カモミールとはどのようなハーブ? 特徴や由来など
カモミールは北ヨーロッパおよび西アジア原産といわれ、古くから薬用植物として利用されてきた歴史があります。
日本へは19世紀はじめにポルトガル人やオランダ人によって伝えられ、鳥取県や岡山県で栽培されました。一年草の植物ですが、秋まきすると二年草になります。
カモミールの花は、白い花弁と黄色い中心部を持つヒナギクに似た小さな花で、リンゴに似た甘い香りがします。
カモミールは、リラックス効果があり、不眠やストレスの緩和に役立つとされています。また消化を助ける効果や、抗炎症作用・美容効果もあると考えられており、ハーブティーや精油などさまざまな方法で利用されています。
カモミールの種類
カモミールは大きく分けて、ジャーマンカモミールとローマンカモミールの2種類があります。それぞれどのような違いがあるのか解説していきます。
ジャーマンカモミール
ジャーマンカモミールは、地中海沿岸原産のキク科の一年草で、30センチから60センチ程度の背丈まで成長します。
昔からヨーロッパの民間薬として親しまれてきた歴史があり、数あるカモミールの品種の中でも、ハーブティーに使用されるのは主にジャーマンカモミールです。
春から初夏にかけて、白い小花を咲かせ、花の中心が小山のように盛り上がっているのが特徴的です。草勢が強く、地植えすれば自然とこぼれた種から増えていきます。特徴的な香りは青リンゴを思わせるような爽やかで甘いもので、この香りの源は花であり、葉には香りはありません。この香りと効能から、お茶やアロマテラピー、そして薬として利用されてきました。
ローマンカモミール
ローマンカモミールは、西ヨーロッパ原産のキク科の多年草ハーブです。ジャーマンカモミールとは異なる属に分類されることから、その生態や特徴も大きく異なります。
ジャーマンカモミールが上に伸びるのに対し、ローマンカモミールは地面をはうように成長し、その特性から「香りのする芝」とも称されることがあります。成長しても20センチから30センチほどの大きさにしかならず、踏み付けにも強いので、グラウンドカバーの植物として利用されています。
花の特徴として、白くて魅力的な花を咲かせますが、ジャーマンカモミールと比べて、ローマンカモミールの花のサイズは少し大きく、しかし咲く花の数は少ないという特徴があります。リンゴを思わせる香りを持ち、その香りはリラックス効果があり、ハーブティーやアロマテラピーに使われることも多いです。
カモミールの栽培暦
カモミールの栽培暦は、ジャーマンカモミールとローマンカモミールではあまり違いはありません。
どちらも、3月〜4月頃の春にかけて種まきや植え付けをし、6月頃に開花します。
秋まきも可能で、夏の暑さが落ち着いた9月〜10月頃に種まきや植え付けができます。
多年草のローマンカモミールは、秋まきした方が株が大きくなりやすく、花もたくさん咲くようになるため、秋にまくと良いでしょう。
カモミールの種まき
カモミールは草勢が強く、栽培しやすいハーブです。
種まきもそれほど難しくありませんが、いくつかポイントを抑えておきましょう。
カモミールの種まき時期
カモミールは3月〜4月中旬の、春の気温が安定して霜の心配がなくなる時期に種を直接畑やプランターにまきます。
秋まきする場合は、9月〜10月頃が良いでしょう。カモミールは暑さと霜に弱いので、種まきする際は気温に注意しましょう。
種まきの方法・コツ
カモミールの種まきは、バラまきで行います。カモミールの種は非常に小さいので、まく際には均一に散らばるよう注意が必要です。また、まいた後には軽く土で覆い、種が風で飛ばされないようにします。水は均一に与え、土が乾かないよう注意してください。
発芽を促すためには、15℃以上の気温が続く日が理想的です。発芽後は、苗が適切な間隔を持つように間引きを行い、健康な成長を促します。
植え付け時期
ローマンカモミールは、春や秋の気候の良い時期に植え付けが推奨されています。特に4月〜6月や9月〜10月が最適です。植える際は、過密にならないよう株間を開けることが重要で、初期の段階での水やりも忘れずに行うことが求められます。
一方、ジャーマンカモミールは秋から春にかけての植え付けに適しています。種から育てる場合は、直接土にまくか、ポットでの育成が良いでしょう
カモミール苗の植え付け方法
カモミールは種からの栽培のほか、育苗した苗や、ホームセンターやガーデンショップで購入した苗を植え付けることでも栽培することができます。
鉢植えやプランターで栽培する場合と、地植えで栽培する場合、それぞれ解説していきますので、参考にしてください。
鉢植え・プランターに植え付ける場合
◯用意するもの
・プランターor鉢植え(ゆとりをもった大きめサイズが望ましい)
・ハーブ用土or野菜用培養土
・鉢底石、鉢底ネット
・プランターを置く台やブロック、すのこなど
◯やり方
初めに、用意したプランター(鉢植え)に、鉢底石と鉢底ネットを設置します。
次に土を入れ、軽く叩いたり揺らしたりして、土をならしましょう。
土の準備ができたら、苗を植え替えます。複数の株を植え付ける際は、株間20センチは取りましょう。
植え付けが終わったら、ジョウロなどで優しく水やりを行ってください。
◯注意点
ベランダや庭で栽培するときは、エアコンの室外機から離して置いてください。
室外機の温風が当たると、株が弱ってしまい、枯れてしまうこともあります。
プランターは直接床や地面に置かず、台やすのこなどに置いて、風通しを良くしてあげましょう。
ジャーマンカモミールは大きくなると高さ60センチほどまで成長します。またローマンカモミールは地をはって成長しますが、それでも高さ30センチほどには大きくなります。そのため、あらかじめ大きいサイズのプランターや鉢植えに植えることで、余裕をもって栽培することができるでしょう。
なおジャーマンカモミールは一年生の植物のため、翌年に再度植える必要があります。いずれのカモミールも、植え付け後の水やりと、蒸れを避けるための適切な配置がポイントです。
地植えの場合
カモミールは多肥を嫌う植物です。
普段から肥料や堆肥(たいひ)を散布している畑や庭で栽培する場合は、元肥を入れずに植え付けると良いでしょう。
元肥を入れる場合は、油かすやボカシ肥料と苦土石灰を一握りずつ施肥すれば十分です。
植え付け前に土をしっかり耕して、排水性の良い土壌にしてください。
蒸れに弱いので、株間を30センチ程度空けて通気性を保ち、根腐れや病気のリスクを減らしましょう。
カモミールの管理方法
カモミールは比較的病気に強く、ある程度放任していてもすくすくと育ってくれるハーブです。ただ、環境によってはしっかり手入れをしないとダメになってしまうこともあるため、油断は禁物です。
ここでは、カモミールの栽培管理について解説していきます。
水やりや肥料のやり方、剪定(せんてい)・摘心についても説明しますので、参考にしてください。
水やりのやり方
◯プランターの場合
土の表面が乾いたらたっぷりと水をあげましょう。
カモミールの発芽がそろわないうちは、種を流してしまわないように注意深く水やりしてください。
◯地植えの場合
庭や畑で栽培している際は、水やりをする必要はありません。
基本的に自然降雨で十分ですが、晴れの日が長く続く場合は水をあげたほうが良いでしょう。
施肥のやり方
◯プランターの場合
市販の栽培用培養土を使っている場合は、別で施肥をする必要はありません。
その後は、花が咲き始めた頃合いで液体肥料やハーブ用肥料を与えると良いでしょう。
◯地植えの場合
多肥を嫌うので、元肥は控えるか、少量で構いません。
元肥をつける場合は、鶏ふんや油かすなどの有機肥料、ボカシ肥料を与えると良いでしょう。緩効性化成肥料を使っても構いません。
栽培しているうちに、株の元気が弱まってきたように感じたら、液体肥料やボカシ肥料を与えてください。
剪定と摘心
カモミールの切り戻し、剪定、摘心については以下の通りです。
◯ジャーマンカモミール
摘心:苗の丈が15センチくらいになったら摘心(先端の成長点を摘むこと)をします。茎の分岐が増え、植物をもっと茂りやすくする効果があります。
切り戻し:花の収穫後、または花が終わった後に茎を少し切り戻すことで、再び新しい芽や花の発生を促すことができます。
剪定:通常、ジャーマンカモミールは一年生のため、冬の終わりまでに枯れることが多いです。しかし、枯れた部分や病気の部分を剪定することで見た目を良くすることができます。
◯ローマンカモミール
摘心:苗の丈が15センチくらいになったとき摘心を行うことで、より茂りやすくし、地面をはうような成長を促進できます。
切り戻し:毎年、花が終わった後や春の初めに軽く切り戻しを行いましょう。
剪定:耐寒性の多年草であるため、冬の間に枯れた部分や古い茎や葉をクリーンアップするために剪定を行います。
◯共通のポイント
鋭い剪定ばさみやプラントクリッパーを使用し、常に清潔に保ち、病気の拡散を防ぐために使用の都度アルコール等で消毒します。
剪定や切り戻しは、特に病気や害虫の侵入を防ぐために、乾燥している日中に行うことが最適です。
収穫方法
カモミールの花が完全に開花した瞬間、またはちょうどその前が最適な収穫時期とされています。この時期、花の中心の黄色い部分(花床)が盛り上がり、周囲の白い花弁が水平またはわずかに下向きになっているのが特徴です。
花が早朝の露で濡れていない、日中の乾燥した時間帯に収穫するのがベストです。
花を摘む際は、茎の先端を指で摘んで優しく引き抜くか、または剪定ばさみを使って茎を切り取る方法があります。
収穫した花は、すぐに乾燥させるか、すぐに使用する場合はそのまま保存します。乾燥させる場合、風通しの良い場所で陰干しし、完全に乾いたら密閉容器に入れて保存します。
植え替えの方法
ポットや鉢で育てているカモミールが、成長が停滞したり、鉢底から根がはみ出したりするようになったら植え替えの時期です。植え替える鉢は、現在の鉢よりも一回り大きいものを用意します。
既存の鉢からカモミールを優しく取り出し、根を傷めないように注意しつつ、古い土をできるだけ根から取り除きます。新しい鉢の底に底石や粗い土を少量敷き、その上に植え付け用の土を入れます。カモミールを中心に配置し、鉢の中央に深めの植え穴を掘り、そこにカモミールを植えます。その後、周りに土を埋めて固定します。植え替え後、カモミールがストレスを受けないよう、強い日差しや風から保護してあげると良いでしょいう。
カモミールの増やし方
一年草のジャーマンカモミールは種から、多年草のローマンカモミールは種・株分け・挿し木で増やすことができます。
◯ローマンカモミールの株分け方法
①時期:春(新しい成長が始まる時期)や秋(成長が落ち着く時期)が適しています。
②株の掘り上げ:スコップを使って、カモミールの株を丁寧に掘り上げます。
③分割:根が絡まないように注意しながら、株を二つまたはそれ以上に分割します。それぞれの部分には健康な根と葉が含まれていることを確認してください。
④植え付け:分割した株を元の場所または新しい場所に植え付け、しっかりと水やりを行います。
◯ローマンカモミールの挿し木方法
①切り取り:健康な枝を選び、鋭いはさみやナイフを使って、10センチ~15センチの長さに切り取ります。
②下葉の除去:挿し木の下部の葉を取り除きます。
③挿し木用土の準備:排水性が良い土(市販の培養土など)を選び、ポットに入れます。
④挿し木:切り口を土に挿入し、軽く土を押し固めます。
⑤水やり:挿し木をした直後に、土が乾かないように水を与えます。
⑥根付きを待つ:根がしっかりと張るまで、数週間待ちます。
これらの方法で、カモミールの株は増やすことができます。ただし、株分けや挿し木の際には、植物がストレスを受けないように注意し、環境条件を整えてあげることが重要です。
カモミールにつく害虫
カモミールは、多くのハーブと同様に、いくつかの害虫がつくことがあります。特にアブラムシとハダニは、カモミールに影響を与える害虫として注意が必要です。
◯アブラムシ
特徴: 小さく、緑色や黒色、黄色などの色を持つ昆虫。多くの植物に見られる一般的な害虫です。
被害: アブラムシは植物の汁を吸って養分を取り、その結果植物は弱ってしまいます。また、ミツロウ状の排せつ物を出し、これがカビなどの病気の原因となることがあります。
対策: 天敵としてテントウムシが知られており、これらを増やすことでアブラムシの発生を抑えることができます。また、アブラムシの初期の発生を発見した場合、強い水の勢いで洗い流す、指で潰す、エコピタなどの有機農薬を使って駆除すると良いでしょう。
◯ハダニ
特徴: 超微小なダニの一種で、主に葉の裏側に生息します。高温乾燥の環境を好むため、夏場は特に注意が必要です。
被害: ハダニは葉の汁を吸い、葉が黄色くなったり、白い斑点が出たりすることがあります。被害が進むと葉が枯れてしまうことも。
対策: 高湿度の環境はハダニの繁殖を妨げるので、葉に水を吹きかけるなどして湿度を上げることが有効です。駆除する際は、有機農薬を使うと良いでしょう。
これらの害虫が発生した場合、早期に対策を講じることが重要です。また、予防としては、植物が健康であること、適切な水やりや風通しを良くすることが基本的なポイントとなります。
カモミールの栽培方法を覚えて、豊かなガーデンライフを
カモミールは、その白く繊細な花と心を落ち着かせる香りで、多くの人々を魅了してきました。栽培も難しくなく、はじめての人でも栽培に挑戦しやすいハーブです。
このハーブは、リラックスや睡眠の質の向上に役立つだけでなく、アロマテラピー、お茶、スキンケアなど、さまざまな用途で利用できるのも魅力です。庭やベランダを美しく彩ってくれますし、収穫したてのカモミールは、その新鮮さに感動するかもしれません。
もちろん、日々のケアや病害虫への注意は必要です。本記事を参考にして、カモミール栽培に挑戦してみてください。