藤井聡太竜王に伊藤匠七段が挑戦する第36期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は、第2局が10月17日(火)・18日(水)に京都府京都市の「総本山仁和寺」で行われました。対局の結果、角換わりの熱戦を107手で制した藤井竜王が開幕2連勝を飾りました。

宸殿での対局

この一週前に永瀬拓矢九段との王座戦五番勝負を制した藤井竜王は八冠獲得後初となる公式戦。会場の総本山仁和寺ではこの対局に向け、記念御朱印帳の開発や対局場を照らす特別照明の準備などが進められてきました。

藤井竜王の先勝で迎えた本局は角換わり腰掛け銀の戦型に。やがて4筋の歩を突いて戦端を開いた先手の藤井竜王は4手連続で歩を突き捨てて戦線を拡大します。「先手の攻め、後手の受け」という構図がはっきりしてきました。

攻め続ける竜王

部分的に定跡化された応酬が続きます。とはいえ先手陣は5八金・2八飛型と称される旧型の布陣であり、使われる手筋もここ数年では見る機会の減っているもの。98分と本局最大の長考に沈んだ藤井竜王は後手陣に角を打ち込んで攻めを続けました。

後手の伊藤七段が記した封じ手が立会人の谷川浩司十七世名人によって開封されて2日目の戦いが始まります。封じ手直後に指された自陣への歩打ちは勝つことよりも負けないことを優先した辛抱の一手で、伊藤七段やや苦戦の感は否めません。

藤井竜王が攻め切って快勝

先手番の利をうまく具体化した藤井竜王はここから一気の攻めで伊藤七段を突き離します。手にした金をベタっと敵陣一段目に打った王手が「寄せは俗手で」の好手。飛車を手にすれば後手玉はひとたまりもないのを見越しています。

反撃を目指したい伊藤七段も角捨ての鬼手で藤井玉に肉薄しますが、十分な持ち時間を残す藤井竜王に抜かりはありませんでした。終局時刻は18時37分、自玉の寄り筋を認めた伊藤七段が投了を告げて藤井竜王の開幕2連勝が決まりました。

藤井竜王の勝利を受けてSNS上には「お強い…」「藤井八冠が桁違いだった」などと感嘆の言葉が並びました。伊藤七段の先手番で迎える第3局は10月25日(水)・26日(木)に福岡県北九州市の「旧安川邸」で行われます。

  • 同世代対決となった本シリーズ、ここまでは藤井竜王が本領発揮で隙のない戦いぶりを見せている(提供:日本将棋連盟)

    同世代対決となった本シリーズ、ここまでは藤井竜王が本領発揮で隙のない戦いぶりを見せている(提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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