中国Huawei(ファーウェイ)は、インフラ制御システムのほか、IoT製品にも力を入れています。中国国内ではスマートフォンも販売していますが、グローバル的には米国の経済制裁によってスマートフォン事業の縮小が余儀なくされ、日本国内ではウェアラブルやIoT製品が中心の製品展開となっています。

こうした製品で同社は、家庭やオフィスの家電・事務機器と連携することで、自動化や効率化などを提供しようとしています。そのためには各社製品、サービスとの連携を検証する必要があります。

それを進めるのが、中国の関連企業・団体が連携して設立した研究施設「方舟1号」です。今回ファーウェイが開催したメディアツアーで、方舟1号のスマートホーム施設を見てきました。

  • 方舟1号が入居している深センの高層ビル。Longgang Cloud Center(竜崗雲中心)という看板が掲げられていました

  • 方舟1号が入居しているのは44階。深センの街を見下ろしました

HarmonyOSとつながる多彩な製品で家がスマート化

方舟1号は、中国の政府系団体と民間企業が連携して設立したオープンラボで、複数の企業がスマートホームなどのIoT製品の接続性などを研究するための施設とされています。深センの高層ビル内にあり、8,600平方mに渡ってデモエリアが構築されていました。

  • 方舟1号に参加している団体や企業。政府系の名前の直後にファーウェイがあるあたり、中心的な役割を担っているのでしょう

それぞれ、別荘やオフィス、書斎、寝室など、テーマごとにデモエリアがあって、今回は公開されませんでしたが開発センターも設けられているそうです。不動産事業者、ホテル事業者、デザイナーといったさまざまな領域の事業者とも連携。特にデザイナーは住宅、空間、照明、音楽といった分野のデザイナー44人が常駐しているそうです。

こうしたスマートホームの取り組みはこれまで3段階に分けられているといいます。まず第1段階の「空間1.0」の時代が1980年代以降で、室内には機能性、実用性が求められていました。2000年代に入り、「空間2.0」の時代には「美学」が求められ、風格や感性といった点が重視されたそうです。

  • 中国のスマートホームの動向は3つの段階があったようです

そして2020年代以降の「空間3.0」の時代になってスマート化が重視されるようになりました。デバイス間でのインタラクションが重要となり、ファーウェイは「シンプル」と「マジック」という2つのコンセプトで開発を継続してきたといいます。

ポイントは5つ。1つ目が「高信頼性」でネットワークの安全性や安定性。2点目が「高いコントロール性」で、1つのスマートパネルでさまざまな機器をコントロールできます。「高い知能」では、音声でコントロールでき、AIによる制御も搭載します。他にも感性に訴える、ユーザーに寄り添うといったポイントを踏まえて開発しているそうです。

  • スマートホームにおける5つのコンセプト。5つの「高」をテーマにしているといいます

こうしたコンセプトを実現できるような製品開発や、ほかの企業と組んでのソリューション開発を行っているとのことで、ファーウェイは「1+2+N」というソリューションを提供しています。

これはホームネットワークを集約した1つのスマートホーム製品が中心となり、接続した機器をコントロールするディスプレイとアプリという2つの製品を経由して、複数のスマートホーム製品を管理する、というソリューションです。これによってファーウェイはスマートホームの中心という位置づけを狙っているというわけです。

方舟1号の成果は、ファーウェイの旗艦店でも展示されています。一部重複する製品もありますが、さらに多くの組み合わせが紹介されました。ここでは、写真を中心に「中国最新のスマートホームソリューション」をご紹介します。

  • ホームユニットが最大384台のデバイスの接続などを集中管理。家庭内のネットワークはPLCやWi-Fi 6+などを活用。家庭内ではユニットに接続されたデバイスをコントロールするディスプレイ製品またはスマホアプリで制御。それぞれの役割を担うIoT製品などが接続される、というのが1+2+Nという戦略です

  • 入口はスマートロックを内蔵したドアノブ。指紋センサーやカメラを使った顔認証、番号入力、スマホのタッチなどでの解錠が可能。ちなみにロックのバッテリーが切れても、モバイルバッテリーで充電して解錠できるそうです

  • 家庭内のデバイス、ネットワークを集約する壁埋め込み型のユニット。ルーターも内部に配置しています。PLCも活用。「ワイヤレス通信だけでネットワークが切れてしまうと、夜に電気すら消せなくなってしまいますので、ワイヤードのソリューションも必要です」と担当者はコメント

  • 「別荘」をモチーフにしたという室内。照明、テレビ、スピーカー、エアコンなど、さまざまな電化製品やIoT機器がネットワークに接続されています。ちなみに左に見える一人用ソファーはマッサージチェアでした

  • スマートホームをコントロールするディスプレイ。これはタブレットになっています。「リモコンは一切ありません」と担当者。すべてこのタブレットで操作できるといいます

  • 充電台とはマグネットで接続。Pixel Tabletと似たような仕組みになっているようでした

  • さまざまな機器と連携できます。これはスマートホームカメラとの連携。「在宅」ボタンを押すとキッチンのカメラッガオフになり、「外出」ですべてのカメラがオンになる、といった具合に設定できるそうです。セキュリティシステムとも連携します

  • 家庭の電力消費量も計測可能。他にも各部屋のネットワーク状況、水回りの水の品質、消火器の交換時期、バッテリーの交換時期といった状況が把握できるようになっています

  • 各部屋の照明コントロールなどの操作が可能。ひとつずつ切り替えるだけでなく、パターンを設定して一度に部屋全体の照明を制御することも可能。家に帰ったとき、食事の時、映画を観るとき、夜、トイレに起きたとき、などのパターンで制御できるそうです

  • これは「ミニ」という補助デバイス。これはデバイスで設定したパターンをあらかじめ登録しておくと、1クリックでそのシーンを実行できるというもの

  • 登録方法も面白く、タブレット側で登録したいパターンを準備して書き込み設定をします

  • 表示された場所にミニを置けば、その設定が書き込まれるという仕組み。1タッチで睡眠モードに入って照明やエアコンの温度設定などを一括設定したり、子供が集中できる勉強モードを競ってしたり、といった使い方が紹介されていました

  • 音声でのコントロールも可能です。テレビを付けたり、カーテンを開けたり、照明のコントロールや音楽の再生なども可能

  • 壁にディスプレイを設置して操作するようにすることもできます。温度などのセンサーパネルもあります

  • ダイニングはセンサーがあるので、人が来るだけで照明が点灯。通常の食事モードの照明だけでなく、記念日には照明と音楽を変える、といった使い方もできるそうです

  • キッチンは、ファーウェイではなく連携する他社製品が多数用意されていました。冷蔵庫から換気扇、シンクが現れるキッチンテーブルなど、中国ではさまざまな連携製品が登場しているようです

普段は普通のテーブルとして使えますが、スイッチを入れると天板が動き、中からシンクや水道の蛇口などが出てきます

  • ファーウェイのスマホやIoT製品などはHarmonyOSを搭載しており、これに連携するパートナー各社の製品には認証ロゴが付与されています。ガス漏れセンサー、煙センサーなども連携することが可能だといいます。これはWi-Fiに接続できる換気扇

  • その隣には洗濯機も。物干しも上下に移動して干しやすくなるなど、機械製品だけ出ないところもポイントでしょうか

  • 風呂場の例。湯船自体にコントロールを装備。水量と水温を設定しておけば、水が溢れることはなく、自動でお湯張りもしてくれるそうです。除湿モードに切り替えれて風呂場の換気・乾燥も可能

  • 化粧台の鏡にはリングライトを埋め込んでいるので、化粧をするのも向いてそうです。下部のタッチボタンで湯気による曇りを取ることもできます。「マジックミラー」と呼んでいるそうで、当日のスケジュールや天気予報などの情報をも表示可能。化粧品を保管する小さな冷蔵庫もついているという多機能ぶりです

  • こちらは子供部屋。就寝時はプラネタリウムのような照明も表示できます

  • 枕元にはスマートスピーカーがあり、本を音声で読んでくれます

  • 勉強机。照明も勉強モードなどが設定できるそう。勉強モードでは、デスクの周囲1mぐらいをモニタリングして、本当に勉強しているかどうかなどを保護者が把握することができるそうです(が、自分が子どもだったらちょっとイヤですね)……

  • 限られた範囲で検知を行うセンサーは天井に設置されています

  • こちらはホテルの部屋の例

  • 天井に同じくセンサーが設置されており、このデスクに腰掛けたら照明がオンになったり照明の色を変えたりするなどして仕事モードにする、といった設定ができるそうです

  • ちなみに、賃貸マンションなどでコントロールユニットが設置できない場合は、ルーターやタブレットを設置することで同様のことができます

  • こうしたホームコントロールの機器を設置した家の模型。リビングからダイニング、キッチン、寝室、風呂場、仕事部屋など、室内をトータルでカバーできるぐらい、パートナーも増えているといいます。深センでは不動産価格もかなり上がっていて、付加価値としてこうしたスマートホームを導入した不動産も増えているそうです

  • 電力監視システムもあり、蓄電池に電気を貯めて停電時はロボット掃除機への電力供給を止めて冷蔵庫に振り分ける、といったこともしてくれるそうです

  • 水質の監視機能もあり、フィルターの状態、利用した水の量、ガスの使用量も監視できます

  • エアコンも集中制御。このように、単にIoT機器を制御するだけでなく、家をトータルで管理・制御できるようになっていました