日向坂46の齊藤京子が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『泥濘の食卓』(毎週土曜23:30~)が現在放送中だ。伊奈子氏によるコミックを実写ドラマ化し、齊藤が初の単独主演を務める同作は、毒親に育てられたことで「自分には何の取り柄もない」と思い込んでいる自己肯定感の低いスーパーの店員・捻木深愛(ねじき みあ)が妻子あるバイト先の店長と恋愛関係になり、やがて店長の息子、店長の妻と、愛する相手の家庭へ徐々に寄生して泥濘(ぬかるみ)へと引きずり込んでいく“パラサイト不倫”を描いている。
主人公・深愛が恋をしているスーパーの店長・那須川夏生を演じるのが吉沢悠。4月クールのドラマ『夫婦が壊れるとき』(23年・日本テレビ)で大きな話題を呼んだ吉沢が再び不倫を描く作品に挑戦する。今回は吉沢に、今作の見どころや役どころについてインタビュー。夫婦にとって大切だと感じることについても話を聞いた。
■挑戦できる面白いドラマになりそう
――『泥濘の食卓』への出演が決まったときの心境を教えてください。
不倫を描いた作品だと聞いて原作や台本を読みましたが、確かに不倫がフックになっているものの、そこをメインに展開していくというよりは、それぞれのキャラクターが抱えているものが作る世界観が魅力の作品だと感じました。俳優として挑戦できる、面白いドラマになりそうだという印象を持ちましたね。
――深愛も独自の世界観を持ったキャラクターだと思いますが、どんな印象を持ちましたか。
深愛には、どこか共感できるところがあります。深愛の場合はなかなか大変な家庭ですが、小さい頃に親に怒られた経験から「自分は悪い子なんだ」と思ったり、小さな嘘をついた経験から「自分は本当にダメな生き方をしている」と思ったことは皆あるんじゃないかなと。僕も、友達同士の会話だと引っかからないようなことでも、母親に「こうしたほうがいいんじゃないの?」と言われたことがずっと胸に残っていたりして。
――いい意味でも悪い意味でも、親の言葉が特別に胸に残ってしまうことはありますよね。
「親に褒められるような人でいたい」という深愛の根底にある思いが、日常世界で他の人が予想できないような行動につながっていくというところは、こういう人いるなと感じながらも、視聴者にとって「次はどんな行動を起こすんだろう」とドキドキする面白いキャラクターになっていきそうだと感じました。演じるのが大変な役だと思いますが。
■“疲弊感”あるビジュアルに「この人がモテるのかな(笑)」
――そんな深愛を演じる主演の齊藤京子さんの印象を教えてください。
本読みの日にお会いしてご挨拶したのですが(取材は撮影開始前)、柔軟性があり、主演を務めるという責任感をしっかり持って現場に参加している印象を受けました。
――吉沢さんが演じる那須川店長の印象は。
表面的なところを見ると、やっぱり“ずるいおじさん”ですよね。まだ人生経験を積んでいない若い女の子の心の隙間に、上手にパワーバランスを使って入っていってる感じが。あまり理解できないキャラクターだからこそ、やりがいがありそうだと思いました。俳優としては、役を演じるとき「この人はこういう人なんじゃないか」と分からない部分を埋めていかないと演じられないわけですが、そこを探っていくのが役作りの作業として面白いです。
――髭が生えていたり、くたびれた感じのビジュアルが原作から飛び出してきたようです。
監督は、原作で描かれている那須川の“疲弊感”を大事にしてほしいと仰ってまして。僕は実際にはあまり白髪もないし、ビシッとしている役をいただくことが多かったので、何を足して何を引いたら那須川に近づけるのか、手探りな状態で始めました。鏡で見たり、撮影していただいたものを見ると、自分でも「こんな感じに見えるんだ」と新しい発見があるので楽しいです。髪がボサボサで美的感覚に意識がいかないようなキャラクターなので、「この人がなんでそんなにモテるのかな」という不思議さはあるんですけど(笑)、「この人なら、もしかしたら」という可能性も感じさせる役にしていきたいと思っています。