第82期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)B級1組は7回戦全6局の一斉対局が10月19日(木)に東西の将棋会館で行われました。このうち関西将棋会館で行われた羽生善治九段-山崎隆之八段戦は135手で山崎八段が勝利。4勝3敗として昇級戦線に踏みとどまりました。敗れた羽生九段も4勝3敗となっています。
27度目の対戦
6回戦を終えた段階で単独首位に立つのが5勝1敗の増田康宏七段。4勝2敗で続くのが羽生九段をはじめとする3名で、山崎八段は3勝3敗と指し分けながら13人中暫定9位の位置取り。混戦のB級1組、どちらにとっても負けられない戦いです。
27回目となる両者の対戦(羽生九段の20勝6敗)は山崎八段の先手番で相掛かりの戦型に。右銀を4筋に上がって持久戦を志向した山崎八段に対して羽生九段はするすると右銀を繰り出します。鎖鎌銀と呼ばれるこの作戦に対し山崎八段がアイデアを見せました。
山崎ワールド全開!
飛車先の歩を交換した山崎八段はこちらも右銀を繰り出す「相鎖鎌銀」の趣向を披露。本格的な戦いを前に盤上は早くも定跡を外れました。ともにカニ囲いの守備陣ながら、駆け引きのなかで先手だけ左桂を跳ねさせられている点が気になります。
羽生九段が角道を閉じて守勢に回ったのを受けて山崎八段は軽快な攻めでポイントを稼ぎます。5筋に転回していた右銀を戦いの中で3筋に戻したのは後手の香が狙い目と見た好着想。駒損を最小限に食い止めるために後手も左桂を跳ねざるを得ません。
明暗分かれた角の働き
右辺で戦果を挙げた山崎八段は手にした香を左辺に打ってリードを拡大。桂頭攻めを起点に銀を入手しながら敵陣への侵入に成功しました。こうなると先手の左桂はあえて取らせた格好で、手順に角の活用が見込めるのが好都合です。
山崎八段は8筋で手にした飛車を打ち込んで最後の寄せに出ます。終局時刻は21時52分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた羽生九段が投了。投了図では両者の角の働きの明暗がくっきりしています。
これで勝った山崎八段、敗れた羽生九段ともに4勝3敗に。上位陣では増田七段が勝って6勝1敗と首位をキープしています。11月9日(木)に行われる8回戦で山崎八段は抜け番、羽生九段は近藤誠也七段と対戦します。
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水留 啓(将棋情報局)