第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は4回戦の中村太地八段―佐々木勇気八段戦が10月19日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わりの熱戦を109手で制した中村八段が星を2勝2敗の五分に戻しました。敗れた佐々木八段も2勝2敗となっています。
秋の正念場
本局はA級4回戦で残されていた最後の一局。4戦全勝の豊島将之九段を除けば今期は全勝者と全敗者のいない混戦の状況で、ここまで1勝2敗の中村八段、2勝1敗の佐々木八段ともに負けられない戦いが続きます。
本局は先手番に決まっていた中村八段の誘導で角換わり相早繰り銀の戦型へ。仕掛け周辺は今年3月に藤井聡太王将と羽生善治九段の間で指されたタイトル戦に前例のある変化ということもあり、ともに比較的早いペースで指し手を進めます。
中村八段の研究
手番を握って攻め続ける中村八段が用意の一手を披露します。6筋に回った飛車を生かすべく右銀を中央に引き付けたのがそれ。後手の右銀を支える根元の歩をかすめ取ることで左辺から攻め込む狙いが見て取れます。
守りの時間が続く後手の佐々木八段は自陣に馬を引き付け徹底抗戦。手数を稼ぎながら自陣壁銀の愚形を解消するのが優先と見た大局観ですが、ここから中村八段の猛攻を受けることに。角を打ち込んで間接王手飛車をかけたのがその手始めです。
中村八段が攻め切って2勝目
どちらも居玉のまま局面は終盤戦へ。金打ちで飛車取りをかけられた中村八段ですが、これを手抜いて敵陣に桂を成り捨てたのが勝着となりました。これによって手順に後手の金を外しながら先手先手で攻めが続きます。
終局時刻は翌20日0時12分、最後は後手玉を一手一手の寄りに追い込んだ中村八段が快勝で2勝目を挙げました。敗れた佐々木八段とともに成績は2勝2敗に。次局5回戦で中村八段は稲葉陽八段と、佐々木八段は菅井竜也八段と顔を合わせます。
水留 啓(将棋情報局)
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