終わりが見えなかった酷暑もようやく落ち着いて、過ごしやすい気温になってきた。ついにやってきた、食欲の秋。積極的に外を出歩けるような時期になったので、筆者が学生時代から何度も通う思い出の味を、久々にお店で思いっきり食らうことにしてみた。
降り立ったのは、東京メトロ東西線の早稲田駅。3a出口から徒歩約1分のところにあるのが、油そば専門店「麺爺あぶら 早稲田店」だ。
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ワセメシグランプリを4連覇した大人気の油そば
ここ最近まで早稲田に通っていた人であれば、ほとんどが麺爺という店名を知っているのではないだろうか。それもそのはず、大学公認サークルが主催する早稲田周辺グルメの人気投票「ワセメシグランプリ」で4年連続のグランプリを飾ったほどの大人気店で、コロナ禍以前は、早稲田大学の3つのキャンパスが位置する早稲田・西早稲田エリアに計3店舗を構え、お昼時にはどの店舗でも学生たちが行列を作っていた。
コロナ禍には2店舗が一時閉店するなど、かなり苦しい時期もあったようだが、学生が町に戻ると同時に客足も回復。今では早稲田の2店舗が営業し、西早稲田店は一時閉店して移転準備中だという。さらには高田馬場駅周辺に系列店「焼爺」をオープンするなどV字回復を遂げていて、変わらず学生やOB・OGたちから愛されているようだ。
早大生としてコロナ禍を過ごした筆者も、足しげく麺爺に通っていた1人。ただ何度も店を訪れていたにもかかわらず、結局やり残していたことがある。それが麺爺の「神盛」チャレンジ。食べ盛りの学生でさえ跳ね返されるというデカ盛りに、OBながら挑戦してみた。
1kg超えのデカ盛り油そばにいざ対面……!
階段を下りて、いざ入店。食券を買う。油そばは、黒(醤油)・白(塩)・茶(味噌)など5種類のメニューがあり、今回はオーソドックスな黒を選んだ。麺の量は神盛を選択。大食いメニューにもかかわらず1,080円で食べられるのは、さすが学生街だ。ニンニクの量は無しからトリプルまでの中からチョイスする。
数分後、目の前に巨大な白のどんぶりが運ばれてくる。ドンッ、と置かれた明らかに重みのある器の中には、大量の太いちぢれ麺がぎっしり。お店によると、神盛の麺量は茹でる前の状態で630g、茹で上がりはなんと1,000gを超えるのだとか……。
どんぶりの底まで割り箸を差し込んで、折れそうになりながら麺を持ち上げると、黒い醤油だれが見える。白っぽかった麺が、たれに触れると一気に黒く染まる。ひと思いにかき混ぜれば、まさに「黒」の1杯へと様変わりした。
麺を持ち上げて、1口目。開発に2年を要したという自家製麺は加水率が非常に高く、口に入れた瞬間のプルプルした舌触りと、ゆっくりと噛みしめたくなるモチモチ感が特徴的だ。また太い麺は、コクが強めの醤油だれと旨味を引き立てる油がよく絡んでいて、箸が止まらなくなる。
ちなみにこの油そば、麺に重量感がある上に縮れているため絡まりやすいので、ラーメンのように引き上げて食べるのが少し難しい。おすすめは、パスタのように箸に巻き付けて食べる方法。たれが跳ねることもないし、塊のようになった麺の小麦感もまたおいしい。
さまざまなトッピングや味変アイテムも勢ぞろい
また、時々現れるトッピングも重要。ネギは食感とアクセントを、海苔は香りをプラスしてくれる。棒状にカットされた焼豚は厚みがあり、脂身というよりは肉の旨味を感じるタイプで、この焼豚が乗った「焼豚丼」も隠れた人気メニューだ。今回は注文していないが、温泉卵やチーズなどのトッピングもおすすめ。
そして麺爺のテーブルには、たくさんの味変アイテムが並んでいる。普段からいろいろな調味料を試して楽しんでいたが、大食い中だとなおさらありがたい。
お酢は、油そばでは定番の調味料で、濃い目のたれもさっぱりと楽しむことができる。また一味唐辛子やラー油、胡椒など、ちょい足しには不可欠なメンバーが揃っている。
中でも筆者のおすすめは山椒。しびれる辛さを加えるだけでなく、スパイシーな香りで味が引き締まるので、大食い中の口のリセットにもぴったりだ。
完食までにかかったタイムは……?
と、ここまで油そばのさまざまな食べ方を紹介してきたが、徐々に食べ進めるペースが落ちてきた。モチっとした太麺は食べ応えもあるので、しっかりと噛みしめる必要があって流し込むのは難しく、1口ずつ丁寧に口へと運び続ける。
麺でぎっしりと埋まっていたどんぶりの底が、ようやく見えてきた。そして最後の1口。
食べ始めから計測を開始していたストップウォッチを見ると、25分が経つところだった。写真を撮りながらだったとはいえ、1人客がこれだけ時間をかけて油そばを食べるのは珍しい。実際、筆者より後に入店した客も、すでに何組か店を後にしていた。
ただ、だからといってすぐ立ち上がることはできず、水を飲みながら少し休憩。次にチャレンジするときは、万が一に備えて必ず誰かを連れて行こうと心に誓った。
自宅でお店の味を楽しめる「おうち麺爺」も!
この麺爺の油そばは、家で楽しむこともできる。学生が町からいなくなったコロナ禍の時期に、店長自らが麺とたれを届ける宅配サービス「おうち麺爺」を開始して、今は通販で購入することができる。
筆者自身もコロナ禍以降、何度も通販で購入していて、時にはおすすめグルメのプレゼントとしても使ったことも。基本的には麺を茹でてたれに絡めるだけと調理も簡単で、味も店舗とほぼ遜色ない。麺の量でいえば3玉半くらいで神盛を再現できるので、食べきれるか不安であれば、おうちでチャレンジしてみてもいいかもしれない。
学生時代から何度も食べてきた油そば。苦しくなるほどのデカ盛りを食べたというのに、もうすでに恋しくなり始めている。病みつきになる学生街の味を、ぜひご賞味あれ。