Xiaomi(シャオミ)の新型スマートフォン「Redmi 12 5G」が登場しました。10月6日に発売されたau/UQ mobile版のほか、10月19日にはオープンマーケット版(SIMフリー版)も発売され、価格も29,800円と手に取りやすい機種です。
今回はオープンマーケット版の実機をお借りしてレビューをお届けします。結論から言えば、価格的にはエントリークラスに属しながら+1~2万円ぐらいのミドルレンジモデル顔負けの充実した機能を備えるお買い得なスマートフォンです。
値上がり傾向のなか、「いま3万円で買えるスマホ」としてはハイレベル
Xiaomiはハードウェア製品の利益率を5%以下に抑えるというポリシーを掲げており、コストパフォーマンスの高い製品が多いことで知られているメーカーです。その中でも、ローエンドからミドルレンジにかけての価格帯で展開されているRedmiシリーズは安さで注目されることが多い製品群です。
かつてはハイエンド志向の強かった日本市場でも、近年は諸々の事情がかみ合って売れ筋の価格帯が下がってきています。ただ、数年前にはミドルレンジスマートフォンのボリュームゾーンは3万円台だったのですが、原価の高騰や円安の進行でモデルチェンジするごとに価格が上がっている機種も多く、「3万円ぐらいで安くてもちゃんとしたスマホが欲しい」という買い手の考えと実際のミドルレンジモデルの価格帯がややすれ違いつつあるのが現状です。いくつかの人気シリーズの価格推移を踏まえた感覚で言えば、2020年頃に3万円台半ばで買えたクラスの機種は今だと4万円台半ばでないと買えないでしょう。
そうなってくるとやはり、スマートフォン以外も何かと物価高のご時世ですから、購入予算を上げるよりも「じゃあ今3万円だとどんな機種が買えるの?」という方に考えが向くのが人情でしょう。その答えのひとつがまさにこのRedmi 12 5Gなのですが、製品ポートフォリオ的にはローエンド/エントリーに近い位置付けではあるものの、よくよく見ると性能的にも機能的にも充実しており、他社の4万円クラスのミドルレンジと比べて選んでも見劣りしない、妥協感の少ないものに仕上がっています。
まず外観から見ていくと、余分な装飾がなくフラットな形状の至ってシンプルなフォルムをしています。グローバルで展開される製品なので日本市場を第一に考えたデザインというわけではないと思いますが、他社の日本市場専売モデルで入念な市場調査を経てよく似たデザインに落ち着いた事例を思うと、偶然だとしても日本の消費者からのウケは良さそうな印象です。
本体カラーはスカイブルー、ポーラーシルバー、ミッドナイトブラックの3色展開で、今回お借りした試用機はポーラーシルバー。光の当たり方によってほんのりとオーロラ系の変化もするおしゃれなカラーでした。サイドフレームこそ樹脂製ですが、バックパネルは樹脂ではなくガラスを使っているのも、手に取るとわかる“高見え”ポイントです。
Redmi 12 5Gの主な仕様
- OS:Android 13(MIUI 14)
- SoC:Qualcomm Snapdragon 4 Gen 2
- メモリ(RAM):4GB(LPDDR4X)
- 内部ストレージ(ROM):128GB(UFS 2.2)
- 外部ストレージ:microSDXC対応(最大1TB)
- ディスプレイ:6.8インチ 2,460×1,080(フルHD+)90Hz液晶
- アウトカメラ:約5,000万画素 F1.8+約200万画素 F2.4(深度)
- インカメラ:約500万画素 F2.2
- 対応バンド(5G):n3/n28/n41/n77/n78
- 対応バンド(4G):1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/26/28/38/39/40/41/42
- SIM:nanoSIM+eSIM
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
- Bluetooth:5.0
- バッテリー:5,000mAh
- 外部端子:USB Type-C、イヤホンジャック
- 防水/防塵:IPX3/IP5X
- 生体認証:指紋認証、顔認証
- その他の機能:NFC、FeliCa(おサイフケータイ)対応
- サイズ:約169×76×8.2mm
- 重量:約200g
- カラー:スカイブルー、ポーラーシルバー、ミッドナイトブラック
Snapdragon 4 Gen 2搭載で性能アップ
Redmi 12 5Gはクアルコムの「Snapdragon 4 Gen 2」というSoCを搭載しています。8シリーズがハイエンド、7シリーズがミドルハイ、6シリーズがミドルレンジ、4シリーズがローエンド……という序列からすれば非力なチップに思えるかもしれませんが、実は捨て置けない性能を秘めたSoCで、物によってはここ1~2年の間に発売された6シリーズ搭載機にも負けないほどです。
というのも、半導体不足の影響がスマートフォン向けSoCの世界では特にミドルレンジで深刻だったため、2023年上半期に登場した機種でも2022年モデルと同じSnapdragon 695を継続採用したメーカーが多く、ミドルレンジに限っていえばここ1年ほど性能の進化がほとんどなかったという事情があります。Snapdragon 4 Gen 2はローエンドとはいえ4nmプロセスに移行した最新チップで、日本市場ではRedmi 12 5Gが最初の採用機種となります。ざっくり言えば「ちょっと古いミドルSoC」と「最新のローエンドSoC」の性能差はそう大きくないというわけです。
Geekbench 6のCPUベンチマークスコアで比較すると、Redmi 12 5G(Snapdragon 4 Gen 2)はシングルコア896点/マルチコア2064点。過去に執筆したレビュー記事からSnapdragon 695搭載機のベンチマークスコアを引っ張り出してみるとarrows N F-51Cがシングルコア899点/マルチコア2083点ということでほぼ互角です。
ただ、GPU性能はSnapdragon 4 Gen 2のほうが低いので用途によっては不足を感じる場面もあるでしょう。ただ、そもそもGPU性能を求めるようなゲームなどの用途にはいずれにせよ適さないクラスであり、普段使いの快適性ならやはりSnapdragon 695を搭載するミドルレンジスマートフォンと互角と言って良いと思います。
別の比較軸で話せば、最近のAndroidスマートフォンのSoCはかつてほどSnapdragon一強の状況ではなく、日本市場でも低価格帯を中心にMediaTekのDimensityシリーズなどを採用する機種が増えてきています。CPUなどはどちらもArmのIPデザインを使っているので同クラス同士の比較ではそう大きな差はつかないのですが、通信安定性などの形で意外と実用上の小さなストレスとして体感できるモデム性能の部分ではやはりクアルコムに一日の長があります。「安くても最新のクアルコム製チップを積んでいる」というのはひとつ安心して選べるポイントでしょう。
このほか、さすがに有機ELではありませんがフルHD+解像度で90Hz対応と廉価モデルとしては良い液晶ディスプレイを採用していること、5GやeSIMにも対応しており今後数年使っていくうえで最低限の将来性があることも性能面で評価できるところです。
また、他社で増えているような年数・回数を明示したアップデート保証はありませんが、過去に日本市場に投入した機種の実績からすれば、Xiaomiは回数・期間を明言していないだけで性能的に可能な限りは比較的真摯にアップデートを続けているメーカーといえます。
たとえば2021年に発売された「Redmi 9T」の場合でも、当時2万円を切るエントリーモデルでありながら、Android 10→11→12と2段階のOSバージョンアップを受けていますし、その後もAndroidのメジャーアップデートこそなくとも独自UIの部分は「MIUI 14」(出荷時にAndroid 13を搭載した世代の機種と同等)に更新されています。
「ふつうのスマホ」に求める要素は大体そろっている
コモディティ化したスマートフォンにおいて、特定の機種を選ばないとできないこと(なおかつどうしても欲しいと思われる機能)は減っていて、特に価格と内容を天秤にかけてシビアに判断されるローエンド~ミドルレンジの機種ではどうしても「あれがない」「これがない」といった減点方式の評価で選ばれがちです。
当然安い機種ほど優先度の低い要素が削られていき、各人の「ここは譲れない」という要素と照らし合わせて選ばれるはずですが、Redmi 12 5Gに関しては3万円を切る安価な機種でありながら「ふつうのスマホ」に求められるようなことは大体そろっているな、というのが率直な感想。
ここまで述べてきたように、シンプルで安っぽくないデザインと十分な基本性能がありますし、エントリーモデルで抑えられがちな画面解像度もしっかりとフルHD+で、5GやeSIMも使えます。FeliCa・おサイフケータイ対応のローカライズも抜かりなく、IP53相当と保護等級は低めではあるものの、雨に降られるぐらいなら問題ない防水性能を確保しています。
カメラの写りは価格相応のレベルに留まること、独自UI(MIUI)のクセがあるので他メーカーのAndroidスマートフォンからの買い替えには少し慣れが必要なことは弱点として挙げられますが、トータルで見れば非常によくまとまったエントリーモデルです。いま3万円ぐらいで過不足なく使えるスマートフォンをお探しなら手堅い選択肢のひとつでしょう。
ここまでお伝えしてきた29,800円という価格はあくまで各種割引前のもので、実際にはもっと安く買える場合が多いはずです。家電量販店ではすでにUQ mobile版を新規/MNP限定で2万円ほど割引して販売している店舗も見かけましたし、SIMフリー版もAmazonでは表示価格27,800円からクーポン適用で2,000円引き(10月19日時点)となっているほか、MVNOの回線セットでの購入なら、IIJmioでMNP一括9,980円のキャンペーンが実施されています。こういった事情を踏まえると、なおさらお買い得な機種といえます。