日産自動車が「キャラバン MYROOM(マイルーム)」の注文受け付けを開始した。商用車「キャラバン」の車中泊仕様で、まずは特別仕様車「ローンチエディション」(595.87~714.01万円)を販売する。どんなクルマなのか。なぜ市販化を決めたのか。日産の事前説明会を取材してきた。
活況のライトキャンパー市場に参入!
キャラバン マイルームは“はたらくクルマ”のキャラバンがベースの車中泊仕様だ。使い方としては「クルマで出かけるのではなく、部屋にタイヤが付いていて、部屋ごと出かけるイメージ」であるとのこと。ワンタッチで展開できる「跳ね上げベッド」を装着したモデルと、布団を敷くような感じで簡単に寝床が作れる「折りたたみベッド」を積んだモデルがあり、テーブルとベッドの組み合わせで「リビングモード」「ベッドルームモード」「ダイニングルームモード」と車内を自在にアレンジできる。
日産が示した「キャンピングカー白書2023」(日本RV協会)の統計データによると、「キャンピングカー保有台数」は右肩上がりに伸びており、2022年には14.5万台に達している。日本の自動車市場が横ばいであることを考えると、珍しいほどに活況を呈している市場だ。中でも特に伸びているのは「8ナンバー以外」の車両。つまり、車内に水回りを完備していたり、冷蔵庫が備え付けだったりする本格的なキャンピングカーというよりも、ベッドと最低限の設備が備わった「ライトキャンパー」の売れ行きが絶好調なのだ。キャラバン マイルームも同カテゴリーに入る。
キャラバン マイルームは普段使いがしやすい点もポイント。見た目は車中泊仕様であることを過度にアピールしていないし、サイズや仕様も本格派キャンパーに比べると普段使いに向いているので、買い物や送り迎えに使っても特に問題ないだろう。
灯台下暗し…向きによって硬さが変えられるシートを発明
普段使いのしやすさにもつながるのだが、キャラバン マイルームの後席には目からウロコの発明品が備わっている。「2in1シート」だ。
走行方向に向かって前向きにも後ろ向きにも座れるシートは前からあるが、座る向きによってシートの硬さが変わる2in1シートのアイデアは「業界初」と日産。背もたれの裏と表の柔らかさを変えれば実現できる、一見すると簡単な思い付きではあるものの、これに100年からの歴史を持つ自動車業界が気づかなかったのだとすれば面白いし、今頃になって日産が気づいたこともまたほほえましい。
自動車メーカーが車中泊仕様を作るのはレアケース?
日産ではキャラバン マイルームのコンセプトカーを製作し、キャンピングカーショーや東京オートサロンなどのイベントで展示を行ってきた。そうした場所で同モデルを目にした来場者からは、「これっていくら?」「いつ発売なの?」といった具体的な質問が多く寄せられたという。こうした潜在顧客からの反応が日産を後押しし、市販化が実現した。
自動車メーカー自らが自社のクルマをベースに車中泊仕様を作るのは珍しいケースだ。この手のクルマは普通、ビルダーとか架装業者などと呼ばれる人たちがキャラバンやトヨタ自動車「ハイエース」などのベース車両を仕入れ、架装を施して販売するのが一般的。トヨタの販売店が車中泊仕様やキャンピングカーを手がけている例はあるが、全国規模の自動車メーカーが自社で架装までしてクルマを売るという例は「日産だけでは?」(前出の担当者)とのことだった。ちなみに生産~架装の流れを聞いて見ると、九州の日産車体で作った車両を京都に持って行って、日産車体の関係会社である架装メーカーで内装やシートを取り付けて出荷するのだという。
特別仕様車「ローンチエディション」の2トーンカラーは2023年12月末、モノトーンは2024年1月末まで注文を受け付ける。出荷は2024年1月末に開始予定。計画台数に達した場合は注文の受け付けをストップする。特別仕様ではない通常モデルの発売は2024年夏の予定。1年を通して販売するようになれば「年間1,000台くらいは売っていきたい」というのが日産担当者の意気込みだ。