大きな被害をもたらしたヒグマの駆除にも非難の声

ハンター(イメージ画像)

北海道では2023年8月、牛66頭を襲ったヒグマ「OSO18」が駆除されたとの報道がありました。しかし、被害の拡大を防いだハンターには、各地から多くの非難のメールや電話が殺到。対応に苦慮する北海道庁はX(旧Twitter)で「この(ヒグマの)捕獲は地域の安全に欠かせないもの」と異例の投稿をし、投稿には多くのコメントが寄せられました。

【 有害捕獲へのご理解のお願い】
人や農業などの被害防止のため、やむを得ず捕獲する場合があります。
この捕獲は地域の安全に欠かせないもの。捕獲への非難は、その担い手確保の支障となりかねません。

こうした社会的重要性について、どうかご理解をお願いします。

— 北海道【公式】 (@PrefHokkaido)

北海道のヒグマによる農業被害は、ここ20年間増加傾向

ヒグマ

事実「ヒグマ関係各種統計資料」によれば、ヒグマによる農業被害は過去20年間で増加傾向(※1)にあります。捕獲頭数は年々増加している一方で、農業被害額も増加の一途をたどっており、北海道でのヒグマによる農業被害額は2021年時点で約2.6億円以上(※1)。2023年度のヒグマによる「人身事故」は10月15日時点で少なくとも2件は発生(※2)しています。

取材に対し同担当者は「ヒグマの駆除をするハンターの方々に非難の声が上がっていますが、農業被害や人身被害を減らすためにどうしても問題個体を駆除する必要があるため、ご理解いただきたい」とコメントしました。

※1 出典:
※2 出典:

本州ではツキノワグマの被害も

ツキノワグマ

本州ではツキノワグマの被害も増加しています。ツキノワグマはヒグマに比べて体が小さく、体長は100~150センチ、体重はオスで60~120キロほどです。最近では人里に現れて果樹や畑の作物を荒らすことが多いですが、人が襲われた例もあります。

直近では10月5日、秋田県美郷町の作業小屋に長時間立てこもっていたクマ3頭が駆除されたことが話題になりました。

現場近くにこども園があり、再び戻ってくる可能性があることから、県と町が協議の上でクマの駆除を実施しました。しかし秋田県や美郷町には駆除に対する非難の声が寄せられたそう。秋田県自然保護課の担当者は「人命を助けるため。理解してほしい」と話しています。

環境省が11日に発表した4〜9月の速報値では、ツキノワグマとヒグマの被害は既に109人(※3)にも及んでおり、昨年、一昨年を上回るペースです。

※3 出典:環境省「」

クマによる農業被害を防ぐために

クマ出没注意の看板(イメージ画像)

猛暑になるとドングリ類のクマの餌が不作となり、それに伴い住宅地などでクマの目撃件数が増えるのが通説。今年は猛暑が続いたことから、今後もクマの目撃件数は増えることが想定されます。

北海道庁ヒグマ対策室の担当者によると「まずは今すぐにできる対策を取るのが大切。下記の四つを対策として実施してほしい」とのこと。

生ゴミの処理を徹底する

不要な農作物や収穫しない果実を放置せず処理する

電気柵で防除しエサ場として認識させないようにする

ヒグマの出没情報や注意喚起に関する情報を随時確認する

ヒグマもツキノワグマも嗅覚が鋭く、ゴミや果実の匂いをたどって農作物のある場所へ近づいてきます。電気柵などの設備を設置しつつ、人家に引き寄せない環境づくりが大切です。

クマの被害にあわないよう、事前に対策を講じましょう。