4年ぶりに開催された東京モーターショー改め「ジャパンモビリティショー2023」には、多くのメーカーがスポーツカーのコンセプトモデルを出展していた。BEV(バッテリーEV)が多い中で、筆者の目に最も魅力的に映ったのがロータリーエンジンを使ったマツダの「MAZDA ICONIC SP」(アイコニックSP)だ。
リトラクタブルヘッドライトが復活!
事前に公開されたディザー画像ではリアのテールライト部分のみが紹介されていたが、もうそれだけで大きな期待が膨らむほど魅力的なものだった。はたして我々の目の前で公開された真紅の実車は、それを裏切らない出来栄え。「マツダさん、やってくれたね!」と思わず頬が緩んでくるのがわかったほどだ。
事前の情報では「マツダブースはロードスター一色になる」と紹介されていたので、このコンセプトカーもその要素を含んだものになるという予想があったのだが、現車を見た時の最初の印象はというと、高性能ロータリースポーツカーとして一世を風靡した「RX-7」の後継モデル「RX-9」の登場か? と思わせるような雰囲気にあふれていた。
そのわけは、低いボンネットをもつダイナミックで流麗な2ドアクーペというフォルムだけでなく、スーパーカーのように上方に開くバタフライドアだったり、空力を意識したブラックの大径ホイール内にブレンボ社製ブレーキキャリパーを装着した太いブリヂストンタイヤだったり、ショーの最中に開いてくれた最新のLEDヘッドライトを組み込んだ細目のリトラクタブルヘッドライトだったりするわけだ。
歩行者保護や空気抵抗悪化などの理由で製品化されることがなくなった「リトラ」ライトを最新技術でわざわざ復活させてきたというのは、やっぱり市販化を前提に開発している証拠なのでは、と思ってしまう。
そして極めつきが、パワートレインとして採用された2ローターの「Rotary-EV」システム。カーボンニュートラル燃料で発電でき、最高出力は370PSというからなかなかのものだ。しかも、再生可能エネルギー由来の電力で搭載バッテリーを充電すれば、実質的にカーボンニュートラルでの走行が可能になるのだ。さらに外部給電機能まで持っているというから、アウトドアで活躍できるだけでなく災害時にも利用できるクルマに仕上がっている。
ハイパワーとロングレンジを獲得するために大きなバッテリーを搭載し、2トンを超えるような大きく重いボディを豪快に走らせるというEV(電気自動車)スポーツカーが多い中で、アイコニックSPはボディサイズが全長4,180mm、全幅1,850mm、全高1,150mm、車重が1,450kg(発表資料による)と軽量かつコンパクト。50:50の前後重量配分をボディを370PSを目一杯使ってキビキビ走らせるのは、考えただけでワクワクするではないか。
マツダが大切にしてきたという赤いボディは、これまでの「ソウルレッドメタリック」とは異なる鮮やかな「ヴィオラ・レッド」。ドアを跳ね上げたときに見えたインテリアカラーのブルーとのコントラストがスポーツカーらしくてこれもよし。ぜひショーの会場で実車を確認してみていただきたい。