年賀状の絵柄や縁起物の置物など、年末年始に見掛けることも多い十二支(じゅうにし)。「あなたの干支(えと)は何?」という会話で年齢がバレることもある、日本人にとってなじみ深いものです。しかし実は、十二支と干支は違います。また「どうしてこの動物で、この順番なんだろう」と疑問に思ったことがある方も多いでしょう。
本記事では十二支の順番の由来となった物語や各動物の意味の他、覚え方を紹介。十二支の基本的な知識や干支との違い、2023年・2024年はどんな年なのかもまとめました。
十二支の順番とその理由とは
「ね、うし、とら……」と、リズム遊びのようにして覚えることも多い十二支の順。子供のころに覚えたあの順番、まだそらんじられますか。
十二支の順番の正解は、「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥」です。その名の通り12種類あり、それぞれは動物の名前です。
どうしてこの順番で、この動物なのか、十二支にまつわる物語を見ていきましょう。
十二支が動物に例えられて順番がついている由来とされる物語
十二支が動物で表される理由は、ある物語にあるといわれています。物語の内容について、細かい部分では諸説ありますが、一般的に知られているのは以下のようなものです。
昔々、神様が動物たちに向けて「1月1日の朝に、神様のもとへ早くたどり着いた1番~12番目までの者を、一年交代でその年の大将にする」という旨のお触れを出しました。
それを聞いた動物たちは皆、「我こそが1番になろう」と張り切ります。しかしネコは話を聞きそびれ、ネズミに聞いたところ「1月2日の朝」と言われます。
さてウシは足が遅いので、誰よりも早く出発し、歩みを進めます。神様の家に着いたところ他に誰もおらず、自分が1番だと喜んでいたところ、ウシの背中にいたネズミがぴょんっと飛び出して1位を横取りしたため、ウシは2位となってしまいました。
その後、トラ、ウサギ、タツ、ヘビ、ウマ、ヒツジと続きます。サルとイヌは最初は仲良く一緒に向かっていたのですが、途中でけんかになってしまいます。そこへトリが仲裁に入り、サル、トリ、イヌの順でゴールイン。そしてイノシシが12位でゴールし、十二支が決まったということです。
なおネコがやって来たときには当然順番は決まった後だったので、それ以来ネコはネズミを恨み、追い回すようになったそうです。
順位をめぐる動物たちのいざこざが、まるで人間同士のやりとりのように語られるのがおもしろいですね。ちなみにサルとイヌのけんかのくだりは、「犬猿の仲」ということわざの由来という説もあります。
十二支の漢字の読み方と覚え方
ここでは改めて、十二支の順番と漢字、読み方や、具体的にどの動物を指すのかを確認していきましょう。
順番 | 漢字 | 音読み | 訓読み | 何の動物か |
---|---|---|---|---|
1 | 子 | し | ね | ネズミ(鼠) |
2 | 丑 | ちゅう | うし | ウシ(牛) |
3 | 寅 | いん | とら | トラ(虎) |
4 | 卯 | ぼう | う | ウサギ(兎) |
5 | 辰 | しん | たつ | タツ・リュウ(竜・龍) |
6 | 巳 | し | み | ヘビ(蛇) |
7 | 午 | ご | うま | ウマ(馬) |
8 | 未 | び | ひつじ | ヒツジ(羊) |
9 | 申 | しん | さる | サル(猿) |
10 | 酉 | ゆう | とり | ニワトリ(鶏) |
11 | 戌 | じゅつ | いぬ | イヌ(犬) |
12 | 亥 | がい | い | イノシシ(猪) |
十二支は子(ね)から訓読みを順に続けて「ね、うし、とら、う、たつ、み、うま、ひつじ、さる、とり、いぬ、い」とリズムよく読むことで、覚えやすくなります。うろ覚えになっている人は、この機会に覚え直してみてくださいね。
そもそも十二支の意味とは
十二支は古代中国で生まれ、本来は木星の位置を示すための呼称でした。星が12年で天を一周することから、古代中国の天文学では天を十二分し、動物に当てはめたそうです。以来、十二支は中国や日本をはじめとした、多くのアジア諸国で使用されています。
なお十二支に当てはめられる動物は、国によって少しずつ違うようです。例えば、中国では「亥」は「ブタ」のこと。さらにモンゴルでは「寅」の代わりに「豹」が、チベットやタイではウサギの代わりに「猫」が使われています。
十二支は方位や時間も表す
現代の日本では主に年を表す十二支ですが、もともとは方角や、時間を表すものでもありました。
方角については、「子」を北として、東回りに割り当てられていきます。例えば地球上の経度や時刻の基準となる「本初子午線(ほんしょしごせん)」は、イギリスの旧グリニッジ天文台を通る子午線を指しますが、この「子」「午」はそれぞれ、「北」と「南」を表しているのです。
時間については、例えば怪談でおなじみの「丑の刻参り」の「丑の刻」は、現在の午前2時頃のことです。また、昼の12時を指す「正午」は、「午の刻」のちょうど真ん中を表します。
このように、その名残は現代でも感じることができそうです。
十二支の各動物の意味や性格
年ごとにめぐる12匹の動物たちは、ただ名前だけが使われているわけではありません。それぞれの意味や性格、特徴が、その年の傾向を表すものとして伝えられています。
それぞれ見てみましょう。
子(ネズミ)
ネズミは繁殖力が高く、子宝の象徴として縁起が良いとされる動物です。そのため、子年は子孫繁栄の年といわれます。
丑(ウシ)
ウシは昔から、生活を支える労働力として重宝されていました。力強さや誠実さ、粘り強さを象徴する動物です。
寅
トラは勇ましく、果敢な動物です。その性質から、決断力や才覚にも優れているといわれています。
卯(ウサギ)
草食動物であるウサギは、穏やかなイメージから、安全の象徴です。また、跳躍する姿から「卯年は飛躍の年」とも言われます。
辰(タツ・リュウ)
タツ・リュウはドラゴンのこと。空想上の生き物とされていますが、特に東洋では身近なモチーフです。中国では古くから権力の象徴とされており、信用、強さ、活力などを表すともいわれます。
巳(ヘビ)
脱皮を繰り返すヘビは、「再生」「永遠」「生命力」を表す生き物として扱われています。
午(ウマ)
ウマはウシと同じく、古くから人間の生活に欠かせない、大切なパートナーです。力強く、健康や豊作を象徴する動物でもあります。
未(ヒツジ)
ヒツジは群れをつくる動物です。大勢集まって穏やかに暮らす様子から、家族の安泰を表すといわれます。
申(サル)
サルは知能が高く、賢者や好奇心を表す動物です。また「神の使い」とも呼ばれ、縁起の良い動物でもあります。
酉(トリ)
トリは「取り込む」に通じ、商売繁盛の象徴です。「酉(とり)の市」というと、商売繁盛の神様を祀るお祭りのことですね。
なおこのトリは、特にニワトリのことを指します。
戌(イヌ)
イヌも人間の身近に暮らす動物です。昔からイヌは忠義にあつい生き物として扱われてきて、勤勉さ、真面目さなども表します。
亥(イノシシ)
「猪突猛進(ちょとつもうしん)」ということわざがありますが、イノシシはまっすぐ進むことから、一途さや勢いの良さを表します。またイノシシの肉は万病に良いとされ、無病促進の象徴です。
十二支と干支(えと)の違い
さて「十二支」と「干支」は、厳密には少し異なります。
干支は、正しくは「十干(じっかん)十二支(じゅうにし)」と呼ばれるものです。これは「十干」と「十二支」とを組み合わせたものという意味ですが、十干は現代ではあまり使われなくなりました。
干支には十二支の他に十干がある
十干とは、「甲(きのえ)」「乙(きのと)」「丙(ひのえ)」「丁(ひのと)」「戊(つちのえ)」「己(つちのと)」「庚(かのえ)」「辛(かのと)」「壬(みずのえ)」「癸(みずのと)」のことです。古代中国で10日をひとまとまりとして、これらの値を割り当てて呼んでいました。
現代でも、契約書などで「甲」「乙」などが使われることがありますね。
そしてこの十干を、十二支と組み合わせてさらに細かくした「甲子」「乙丑」などの干支で、年や日、時刻、方角などを示していたのです。
干支、つまり十干十二支は、本来60通りあります。自分と同じ干支(十干十二支)は、実は60年に一回しかめぐって来ません。
なおこの十干十二支の中で最初の組み合わせは「甲子(きのえね)」。甲子園球場は1924年、この「甲子(きのえね)」の年に作られたことからその名がつきました。
2023年の十二支は卯(うさぎ)、2024年は辰(たつ)
2023年は十二支では「卯年」です。十干十二支で言えば、「癸卯(みずのとう)」の年。
癸は十干の最後です。終わりは始まりの手前を意味します。また、癸は暖かな恵みの雨を示す言葉でもあります。これらを合わせて、癸の年は「再生」や「芽生え」を象徴する年といわれます。
また、卯年は「飛躍」の年。厳しいときを抜け出し、徐々に飛躍へと向かって行く年だと考えられます。
そして2024年は十二支で「辰年」、十干十二支で「甲辰(きのえたつ)」です。
甲は十干の最初であり、命の始まりや、天に向かってまっすぐに、堂々と立つ大木を表しています。そして辰年は陽の気が動いて、万物が振動し、活力がみなぎっていく年だと言われています。
そのためこの年は芽が成長し、姿を整え、実になって行く年だと考えられます。
十二支はなぜ今の順番なのか、理由を知ると順番も覚えやすい
うっかりして混乱することもある十二支の順番。由来になった物語やもともとの成り立ちを知っておくと、正しい順番を思い出しやすくなります。干支の順番がわからなくなったときには、動物たちの競争のことを思い出してください。
年末年始にはぜひ干支やそれぞれの動物の意味を思い出し、一年間の目標を立ててみてくださいね。