兵庫県立大学の平田雛子さん

優秀賞は、北九州市立大学 国際環境工学部 福田祐美研究室の学生(川上そよ香さん、河野真悟さん、天野瑛太さん)による「インビジブルライト」。照らした部分が人の目に見えなくなるという、未来の照明を提案した。

  • 北九州市立大学の川上そよ香さん、河野真悟さん、天野瑛太さん

特別審査員賞は「友達になれる『あかりの妖精』常夜灯」。子どもが発する泣き声、あるいは特定の言葉に反応して光・影が変化する常夜灯を提案する。

受賞者である、大阪府の会社員 鹿取徳和さんは「子どもの頃、親がつけてくれた常夜灯をぼんやりと見つめながら、ピーターパンのような友達が迎えに来てくれたらな、と想像していました。現在、父親として1歳と4歳の育児をしておりますが、寝かしつけた子どもが夜泣きをすることもあり、自分が子どもだった頃を思い出したことがアイデアのきっかけになりました」と説明する。

  • 大阪府の会社員 鹿取徳和さん

このほか、キッズアイデア審査員特別賞として兵庫県の小学生 奥地洋翔くんの「プールでおぼれても助けるライト」が選ばれた。AIカメラとあかりによって、おぼれている人にスポットライトを当てて、周囲の人に気付かせるというアイデア。

ビデオメッセージのなかで奥地くんは「子どもがプールでおぼれてしまう、おぼれる人は静かに沈んでいく、とニュースで見ました。楽しく安全にプールで泳げるようにしたいです」と話していた。

  • 兵庫県の小学生 奥地洋翔くん

特別審査員として参加した、TVなどでコメンテーターとして活躍中の若新雄純氏は「(鹿取さんの)常夜灯のアイデアを推しました。とはいえ自分が子どもの頃は、何が何でも常夜灯を消そうとする親から大人の厳しさを学んだものですが(笑)。常夜灯って、寝たあとは見えない照明。でも、自分が寝たあとも部屋は真っ暗になっていない、という安心感をもたらしてくれます。照明があるから心地良く感じるとか、そんな特別な体験をもたらすケースってほかにあるだろうか、などと想像をふくらませてくれました」とコメントした。

  • 審査員として参加した若新雄純氏

またJLMAのアンバサダーを務める、お笑い芸人のパックンことパトリック・ハーラン氏は「あかりに携わる人にとって、今後のヒントになるアイデアがたくさん出たコンテストだったと感じています。果たして、光を遮断するインビジブルライトは実現できるのでしょうか。研究者の皆さんは興味関心をくすぐられたでしょう。Lighting 5.0は、やがて6.0、7.0と続いていきます。今回のアイデアが将来、私たちの生活を「健康」「安全」「快適」「便利」といった側面からサポートしてくれることを期待しています」とし、受賞者をねぎらった。

  • アンバサダーのパトリック・ハーラン氏