テスラのクルマはちょこちょこ変わっている。少し見ない間に、いろいろな機能が追加となっていたり、性能が向上していたりするから目が離せない。今回はセダン「モデル3」が新型になったということで、どう変わったのかじっくりと観察し、担当者に話を聞いてきた。

  • テスラ「モデル3」

    細かすぎて伝わらない? 新型「モデル3」はいろんな部分が進化していた!

見た目は大人っぽくなった?

テスラのモデル3が変わった。分かりやすいのは見た目で、ヘッドライトの形状が変わってフロント部分はすっきりと大人っぽい印象に。リアは「T」のエンブレムだった部分が「TESLA」のロゴに置き換わった。文字ロゴがリアに入るのは「ロードスター」以来とのことだ。

  • テスラ「モデル3」
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  • 左が新型「モデル3」、右が2022年2月に撮影した「モデル3」

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  • リアのエンブレムは文字ロゴに変わった。リアの下部には空力パーツのディフューザーを新規採用

ここからは、聞いてみないとなかなかわからない変更点をお伝えしていきたい。記事内で持ち出す数値データは基本的に、欧州参考値となる。日本仕様のスペックは国土交通省の認可取得後に明らかとなる。

まずはボディサイズ。新型は全長4,720mm、全幅1,850mm、全高1,441mmで、これまでに比べ全長が25mm伸びている。

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    全長が伸びた「モデル3」

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  • リアトランクが大きくなったことにより荷室容量は33L増えて計682Lとなった。右側の写真はフロントの荷室。ウォッシャー液の補給口は今まで奥にあったのが手前に移動。つまり補充しやすくなっている

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    ボディカラーは計5色で変わらないが、新色で「ステルスグレー」(写真)と「ウルトラレッド」が加わった。標準のボディカラーは「パールホワイト」。「ソリッドブラック/ディープブルー」は12.6万円、「ステルスグレー」は18.9万円、「ウルトラレッド」は26.9万円の追加料金が必要となる

航続距離がさらにアップ! 700kmも視野に?

航続距離(フル充電で走れる距離)も伸びた。バッテリー容量が大きくなったわけではなく、空力の改善により性能が向上したそうだ。モデル3は「RWD」(後輪駆動で価格が安い方のグレード)と「ロングレンジ」(バッテリーが大きく動力性能も高いグレード)の2種類だが、航続距離(WLTP)はRWDが491kmから513kmに(22km増)、ロングレンジが602kmから629kmに(27km増)伸びている。日本仕様はWLTCモードでの表記となるが、これだとロングレンジが700kmを超える可能性もあるという。

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    車内もけっこう変わっている。まず、スピーカーは両グレードで数が増えた。「RWD」は7個から9個に、「ロングレンジ」は「13個スピーカー+1サブウーファー」だったのが「15個スピーカー+デュアルサブウーファー+デュアルアンプ」になっている。エアバッグは従来の6個から7個に増加。ドライバーと助手席の人がぶつからないように、シートの間(頭部のあたり)に飛び出すエアバッグが加わった

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    リアの頭上もガラスが二重になったので、これで「360度」二重ガラスになったとのこと。ドアの締まり音は「バンッ!」という欧州車的なものになっている。実際に乗りこんでドアを閉めると、静粛性(密閉感?)がかなり高かった

  • テスラ「モデル3」
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  • かなり嬉しいのが、フロントシートに「ベンチレーション」機能が追加になったこと。空気を吸い込むタイプではなく風が出るタイプで、試してみたが涼しくて快適だった。グローブボックスは少し狭くなったそうだが、助手席も運転席もひざ周り、足元のスペースは広い

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    ダッシュボード中央のディスプレイはベゼル(ふち)が細くなって0.4インチアップの15.4インチに。ダッシュボードの素材はウッドパネルなどを使っていたが、新型では絨毯っぽいファブリックになった

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  • 後部座席にもディスプレイが追加に! 後ろに座る人が操作できるのはもちろん、例えば後ろに座っている子供から「YouTubeが見たい!」とのリクエストが上がった場合は、フロントの画面を操作してコンテンツを選び、後部座席のモニターで再生するといったような使い方も可能だ

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    運転席と助手席の中央にあるUSBポート(タイプC)は高速充電に対応。「MacBook Pro」も充電可能とのことだ。クルマのUSBでは出力が低すぎて、ノートPCを充電できない場合もあるそうなので、この改良が嬉しい人はいるはず。スマートフォンを充電するにしても、高速充電対応の方が便利だ

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    AMDの「Ryzen」というプロセッサーは最新世代に。ナビもYouTubeもサクサク動くのは、このあたりが効いているのだろう。ちょっと触った感じ、下手なPCよりも動きがスムーズな気がした

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    何がどれだけバッテリーの電力(残りの航続距離)を消費しているのかを確認できるのが便利。iPhoneでどのアプリがどれだけバッテリーを食っているかを調べられるのと同じような機能だ

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    ナビに目的地を入れれば、どこのスーパーチャージャーでどのくらい充電していけば早いのかを調べてルートを設計してくれる

ハンドルにレバーなし! シフト操作はどうやる?

運転に関わる部分で大きな変更点は、ハンドルの後ろにあったレバーがなくなったこと。ウインカーとワイパーの操作はステアリング内のボタンに集約。もともとモデル3ではシフト操作をハンドル後部のレバーで行っていたが、この機能は中央のディスプレイ内に移動した。つまり、シフト操作は画面で行うことになる。ただし、何らかの理由で画面内でのシフト操作ができなくなることも考えられるので、天井にもタッチでシフトが変えられるボタン(といっても、カチッと押せる物理ボタンではなくタッチパネルのようなもの)が用意されている。

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  • ハンドルの後ろにレバーがない!

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  • シフトはセンターディスプレイで操作。ブレーキを踏むと画面の右端にクルマが出てくる。これをタッチして上にスライドすれば「D」、下にスライドすれば「R」に入る仕組みだ。「P」に入れるには上部のボタンをタッチする。天井にはタッチ式のシフト操作ボタンも

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  • ウインカーもワイパーもステアリングのボタンで操作する

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  • アンビエントライトは新規装備。色はセンターディスプレイ内のカラーパレットで細かく調整可能

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  • 「ドアロックストライカー」なるパーツを新規採用。衝突時、ドアが剥がれ落ちたり、車内に入り込んだりしてしまうのを防ぐパーツだそうだ

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    タイヤはハンコックの最新EV専用タイヤ。静粛性が高いらしい。サスペンション改良で乗り心地はよりソフトになっているとのこと

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    聞かなければ分からないところでは、補機用バッテリー(よく鉛バッテリーと呼ばれるもの)がリチウムイオンバッテリーに変わっている。これで基本的に取り換え、メンテナンスが不要になるそうだ。イーロン・マスク氏いわく、「サービスに行かなくて済むことが一番のサービスだ」

変更点が多すぎて、これだけの情報を得るのに担当者から1時間近く説明を受けることになった今回の新型モデル3。価格はRWDが561.3万円、ロングレンジが651.9万円で従来より40万円くらい値上がりしている。航続距離や新機能を含めた改良の幅と値上がり幅を見比べてみれば、そこまで悪くない感じがするがどうだろうか。新型の生産工場は上海。中国では2023年10月末に納車が始まるそうだ。日本は早くて2023年12月の見込み。

新型モデル3は全国のストアで展示が始まっている。まだまだ変更点があるかもしれないので、気になる人は実車を確認してみていただきたい。