新技術の獲得を続けセンシングのさらなる高度化へ
またもう1つの軸であるセンシングデバイスについても、技術革新を続ける姿勢は変わらない。センシングの領域で45年以上の歴史を持つonsemiは、先進技術を保有する企業の買収を行いながら新たなデバイスの開発を進めており、自動化が進むこれからの市場でさらなる影響力を発揮したいとする。
特に現在は、逆光など明るすぎる場合の撮像を鮮明化する“High Dynamic Range”(HDR)、暗い環境でも対象を正確に捉える新技術の開発を進めているという。また、高クオリティの撮影が不要な素子を判断して撮像の質を落とすことで省電力化に寄与する技術や、車載領域で求められる規格への対応やサイバーセキュリティ面での安全性確保による信頼性向上など、さまざまな技術を融合させた高機能デバイスを実現していくとのことだ。
今後の製品開発について林社長は、市場の流れを見ながらニーズに合った解決策を提供する姿勢を強調したうえで、「onsemi独自の特徴的な技術を搭載しながら、我々にしかできないデバイスを市場へと提供していきたい」と話した。
成長の加速が求められる“新たなフェーズ”へ
好調に推移するonsemiの事業において、日本市場はどのような位置づけとなっているのか。2023年第1四半期の売上比率では、日本市場が世界で8%となっているものの、林社長によるとこの数字はあくまで“日本国内の顧客に届けられた製品の売り上げ”とのこと。日本企業が持つアジアの生産拠点などで使用された場合には、アジア地域の売り上げとして計上されているといい、実質的な日本市場のインパクトはおよそ2倍だと考えられるとする。
その日本市場の特徴として林社長は「自動車メーカーの数」を挙げ、「世界的に見ても、1つの国でこれだけ力のある自動車メーカーが集まっている例はまずない」と話す。そして、車載領域に注力するonsemiとしては、グローバル規模で見ても日本を重要な市場だと位置づけているとした。
社長としての1年目は、半導体市場の混乱などもあって「大きな動きに左右された時間だった」とのこと。しかしそうした時勢もあり、「今まで出会ったことのなかった企業や、これまで積極的な協議ができていなかった企業とも、半導体メーカーと顧客として将来に向けた戦略を立てていく機会が多かった」と話す。
インタビューの締めくくりとして、林社長に2年目以降の意気込みを伺った。
「onsemiとしては、これまで年率7%~9%と掲げていた事業成長目標は、今や年率10%~12%となり、次のフェーズへと突入している。日本法人としても、こうした目標を達成できるように進めていかなくてはいけない。そのためには、SiCをはじめとするパワーデバイスとイメージセンサを両輪として、国内顧客のニーズに応えていきながら、継続的に成長させていきたい。」
新たな時代に向けた技術変革とともに成長を続けるonsemiが、日本市場でどのような進化を遂げていくのか。同社を先導する林社長の手腕に、期待が高まる。