第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は、準決勝第1局の藤井聡太JT杯覇者-永瀬拓矢九段戦が10月21日(土)に大阪府大阪市の「Asueアリーナ大阪 メインアリーナ」で行われました。対局の結果、角換わりの熱戦を84手で制した藤井JT杯覇者が自身3年連続となる決勝進出を決めました。

五番勝負の余韻

両者による対局はこの10日前に指された王座戦第4局以来となるもの。準決勝の大一番を見届けようと会場には4,000人以上のファンが詰めかけました。恒例となっている卓上盤への揮毫では藤井JT杯覇者が「飛翔」、永瀬九段が「聡鬼」としたためます。

振り駒で先手番を得た永瀬九段は本局では角換わりの積極策を採用。3筋の歩をぶつけたのは右桂を跳ね出して速攻を仕掛ける意図ですが、ここは後手の藤井JT杯覇者がひと足先に右桂を活用します。9筋の端歩突きを省略したのが藤井JT杯覇者の工夫でした。

永瀬九段の受け切りなるか

首尾よく主導権を得た藤井JT杯覇者は怒涛の攻めを開始。スパッと飛車を切ってから先手陣に桂を成り捨てたのが直後の王手金取りを見越した一連の狙いで、瞬間的に大きな駒損ながら攻めが続くと見ています。ここで解説の谷川浩司十七世名人の指示で次の手は封じ手に。

永瀬九段の記した封じ手が開かれて対局が再開されます。示された飛車打ちの合駒は金にヒモをつけつつ後手からの攻めを受け止める方針ですが、一手30秒の早指しではさすがの受けの達人・永瀬九段をもってしても局面の均衡を保つのは困難でした。

藤井JT杯覇者が攻め切って快勝

先手陣内での攻防は続きますが、やがて藤井JT杯覇者の打ち込んだ飛車が王手金銀取りの厳しい王手。駒損を回復した藤井JT杯覇者はすぐさま寄せに向かいました。終局時刻は17時21分(対局開始16時17分)、最後は自玉の受けなしを認めた永瀬九段が投了。

勝った藤井JT杯覇者は本棋戦3年連続3回目となる決勝進出。決勝戦は11月19日(日)に東京都江東区の「東京ビッグサイト 東展示棟」で行われます。

  • 決勝の相手は11月3日(金・祝)に行われる準決勝第2局・渡辺明九段―糸谷哲郎八段戦で決まる(写真は第36期竜王戦七番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    決勝の相手は11月3日(金・祝)に行われる準決勝第2局・渡辺明九段―糸谷哲郎八段戦で決まる(写真は第36期竜王戦七番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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