買取業は経営コストが安く済み、一人で運営すれば人件費もかかりません。リスクを抑えながらコンパクトに始められるビジネスとして、参入を考える人もいるでしょう。では、買取業で開業して成功するには、どのようなポイントを押さえておく必要があるのでしょうか。ここでは、買取業の仕組みや買取店を開業するまでの手順をご紹介し、買取業を成功させる秘訣について詳しく解説します。
■買取業はどんな仕組み?
買取業は、品物を買い取った値段よりも高く売ることで利益を出すビジネスです。利益を出すためには、顧客からできるだけ安く買い取りできるだけ高く売る必要がありますが、買取金額を安くし過ぎると品物を売ってもらえませんし、中古品である以上、売値が高すぎると販売がうまくいきません。
買取業では、こうした制約の中で、買取金額と売値を調整して利益を得ていくことが求められます。
また、買取業の業態は大きく3つに分けることができます。1つめは、品物を買い取って店舗在庫とし、それを販売するリサイクルショップ。2つめは、品物を買い取っても店舗在庫とはせず、専門業者などに販売する買取専門店。そして3つめは、インターネット上で買い取りや販売を行う中古品販売です。
いずれの業態も、他のビジネスと比べてかかる経費が少なく、売上が利益に直結しやすいという特徴があります。
ただし、買取業の開業にあたっては、注意しなければならない点もあります。それは、買取業は他のビジネスと違い、開業したらすぐに品物を買い取るための現金が必要になるという点です。
仕入れが必要な他のビジネスでは、多くの場合、後払いである「掛取引」が可能です。つまり、仕入れまたは発注した時点では、代金を支払う必要がないのです。しかし、買取業の場合、開業したらまず顧客からの品物を査定し、現金で買い取りをしなければなりません。
買取業では買い取りが仕入れに、売却が売上に当たりますので、品物を売却してはじめて売上が発生します。お店の利益が確定するまでには一定の時間がかかりますので、開業資金のほかに当面の運転資金も確保しておきましょう。
■買取店を開業するまでの手順
次に、実際に買取店を開業するまでの手順をご紹介します。
1.開業費用を準備する
これから始める買取店のコンセプトを固め事業計画や資金計画を立てたら、その計画に基づき必要資金の調達をスタートします。自己資金だけでまかなえない分は、融資や助成金・補助金などで準備するのが一般的です。
融資は、銀行などからお金を借りて資金を得る方法です。融資を受ける際は、銀行や信用金庫などのほか、日本政策金融公庫が選択肢になるでしょう。政府系金融機関である日本政策金融公庫には新たに事業を始めたい人に向けた融資制度があり、担保や保証人なしでも借りられるケースがあるなど、銀行よりも融資のハードルが低いのが特徴です。
融資を検討する場合は、まず日本政策金融公庫の融資を考えてみましょう。
また、国や自治体が提供する助成金・補助金の併用もおすすめです。助成金と補助金はともに返済義務はありませんが、助成金は一定の要件を満たせばほぼ受給できるのに対し、補助金は予算や定員が設定されていて必ず受給できるものではないという違いがあります。
さらに、助成金や補助金はそれぞれ利用できる条件や支給金額が異なりますので、よく内容を理解してから申請するようにしましょう。
2.店舗やテナントを確保する
次に、買取店をオープンさせるための店舗やテナントを確保します。店舗やテナントを借りる場合は、立地と費用を踏まえ費用対効果の高い場所を選びましょう。
立地は、ターゲットとなる顧客が訪れる可能性の高い場所や、競合他社の少ない場所などを候補に挙げましょう。また、買取専門店、リサイクルショップなど、買取業の種類に合った広さの物件を選ぶことも重要なポイントです。
3.古物免許や開業届などの手続きを行う
買取店を開業するには、古物免許の取得や開業届の提出が必要です。古物免許を取得するには、営業する地域の警察署にて申請を行います。また、個人事業主として開業する場合は、営業する地域の税務署に開業届を提出します。
古物営業法によると、免許を持たずに古物の売買を行うと、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。また、開業届は原則開業から1ヶ月以内に提出することが定められています。
開業後スムーズに事業を進めるためにも、これらの手続きは忘れずに済ませましょう。
4.仕入れルートや販売先を確保する
買取業者として営業するには、仕入れルートや販売先の確保が必要です。買取業は基本的に、買い取りを希望する顧客から品物を買い取りますが、リサイクルショップのように店舗在庫が必要な営業形態の場合、開業前からある程度の商品を揃えておかなければなりません。
そのため、古物市場や古物の卸業者、ネットオークション、メーカーや量販店といった仕入先から商品を仕入れておきます。
一方、買い取った品物の販売先も押さえておく必要があります。特に、フリマアプリやネットオークション、ECサイトなどオンラインの販売先を複数確保しておくと売上が安定するでしょう。
5.宣伝を行い集客する
開店準備が進みいざ開店できる状態になっても、宣伝を行い集客をしておかないことには、買取希望の顧客に足を運んでもらうことは望めません。そこで、開店前からSNSでの告知や看板の設置、チラシの配布などの宣伝をしておきましょう。
特に、インターネットを使ったオンライン上の宣伝は欠かせません。X(旧Twitter)やインスタグラムなどのSNS、ブログやホームページの開設なども進めておくことをおすすめします。
■買取業を成功させる8つの秘訣
せっかく買取業を始めるなら、事業を軌道に乗せ安定的に経営をしていきたいものですね。ここからは、買取業を成功させる8つの秘訣について解説します。
1.接客スキルを磨く
まず、店を訪れた顧客が気持ちよく品物を売ってくれるような接客スキルを磨くことが大切です。顧客が想定していた買取金額と実際の査定額に差が出るケースは少なくありませんが、「大事にしていた品物を買い取ってもらおうとしたら、安く買い叩かれた」と思わせてしまうと、店の評判が落ちる原因になってしまいます。
そのような事態を避けるには、丁寧な言葉遣いで商品の価値を説明し、顧客の疑問点にもきちんと答える姿勢が欠かせません。顧客の気持ちに寄り添うような接客を心がけ、査定結果に納得して品物を売ってもらえれば、店の評判が落ちたりトラブルになったりすることは起りにくいでしょう。
2.目利き力を身に付ける
接客スキルとともに欠かせないのが、品物の価値を正しく見極める「目利き力」です。査定では、品物の適正な買取金額を提示することはもちろんですが、なぜその金額になるのか顧客に説明する力も求められます。
買取金額やその説明に不信感を抱かれると、店の信用を失う原因になりかねません。商品知識を身に付けるとともに、常に市場の動向やトレンドの情報収集を行い、買取相場を把握することが必要です。
3.小規模経営から始める
小規模経営で始めることも、買取業を成功させるポイントの一つです。買取専門店にして在庫を抱えないようにしたり、極力販売しない営業形態にしたりすると、廃業のリスクはかなり抑えることができます。
店舗での販売をしなければ店の規模は小さくて済みますし、オーナー一人で店を回せば人件費もかかりません。買取業は、やり方次第で経費を大幅に小さくすることが可能です。そうしたメリットを生かし、まずはリスクを抑えて小規模経営から始めましょう。
4.販売先を複数確保する
買取業は、たとえ順調に買い取りができても、販売先が確保できていなければ売上を得ることはできません。商品の買い取りと販売のサイクルを早く回すためにも、販売先はいくつか確保しておくことが大切です。
販売先は大きく分けてオフライン、オンラインの2つがありますが、最近ではフリマアプリなどオンラインでの販売が拡大しつつあります。フリマアプリやECモールなどオンラインの販売に力を入れ、複数の販売先を確保しておくと、品物の販売先に困らず売上を増加させることにつながるでしょう。
5.集客に力を入れる
買取店を成功させるには、集客に力を入れることも重要です。オフラインの集客としてはチラシのポスティング、タウン誌への広告掲載などの方法が、オンラインの集客としてはSNSやブログ、ネット広告などの方法があります。
特に、現代においてオンラインでの集客は欠かすことができませんので、オフラインでの集客を行う場合も必ずオンライン集客を併用しましょう。
なお、フランチャイズに加盟して事業を行う場合は、集客に力を入れている本部や知名度が高くブランド力のある本部を選ぶのもポイントです。
6.競合のいない地域で開業する
買取店を開業する場合、周りに競合店のない地域を狙って店を開きましょう。周りに競合店があると、価格競争が起こったり顧客の取り合いになったりして安定経営が難しくなります。
開業前には、競合他社がいないかその地域を必ず調査しましょう。そして、できるだけライバルのいない地域を選ぶようにし、ライバルがいる場合は自社にどのくらいの優位性があるのかしっかり見極めて出店することが大切です。
7.利益率を重視する
買取店では、利益率を重視することも大切なポイントです。ただし、利益率を上げるために安く買い取り高く販売することばかり考えていると、顧客からの評判を落としてしまう恐れがあります。
そこで、一見利益率が悪くなるように感じても、高価買取をして顧客の印象をよくすることが効果的です。「あの店は高価買取をしてくれる」との口コミが広まれば、リピーターが増えたり集客に悩まなくても顧客に足を運んでもらえたりするため、結果的に利益率が高くなることが期待できます。
また、利益率を上げるには、オンライン販売に力を入れることも欠かせません。オンライン販売は、ECモールの販売手数料や送料などがかかりますが、顧客に直接販売できるため利益を出しやすいという利点があります。
高価買取やオンライン販売などの工夫をこらし、利益率を高めていくことを心がけましょう。
8.フランチャイズの場合は慎重に本部を選ぶ
フランチャイズに加盟して買取業を開業する場合は、加盟する本部を慎重に選ぶことが求められます。先ほどもあったように、集客に力を入れている本部、知名度が高くブランド力のある本部を選ぶと事業が成功する確率は高くなるでしょう。また、買取業に初めて参入する場合は特に、研修などサポートが充実していることも重視しましょう。
フランチャイズでの開業は、本部選びが事業の成果に大きな影響を及ぼすことがあります。いくつもの本部をよく比較検討して加盟先を選びましょう。
■事業成功にはさまざまな工夫が求められる
買取業は不況に強く、一人でも始められる小規模ビジネスとして注目を集めています。しかし、ビジネスである以上ただ参入するだけでは成功は難しく、他の事業と同じようにさまざまな工夫を重ねることが求められます。
接客スキルや目利き力を身に付けるほか、特に、フランチャイズに加盟する場合は本部選びが重要です。フランチャイズで開業するなら、まずは本部選びで失敗しないよう充分気を付けましょう。