日本エイサーから、モバイルノートPC「Swift Edge 16」最新モデルが登場した。ディスプレイに16型有機ELを採用する点は従来同様だが、最新モデルではプロセッサにAIエンジン「Ryzen AI」内蔵のAMD Ryzen 7040シリーズを採用し性能を強化している。
今回紹介する試用機はAMDから借り受けたもので、グローバル向けとして英語キーボードを搭載したモデルになっている。日本国内向けには日本語キーボードを搭載して発売を予定しているが、発売時期と価格は現時点では未定だ。
非常に薄く軽いボディで16型ながら楽々持ち運べる
Swift Edge 16は、16型ディスプレイを搭載しつつも、モバイルノートPCとして位置付けられている。モバイルノートPCの主流は13~14型クラスであり、16型となるとかなり大きく持ち運びが厳しいと感じるかもしれないが、Swift Edge 16はそれを覆すコンパクトなボディを実現している。
サイズはフットプリントこそW357.55×D245.9mmと、数字だけ見るとそれなりに大きい印象。ただ、実際に本体を見ると、思ったほど大きく感じない。
その理由のひとつは、ディスプレイが4辺狭額ベゼル仕様とすることで、16型ディスプレイを搭載しつつもフットプリントを最小限に抑えている点。印象としては15型ノートPCよりも小さいと感じるほどだ。
もうひとつ大きな理由がそのボディの薄さで、12.95mmと13mmを切る薄さを実現している。13~14型クラスのモバイルノートPCと比べてもその薄さは際立っており、それが見た目にコンパクトと感じさせる要因となっている。
そして、気になる重量は1.23kg、実測でも1,227.5gと16型ノートPCとは思えない軽さを実現。実際に手に持ってみると、サイズが16型と大きいだけにかなり軽く感じる。ボディ素材にマグネシウムアルミニウム合金を採用することで軽さを実現するとともに、モバイルノートPCとして必要となる堅牢性も確保。ボディをやや強い力でひねってみたり天板を押してみても、十分な強度が手に伝わってくる。
このように、16型ノートPCとしてトップクラスのコンパクトさと薄さに、申し分ない軽さを実現しつつ、モバイルノートPCとして十分な堅牢性を備えており、軽快かつ安心して持ち運べると感じる。
デザインは、比較的シンプルだ。フラットな天板と直線的にスパッと切り落とされた側面で、ディスプレイを閉じた状態では一枚板に近い見た目を実現。カラーはメタリック調のブラックで、こちらも非常にシンプル。これならビジネスシーンで利用する場合でも全く違和感なく利用できるはずだ。
AIエンジン内蔵プロセッサRyzen 7 7840Uを搭載
Swift Edgeシリーズでは、従来よりプロセッサとしてAMDのRyzenシリーズを採用しているが、今回試用したSwift Edge 16最新モデルでは、Ryzenシリーズ最新モデル「Ryzen 7 7840U」を採用している。
表1 | Swift Edge 16 SFE16-43(試用機)の主なスペック |
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プロセッサ | Ryzen 7 7840U(8コア16スレッド/ブースト時5.10GHz) |
内蔵GPU | Radeon 780M |
メモリ | LPDDR5 16GB |
ストレージ | 512GB PCIe SSD |
OS | Windows 11 Home 64bit |
ディスプレイ | 16型有機EL 3,200×2,000ドット、リフレッシュレート最大120Hz |
無線機能 | Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.1 |
生体認証 | 指紋認証センサー |
インターフェイス | USB4 Type-C×2、USB 3.1 Gen1 Type-A×2、HDMI、microSDカードスロット、3.5mmオーディオジャック |
サイズ/重量 | W357.6×D245.9×H12.95mm / 1.23kg |
Ryzen 7 7840Uは、CPUコアに最新のZen 4マイクロアーキテクチャを採用するとともに、内蔵グラフィックス機能のRadeon 780Mも最新のRDNA 3を採用。これにより、Ryzen 6000シリーズ搭載の従来モデルと比べてCPU処理能力、グラフィックス描画能力ともに向上。
さらにRyzen 7 7840Uには、AIエンジンの「Ryzen AI」も内蔵。これによって、AI処理能力も高められている。実際にSwift Edge 16では、Ryzen AIを活用するカメラ関連機能が利用可能となっている。
用意されているのは、「アイコンタクト」「自動フレーミング」「背景ぼかし」の3種類の機能。アイコンタクトは、Web会議などで常に目が相手を見ているように修正する機能。自動フレーミングはカメラで捉えた顔を常に中央にトリミングする機能。背景ぼかしはその名のとおり背景をぼかす機能だ。いずれも珍しい機能ではないかもしれないが、Ryzen AIが処理するためシステムに余計な負荷をかけず利用できる点が大きなポイントだ。
現時点で搭載されるAI関連機能は限られるが、今後Ryzen AIで処理できるAI関連機能がどんどん増え、活用の幅も拡がっていくはずだ。
無線機能は、Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)準拠の無線LANとBluetooth 5.1を標準搭載。生体認証機能は電源ボタン一体型の指紋認証センサーを備え、ディスプレイ上部にはQHD撮影対応Webカメラを搭載する。
インターフェイスは、左側面にUSB4 Type-C×2とHDMI、USB 3.1 Gen1 Type-Aを、右側面にmicroSDカードスロット、3.5mmオーディオジャック、USB 3.1 Gen1 Type-Aをそれぞれ配置。ポートの種類自体に大きな不満はないが、可能なら有線LANは欲しかった。
付属ACアダプタはUSB Type-C接続のもので、左側面のUSB Type-Cポートに接続して利用する。出力は65Wで、サイズは比較的コンパクト。重量は実測で185.4gだった。
ディスプレイは有機ELらしく非常に鮮やか
Swift Edge 16搭載では、3,200×2,000ドット表示対応の16型有機ELディスプレイを搭載している。アスペクト比が16:10と縦長であるのはもちろん、16型というサイズを活かし表示解像度も高められている。一般的なフルHDディスプレイと比べて情報量は約3倍となっているため、1度により多くの情報を表示できるため、作業効率を大きく高められる。
ただ、サイズが16型と大きいとはいえ、等倍表示にした場合には表示される文字がかなり小さくなり視認性が落ちてしまう。個人的には、150%で表示するのが文字の見やすさと情報量のバランスに優れると感じる。その場合でもフルHDと比べて約2倍の情報量を表示できるため、拡大表示しても作業効率を大きく落とすことはない。
有機EL採用ということで、非常に鮮やかな発色とメリハリのあるコントラストで映像を表示できる点はさすがのひと言だ。DCI-P3カバー率100%の広色域表示にも対応しており、写真や動画の編集作業も、本来の色味をしっかりと確認しながら行えるだろう。
ただ、1点気になるのが、表面が光沢処理となっているために外光の映り込みが気になる点だ。もちろんこの光沢処理によって発色の鮮やかさも高められているが、文字入力中心の作業などは外光の映り込みがやや邪魔に感じる場面もある。このあたりは用途によって評価が分かれそうだ。
テンキー搭載キーボードはなかなか扱いやすい
キーボードは、アイソレーションタイプのものを搭載している。主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保。ボディが薄型ということもあって、ストロークはやや浅めという印象だが、打鍵時にクリック感がしっかり指に伝わってきて、打鍵感はなかなか良好だ。また、標準でキーボードバックライトを搭載し、暗い場所でも快適にタイピングできる点も嬉しい。
そして、標準でテンキーも搭載している。サイズ的にテンキーを搭載するとキーが窮屈になる印象もあるが、Swift Edge 16ではテンキー部分のピッチを狭めることで、主要キー部分に余裕を持たせている。これにより、テンキーの利便性も確保しつつ、フルサイズキーボード同等の扱いやすさも実現できており、なかなか好印象だ。
なお、今回の試用機は英語配列キーボードを搭載していたため、日本語キーボードがどのように搭載されるかはわからない。ただ、おそらくこの英語キーボードをベースとして日本語化されるものと思われるので、日本語キーボードもほぼ同等の扱いやすさが実現されると考えていいだろう。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載。パッドの面積は比較的大きく、ジェスチャー操作も含めて非常に軽快に操作できる。搭載位置はテンキー搭載ということもあって本体中央からやや左側に搭載しているが、ホームポジションからはやや右にずれている。できればホームポジション中心に搭載してもらいたかった。
競合を凌駕する性能を確認
ではベンチマークテストの結果を見ていこう。
まずはPCMark10の結果だが、なかなか優れたスコアが得られている。対抗となるインテルの第13世代Core i7搭載ノートPCと比べてみても良好なスコアが得られている。特にProductivityやDigital Content Creationの結果はかなり高スコアとなっている。この処理能力の高さは大きな魅力となりそうだ。
続いてプロセッサーの処理能力を計測するCINEBENCH R23の結果だが、こちらも第13世代Core i7に全く引けを取らないスコアが得られている。ほとんどの用途で動作が遅く感じることはないはずだ。
次は3DMarkの結果だ。今回はWild LifeとTime Spyを利用したが、こちらもモバイルノートPCとしてはかなりの高スコアと言える。これは、Ryzen 7 7840U内蔵のグラフィックス機能であるRadeon 780Mの描画能力の高さを示すものであり、こちらも非常に心強い。
もちろんディスクリートGPUには及ばないかもしれないが、Swift Edge 16がターゲットとしているモバイル用途としては非常に優れたものであり、写真や動画の編集作業なども快適にこなせるだろう。
最後にバッテリー駆動時間だ。PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用し、ディスプレイのバックライト輝度50%、キーボードバックライトをオフで計測してみたところ、8時間44分を記録した。
Swift Edge 16のバッテリー駆動時間は公称で約9時間とされている。そう考えると、ベンチマークテストでも9時間弱の駆動時間を記録した点はなかなか心強い。高負荷な作業を長時間行わなければ、1日の外出でバッテリー切れを心配する必要はなさそうで、モバイル用途にも問題なく対応できるはずだ。
優れた性能や高品質大画面が魅力のモバイルノートPC
Swift Edge 16は、16型という大型ディスプレイ搭載ではあるが、薄型かつ軽量ボディを実現しており、十分モバイル用途に対応可能。しかもそのディスプレイは有機EL採用によって非常に高品質で、映像クリエイターも納得の優れた発色性能を備えている。しかも性能面も最新のRyzen 7 7840U採用によって競合製品に匹敵、または凌駕しており、処理の重い作業も快適にこなせる。
実際に試用してみても、それらの魅力をしっかり体験でき、非常に快適な利用が可能だった。ボディはモバイルノートPCとしてはやや大きいものの、1.3kgを切る軽さで十分軽快に持ち歩けることも合わせて、高品質な大画面かつ優れた性能を備え、外出先でも効率良く作業を行えるモバイルノートPCを探しているなら、十分考慮に値する製品と言える。