サードウェーブが展開する法人向けブランド「ドスパラプラス」は、ベルサール秋葉原にてビジネス向けAIセミナー&相談会「Dospara plus Synapse2023」を2023年10月6日に開催しました。

冒頭、サードウェーブ 代表取締役社長 兼 最高執行責任者の尾崎健介氏とサードウェーブ 取締役 兼 上席執行役員副社長の井田晶也氏が登壇。尾崎氏は、ここ5年間の取り組みとして「物販からサービス提供」と「コンシューマー向けから法人向け」に力を入れており、来年創業40周年を迎えるにあたって、副社長の井田氏が法人事業の全体統括を行う組織体制に変更した説明します。

法人でも、AIに向けてのサーバーやワークステーションに力を入れ、サーバーやワークステーションの開発販売に力を注ぐだけでなく、クラウドサービスも行うと紹介しました。

井田氏は、AI時代を迎え、現在は10年前の60倍のデータが生成され、さらにChatGPTなどの生成AIによりデータ量は爆発的に増加するという予測値を紹介。さらにクラウドデータセンターによって電力の問題が発生し、今後はクラウド、ローカル双方でAIが利用されると説明しました。

  • 株式会社サードウェーブ 代表取締役社長 兼 最高執行責任者の尾崎健介氏

  • 株式会社サードウェーブ 取締役 兼 上席執行役員副社長の井田晶也氏

また、過去5年間の活動で、コンシューマー市場ではある程度のポジションを得たたため、今後はAIなど企業向け製品を投入すると話します。

その一環として製品ブランドを、GALLERIA、raytrek、THIRDWAVEの3つに再構築しました。raytrekブランドは、これまでクリエイター向けのブランドでしたが、法人向け特化として再出発します。

さらに、同日、デュアルソケットのXeonワークステーションX4630を含む5製品を発表。カスタマイズを含めて最適なワークステーションを提供すると説明しました。

X4630は、デュアルソケットのインテル Xeonスケーラブルプロセッサを使用したワークステーションで、特徴としていろいろできそうな拡張性や良好なプライスパフォーマンス(最小構成で95万円)、第四世代XeonスケーラブルプロセッサやNVIDIAもRTX6000 Ada世代×2まで対応する最新技術の投入と「オフィスに置ける」という静音性を実現しています。

冷却に関しては、Xeonプロセッサー専用に設計されたNoctua社の「NH-U12S DX4677」を採用しており、2023年9月に参考展示していたときと比較して、ひと回り大きなCPUクーラーに変更されていました。

  • raytrekは今後法人向けパソコンのブランドとして使用されます

  • 発表されたraytrek Workstation X4630。先日の参考展示からCPUクーラーが120mmに変更し、冷却能力がアップしました

  • raytrek Workstation X4630の紹介。第四世代XeonスケーラブルプロセッサやNVIDIA GPUをかなり柔軟な構成で注文可能です

  • 同じく本日発表されたraytrek SPX-Q4SAとraytrek SDD-T10。コンパクトな筐体デザインですが、外付けGPU搭載モデルです

  • 「旧reytrek」となるクリエイター向けraytrek 4CXVも展示。デスクトップパソコン raytrek 4C シリーズが2023年度グッドデザイン賞を受賞したためでしょう

これを受けてサードウェーブ 法人事業統括本部 上席執行役員の高橋良介氏が「当社でのAI活用事例とAIを支えるプラットフォームの紹介」を行いました。

紹介されたAI活用事例は、神奈川県にある綾瀬本社工場における取り組み。主に画像認識を活用しています。ペーパーレス化とミス削減のために製品識別にQRコードを使用してカメラで認識、それによって注文の95%を占めるBTOパソコンの生産ラインで製品情報を表示して作業の迅速化と確実性を増します。

画像認識は放熱グリスの種類によって微妙に異なる注射器にも採用。サードウェーブのBTOパソコンはオプションで高放熱性のグリスを選択できますが、グリスの注射器の違いを画像で判断しミスを防ぐ仕組みです。また、製品には各種のステッカー(CPU/GPU等)を張り付ける必要がありますが、これも画像認識によって正常判断を行います。

これらの事例はすべて50万パターンの事前学習を行っており、作業漏れや誤判断発生をなくすことに成功。一方、部品種類が増えることによる学習量の増加や撮影環境の調整、判定のための人的動作の軽減が今後の課題と説明しました。

  • 株式会社サードウェーブ 法人事業統括本部 上席執行役員の高橋良介氏

  • サードウェーブの生産現場におけるAIの利用例。製造するパソコンにQRコードを用意して生産ラインのペーパーレス化を実現

  • BTOオプションとして高性能グリスの変更が可能です。ここでミスが出ないようにグリス容器を学習させています

  • CPUやGPU等の各種ロゴシールに関しても画像認識で対応。ミスが出ない仕組みですが、部材が増えるたびに学習させるのが課題

また、高橋氏は、時期を明示しなかったものの、オンプレミス利用の機材だけにとどまらず、「raytrek cloud」を提供することも発表しました。CADやBIMが快適に利用できるGPUクラウドサービスのリモートワークステーション(DaaS)と画像生成AIや言語生成LLM、シミュレーション向けのGPUクラウドの2本立てで、クラウドならではの柔軟性を実現します。

リモートワークステーションは、大手の2分の1から5分の1、GPUクラウドは2分の1から3分の1と説明しており、かなりの話題になりそうです(が、昨今のサーバー用GPUの供給状況を考えるとすべて利用中で新たなインスタンスの作成ができませんと満員御礼な予感もします)。

  • 今回の大きな発表としてGPUクラウド「raytrek cloud」を近日申し込み開始とアナウンス

  • raytrek cloudリモートデスクトップはDaaSで、GPU入りのワークステーションをリモートで利用できます

  • raytrek cloud高速コンピューティングはIaaSで、生成AIや機械学習、シミュレーションに向いています

  • どちらのサービスも「業界最安値」とのことで、人気爆発となると思われます

  • 以下、当日その他の講演。一般社団法人日本ディープラーニング協会 専務理事の岡田隆太朗氏

  • 「AIの進化 -テクノロジーがもたらす社会への変革-」の講演ではディープラーニング以前と以後で誤答率が大きく変わったことを紹介しました

  • エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部 プロフェッショナルビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャー 高橋想氏

  • 「AI×NVIDIA Omniverse 最新活用事例ご紹介」の講演では最近5世代のGPUを紹介しました

  • 株式会社フューチャースタンダード 代表取締役の鳥海哲史氏

  • 「映像解析AIから生成AIまでのAIのオンプレ実行基盤SCORERの紹介」では人流ならぬ、魚流測定を行った事例を紹介していました

  • インテル株式会社 プラットフォーム・アプリケーション・エンジニアの矢内洋裕氏。手に持っているのIntel7プロセスのウェハで「最近新しいプロセスのウェハが日本に入ってきていなかった」とのこと

  • 「インテル Xeon プロセッサーの最新技術とCPU×最新AI技術」の講演ではAI関連のハード、ソフト両面を紹介しました

  • 株式会社M&F tecnica 代表取締役の守屋正規氏

  • 「建築業界における最新テクノロジー活用事例-xR、AI-」の講演ではBIMデータから必要な資材を素早く必要な資材を読み取り、大幅な作業効率改善につながると紹介しました

  • 日本マイクロソフト株式会社 デバイスパートナーソリューション事業本部 マーケティング本部 Commercial Windows戦略部長の仲西和彦氏

  • 「時代が変わる。働き方が変わる。Windows 11とAIが実現する世界」の講演では、これからのビジネスPCにDPUが不可欠になると紹介しました

  • 早稲田大学 基幹理工学部 情報通信学科 教授の渡辺裕氏

  • 「映像認識から生成系AIに至る研究の変遷と計算機環境の変化」の講演ではCNN(畳み込みニューラルネットワーク)/DNN(ディープニューラルネットワーク)の進化に合わせてGPUの変化を紹介しました

  • アドビ株式会社 執行役員 デジタルメディア事業統括本部 営業戦略本部長 松原裕典氏

  • 「想像性を解き放つアドビFirefly」の講演ではFireflyが商業利用に適していることを紹介しました

  • 株式会社playknot 代表取締役 共同CEOの山口恭兵氏

  • 「XR/メタバースの新規事業企画について」の講演では中長期的な新規事業を行う際の考えを紹介しました