マツダのオープンスポーツカー「ロードスター」は実際のところ、売れているのか。現行型(4世代目、通称ND)の大幅改良を前に販売状況が判明したので、詳細にお伝えしたい。噂によると若い世代からも支持率が高いとのことだが、それってホント?
初代からの累計は119万台!
2023年8月時点におけるロードスターの累計販売台数(初代NA型~4代目ND型)は、グローバルで約119万台。日本国内に限ると約22万台となっている。市場別の割合は北米45%、欧州33%、日本19%、豪州2%、その他2%。つまり、主要市場の北米、欧州、日本で全体の97%を占めていることになる。
2015年に登場した現行型(ND)の日本における累計販売台数は約5.6万台で、すでに2代目NB型の3.1万台と3代目NC型の1.9万台を合わせた台数を超えている。この数字からも、ロードスターがいまだに選び続けられていることがわかる。ちなみに、大人気モデルだった初代NA型の累計販売台数は11.8万台というから驚きだ。
異例? 現行型は販売台数が増加に反転!
販売台数の推移が面白い。一般的にスポーツカーは、発売初年度から2年目あたりで販売のピークを迎える。初代NA型がまさにその流れだったし、NB、NCも同じように台数の折れ線グラフが右肩下がりになっていた。ところがNDは、発売7年目から売れ行きが反転。8年目にあたる2022年は年間販売台数で過去最高となる9,567台が売れた。
要因は2つあるというのがマツダの見方。ひとつはコロナ禍の影響だ。新型コロナウイルスの感染拡大以降、世の中では移動手段に対する意識が変わったり、ライフスタイルや趣味へのお金の使い方、つまりは価値観が変化したりもした。これがロードスターの売れ行きに影響したというのだ。
もうひとつは継続的な改良による効果。具体的には軽量化に特化したスペシャルバージョン「990S」を登場させたことが、販売台数が反転した要因になっているようだ。また、カラーコーディネートを楽しめる「ブラウントップ」も好評だったとのこと。
筆者は990Sの発表当時に箱根のワインディングで試したのだが、他のグレードと比べると足回りがしなやかで、「キネマティック・ポスチャー・コントロール」(KPC)と軽い車重が相まってヒラリヒラリとコーナーを駆け抜ける感覚がすばらしかったことを思い出した。
スポーツカーセグメント自体も2020年以降は前年越えが続いているそう。魅力的なスポーツカーの導入が相次いだことが、相乗効果としてロードスターの販売を後押ししたというのがマツダの分析だ。確かにこの間、トヨタ自動車「86」やスバル「BRZ」など、手頃で手の届きやすいスポーツカーのモデルチェンジが続いた。
30代以下のユーザーは何%?
発売から2022年までの販売実績を基にNDロードスターのユーザー分析を行うと、年齢別では25%を占める50代が中心で、40代以上が全体の7割を占めている。一方、20代までは17%、30代は13%で、若い世代にもロードスターが響いている状況がうかがえる。性別では男性が92%と圧倒的。50代以上で子育てがひと段落し、(憧れだった?)オープンカーに一歩を踏み出そうと考えるユーザーにロードスターが魅力的に映っているというのがマツダの所見だ。
ここからは2022年9月~2023年6月の販売実績を基に内訳を見ていきたい。
ロードスター購入者の32%はマツダのもともとの顧客(既存客)。新規と増車を合計した割合が68%と高いのがこのクルマの特徴といえる。下取り車の内訳ではロードスターが最も多く、特にNDからNDへ乗り換えるという顧客が多いという。一方、他社からの流入には、これといったパターンはないそうだ。
これも異例? マニュアル車が過半数!
ボディタイプ別の販売内訳はソフトトップ75%、RF(リトラクタブルハードトップ)25%。前者は20代、後者は60代以上のユーザーに支持されている。トランスミッションとの関係を見ると、ソフトトップはMT82%、AT18%。RFではMT54%、AT46%。合計ではMT75%、AT25%となる。
グレード別では2021年導入の特別仕様「990S」が全体の20%と人気だ。昨年導入のブラウントップも18%を占めている。
今回の大幅改良ではグレード体系を見直し、メーカーオプションの適正化が行われるが、そのかわりに平均して価格が20万円~30万円ほどアップする。だた、販売会社の予約状況を見ると改良モデルは好調な滑り出しを見せているそうで、「価格アップの影響はなさそう」(マツダ)とのこと。月間500台の販売目標に変更はないという。