伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が進行中。10月5日(木)には第3ブロックの佐藤天彦九段-長谷部浩平五段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの持久戦を143手で制した佐藤九段が予選突破まであと2勝としました。

横歩取り青野流

両者の初手合いとなった本局は振り駒で先手番を得た佐藤九段の横歩取りへ。青野流の陣を敷いた佐藤九段に対し後手の長谷部五段は二段目に歩を控えて打つ守備的な構えで応じ、局面は持久戦に持ち込まれました。先手は持ち歩が2枚あること、後手は先手の飛車の動きが不自由な点が主張です。

局面が煮詰まって互いに有効手の少ない時間帯が続きます。佐藤九段が1筋の歩を突いたのは飛車の可動域を増やしつつ端攻めを見せる一石二鳥の手。これに対して後手のほうに有効な手待ちがないのが長谷部五段の誤算でした。大きな駒の損得こそないものの、駒がぶつかる前の段階で佐藤九段の作戦勝ちの様相です。

佐藤九段が快勝

ペースをつかんだ先手の佐藤九段は自然な指し手で優位を拡大します。3筋の歩を伸ばして後手の桂頭を狙ったのが「歩のない筋の歩を伸ばせ」の格言通りの好着想。こうなると序盤の一歩得が大きく物を言ってきます。局面を打開したい後手の長谷部五段も攻防の自陣角で応じますが、攻めされられている感は否めません。

後手の反発をいなして手番を得た佐藤九段は最後の猛攻へ。1筋に手をつけたのが当初からの狙いで、こうなると盤面右方に後手玉が近づいていたことまでとがめることに成功しています。終局時刻は20時11分、最後は自玉の詰みを認めた長谷部五段が投了。序盤の作戦勝ちをうまく勝ちにつないだ佐藤九段が予選突破まであと2勝としました。

佐藤九段は次局で佐藤秀司八段-近藤誠也七段戦の勝者と対戦します。

  • 公式戦での連敗を4でストップした佐藤九段 好調に転じられるか

    公式戦での連敗を4でストップした佐藤九段 好調に転じられるか

水留 啓(将棋情報局)

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