「相違ございません」はビジネスシーンなどのかしこまった場面で、同意や賛同を表現したいときに使いますが、使い方によっては失礼な表現となってしまう場合もあり、注意が必要です。
本記事では「相違ございません」の意味やシーン別の使い方と例文を紹介。「間違いございません」「相違ありません」との違いや類語、英語もまとめました。
「相違ございません」の意味を解説
「相違ございません」は「相違ない」を丁寧に表現した言葉です。言葉を分解しながら、細かく見ていきましょう。
「相違(そうい)」とは
「相違(そうい)」とは、2つのものの間に差があり、違っていること、という意味の言葉です。
単なる「違い」とは異なり、「相」があることによって「互い」や「相手」などの「比較対象があった上での違い」というニュアンスが強くなります。
「相違ない」「相違ございません」とは
前述の「相違」を否定した「相違ない」「相違がない」は、2つのものを互いに比較した結果、両者の間に違いがない、確かである、という意味の言葉です。
そして「相違ございません」は「相違ない」を丁寧に表現したフレーズです。取引先の相手や上司などの目上の人を相手に、主にビジネスシーンで使われることの多いフレーズです。
ビジネスシーンでの「相違ございません」の使い方と例文
「相違ございません」は主にビジネスシーンなどのかしこまった場面で耳にすることが多い表現です。
「相違ございません」の使い方は主に3パターンあります。具体的にどのような流れで使うのかを理解しておくと、いざというときに自然な形で使えるので覚えておきましょう。
同意・賛同を表現したいときに使う
「相違ございません」は、相手の意見や、相手が提示する内容に対する同意・賛同を表現したいときに使います。
【例文】
・その認識で相違ございません。
・ご認識の通りで、相違ございません。
・契約内容に相違ございません。
相手の意見と自分の意見、相手の提示する内容と自分が認識している内容に、違いがないことが伝わります。特にビジネスシーンにおいて、上司や取引先の意見・書類などに対して使用します。
不明確さを解消したいときに使う
「相違ございません」は、不明確さを解消したいとき、相手に確認を依頼したいときにも使えます。
【例文】
・こちらの書類内容は、原本と相違ございませんか。
・氏名・住所はこちらで相違ございませんか。
・契約書の内容に相違ございませんか。
・ご注文いただいた内容は、こちらで相違ございませんか。
「相違ございません」は「事実、認識と確実に一致している」ということを、互いを確認したいとき、相手に確認してほしいときに使用することができます。
相手からの指摘、不満に対して謝罪するときに使う
「相違ございません」は、相手からのクレームを認め、謝罪するときにも使えます。
【例文】
・ご指摘いただいた内容を確認したところ、事実と相違ございませんでした。大変申し訳ございません。
・お客さまのご指摘と事実に相違ございません。至急、代わりの品をご用意いたします。
相手の指摘に対して、「おっしゃる通りです」といった意味で使える表現です。
この場合「相違ございません」と伝えるだけでは誠意が伝わりません。「大変申し訳ございません」など、反省の気持ちを添えて使うようにします。さらに「早急に対応いたします」など、どう対応していくかも併せて示すようにしましょう。
「間違いございません(間違いありません)」との使い分けに注意
「相違ございません」とよく似た表現で「間違いございません(間違いありません)」があります。これらは近い意味がありますが、全く同じ状況で使えるとは限りません。それぞれニュアンスが異なるため、使い分けに注意が必要です。
「間違い」とは「誤り」「真実と違うこと」「しくじり」などを意味し、「間違いございません(間違いありません)」とは「誤りがない」ということを丁寧に示した言葉です。これを踏まえ、例文を見てみましょう。
「間違いございません」が適しているケース
相手:「総会が開かれるのは、こちらの日時で合っていますか」
自分:「間違いございません」
「日時」という1つのことに対して、2つを比較する必要のある「相違」を使うと、やや違和感があります。
単純にその日時に誤りがあるかどうかを判断すればいいので、この場合は「間違いございません」を使うのがベターです。
「相違ございません」が適しているケース
相手:「次回の打ち合わせは、この日時に設定しましょう」
自分:「相違ございません」
この場合は「相違ございません」がベターです。なぜなら、「この日時に設定したい相手の意見」と「自分の意見」の2つに違いがないと伝えたいからですね。
これから設定する打ち合わせの日時に正解も間違いもないので、相手の提案に対して「間違いございません」だと違和感があります。
「間違いございません」「相違ございません」のどちらも正解のケース
・「報道された内容に、間違いございません」
・「報道された内容に、相違ございません」
この例文では「間違いございません」も「相違ございません」も正解です。
「報道された内容」には、間違った部分はないということで、「間違いございません」と述べることができます。
同時に、「報道された内容」と「事実」の2つを比較した結果、そこに差はないということで、「相違ございません」と述べることもできます。
「相違ございません」の使用時の注意点
「相違ございません」を使うときに気を付けたいことを確認しておきましょう。
「相違ございません」は目上の人相手に使う言葉
ビジネスシーンにおいて「相違ございません」を積極的に使うべき相手は、上司や取引先、株主、顧客などの目上の人が該当します。
社内の先輩や同僚、部下に向けてなど、比較的カジュアルな場面で「相違ございません」を使うと、丁寧すぎるため、距離感があって冷たいと思われる、皮肉にとられてしまうなどの可能性があります。その場合は「相違ありません」「相違ないです」などと伝えるといいでしょう。
状況によっては意味を誤解されてしまうので注意
また、謝罪に使いたいときにも注意が必要です。詳しい説明を省いて「相違ございません」とだけ伝えるのは、誤解を生む原因になりかねません。
以下の例文を見てみましょう。
相手:「この商品の説明書の内容には、不備がありますよね」
自分:「相違ございません」
相手:「相違ないということは、不備がないと主張するんですか? ほら、間違っているでしょう!」
この例文では、相手の指摘に対して「おっしゃる通りで、不備があります」といった反省の内容を伝えたかったのに、言葉足らずなため、反対の意味で捉えられてしまっています。
謝罪で活用する際は、言葉足らずにならないように注意し、「ご指摘いただいた通りで相違ございません。誠に申し訳ございません」などのように述べるようにしましょう。
「相違ございません」は敬語の中の丁寧語
「ございません」は「こざいます」の否定形であり、「ございます」は「ある」の丁寧語です。「ある」の丁寧語には「あります」も存在しますが、それよりも「ございます」の方がさらに丁寧な形です。
「相違ございません」と「相違ありません」の違い
よって、「相違ございません」は「相違ありません」よりも丁寧な形です。
上司や取引先など、かしこまった場面では「相違ありません」よりも「相違ございません」と伝える方がいいでしょう。
「相違ございませんでしょうか」は二重敬語のためNG
なお「相違ございませんでしょうか」はよく耳にする表現ではありますが、これは「ございません」と「でしょう」の二重敬語のため、正しい使い方ではないといわれています。
相手に確認をしたい場合は、「相違ございませんか」を使うのが無難でしょう。
「相違ございません」の類語・言い換え表現
ここでは「相違ございません」と似た表現について、それぞれ詳しく解説します。
その通りでございます
「その通りでございます」は言葉の通り、相手の意見などを認める、同意するといった意味です。「相違ございません」も同意に使うため、似た表現といえます。
ただし、ややカジュアルな印象があるでしょう。
おっしゃる通りでございます
「おっしゃる」は「言う」の尊敬語で、「おっしゃる通りでございます」は「あなたの言う通りです」を丁寧に述べる言葉です。相手の意見などを認める、同意するといった意味です。
相づちのように活用できるため、繰り返し使いがちな表現です。しかし使い過ぎると「よく考えずに回答している」と相手に思われてしまうため、短時間で繰り返し使わないようにしましょう。
なお「おっしゃられる(おっしゃられた)通り」もよく耳にしますが、これだと「おっしゃる」と「られる」の二重敬語になるため、「おっしゃる(おっしゃった)通り」が正しいです。
ごもっともでございます
「ごもっとも」は「もっとも」を丁寧に表現しています。「もっとも」とは相手の意見が理にかなっていることを敬って言う表現です。
相手の意見に共感し、尊重するというニュアンスの表現です。
異存ございません
「異存ございません」は会議などでよく使われます。
「異存(いぞん)」とは、相手と違った意見や反対の意見、不服な気持ちのことを指します。「異議」や「異論」と似た意味です。「異存ございません」とすることで、「あなたと反対の意見はありません」といった意味になります。
なお「異存ございません」は、積極的に賛成するというよりは、「あくまで反対の意見はない」というニュアンスがある表現です。
「相違ございません」の英語表現
「相違ない」を英語で表現するには、以下のような方法があります。
- It is correct.
(相違ございません)
「correct」とは「正しい」という意味です。「正しいです」、つまり「相違ございません」という意味を表します。
もっと硬い表現で伝えたい場合は、以下のような文章を参考にしてください。
- I hereby certify that the contents of the contract are correct.
(契約書の内容に相違がないことをここに証明します)
「I hereby certify that」は「~であることをここに証明します」という意味のフレーズで、文書などで使われるフォーマルな表現です。
「相違ございません」の意味を理解して、適切に使おう!
「相違ございません」は「互いに違いがない」ことを意味します。「間違いございません」と意味が似ていますが、「相違ございません」の方が2つのものを比較しているという意味合いが強くなります。
「相違ございません」は目上の人に使える言葉であるため、それだと丁寧過ぎる場合は「相違ありません」などを使うといいでしょう。なお謝罪で使いたい場合は、言葉足らずになり相手を不快にさせないよう注意しましょう。
適切な言葉遣いは、社会人としての知性や品格を表します。ぜひ適切な場面で、自信を持って「相違ございません」を使いこなしてください。