サウンドファンは10月19日、音が聞こえにくい高齢者・難聴者向けのスピーカー「ミライスピーカー」の新製品として、ステレオアンプを内蔵した「ミライスピーカー・ステレオ」を発表しました。10月20日に直販サイトや量販店などを通じて発売し、価格は39,600円です。
映画やドラマの背景音が聞きやすくなった
サウンドファンが2020年5月に発売した「ミライスピーカー・ホーム」は、湾曲させた平板を振動板に採用した有線スピーカー。湾曲させた振動版から出た音は、コーン型スピーカーと比べ広い指向性を持ち、距離による減衰も少ないことが特徴です。これを活かした特許技術「曲面サウンド」により、接続したデバイスから出る音声を明瞭にし、音が聞こえにくい高齢者向けに「聞こえやすい音」を出せるスピーカーとして、高齢者を中心にシリーズ累計20万台を販売しています。
ミライスピーカー・ホームはモノラルでしたが、今回ステレオ対応のミライスピーカー・ステレオが登場しました。ステレオアンプを内蔵し、ドラマや映画など、音声以外の背景音を迫力ある音で楽しめるといいます。
基本的な構造はミライスピーカー・ホームと同じで、波のような曲線で構成された本体には、曲げた振動板が横になって左右に内蔵されています。
音量を上げなくとも人の声が聞きやすい、という特徴はそのままに、左右の振動板から同時に音が出るため指向性が広く部屋全体に音が広がること、振動板とドライブユニットのハイブリッド構造で位相ずれや遅れが少ないこと、リモコンが付属すること、光端子が追加されたことなどが、ミライスピーカー・ホームからの進化点となります。
米国を皮切りに海外展開も、11月から
ミライスピーカーのステレオ化は、ミライスピーカー・ホームのユーザーだけでなく、購入を検討している人からも要望が多く上がっていたといいます。同社はこのミライスピーカー・ステレオから海外展開を本格化する考えです。まずは2023年11月に米国で発売したのち、半年~1年後をめどに、中国やヨーロッパなど、その他の地域にも展開したいといいます。
周波数特性は150Hz~20kHz(総合特性・参考値)、アンプ出力は最大15W×2。入力は3.5mmステレオミニジャックに加え、新たに光デジタルが加わりました。
本体のサイズはW542×H87×D160mm、重さは約1.7kg。接続しやすいシンプルなインタフェースも健在で、つなぐケーブルは電源と光端子または3.5mmイヤホンミニジャックのみ。高齢の方がひとりでもセッティングできるよう配慮しました。
同梱品はACアダプターや光デジタルケーブル、音声ケーブル、電源アダプターのほか、遠くからでも本体を操作したいという声に応え、新たにリモコンが付属しています。
試作80回、実際に音を聞いてもらいながら調整
「ミライスピーカーがステレオだったらもっといいのに」という声を受けて生まれたミライスピーカー・ステレオ。その開発には約3年を費やしたといいます。
曲面振動板で明瞭な音を広く届けるという基本構造はミライスピーカー・ホームと同じで、本体には曲面振動板を左右に2つ内蔵した形をしています。ハードウェアの開発自体に難所は少なかったものの、実際に高齢の方や難聴の方に音を聞いてもらい、調整する部分が大変だったそう。振動板の曲率もミライスピーカー・ホームとは微妙に異なるものになりました。
デザイナーの要望で、これまでは白だった振動版に黒いコーティングを施し、完全にブラック基調のデザインになりました。
素材を変えると発する音の特性が変わってしまうため、ミライスピーカー・ホームと同じ素材(発泡樹脂)は変えず、上から黒くコーティングし、1,000時間の連続動作による聞こえ方の検証を経て、音の特性を保ったまま黒くすることに成功。サウンドファン取締役 研究開発生産本部 本部長の田中宏氏は「80回以上の試作を繰り返し、試行錯誤を重ねたが、納得のいくものができた」と自信を見せます。
言葉だけをはっきり聞きたい人はモノラルアンプ内蔵のミライスピーカー・ホーム、ドラマや映画などを視聴したい人、通常のテレビの音だけでは物足りない人にはミライスピーカー・ステレオがお勧めだといいます。
サウンドファン代表取締役社長/CEOの山地浩氏は今後のミライスピーカーの展開として、上で紹介した海外展開のほか、国内では学校や電車・バスなど公共の場での活用を目指しています。他社製品へのビルトインなども含め、「身の回りのすべてのスピーカーにミライスピーカーの技術を入れられないか」を模索。他企業とのコラボレーションも進めているとしました。