「マイナビ ツール・ド・九州2023」は10月6~9日、福岡、熊本、大分を舞台に初開催される国際サイクルロードレースだ。
国内外の選手や大会関係者、ロードレースファンにコース沿線の魅力を満喫してもらおうと、九州のグルメや観光情報を韓国語で発信しているユーチューバー・福岡アジョシ(韓国語でおじさんの意味)こと、冨永拓馬さん(33)と大分県日田市への小旅行を楽しんだ。(池田 郷)
■サービスはザクザク旬のマロンチップス
■パリパリとシャキシャキの日田焼きそば
冨永さんと待ち合わせた博多駅バスターミナルから日田市の中心部には1時間半余りで到着する。さっそくランチだ。冨永さんとの旅は、ツール・ド・九州のスタート地点となる北九州に続き2回目。グルメ系ユーチューバーだけに、お店選びの目利きに狂いはない。今回はどんな店かと、胸が躍る。
日田駅前から豆田町方面へ歩くこと約15分。冨永さんは「食事の店そのだ」ののれんをくぐった。名物の日田焼きそばを注文し、厨房から漂うソースの香ばしい香りを嗅ぎながらできあがりを待つ。
この日の最高気温は9月下旬とは思えない30度越え。冷房の効いた店内に入っても汗が止まらない。日田市内のビール工場で製造された生ビールのサーバーが視線に入る。「これもご当地メニュー。頼まないのは失礼でしょう」。2人の意見が一致したのは言うまでもない。
冷えたジョッキを運んでくれた女将(おかみ)の苑田洋子さん(73)が「これサービスです。ビールのあてにどうぞ」と小皿を差し出した。スライスした栗を素揚げにし、塩をふったマロンチップス。ザクザクかみしめると旬の香りが口に広がり、ビールが進む。「韓国の人たちは飲食店の『社長の特別サービス』が大好き。これ喜ばれますね」と冨永さん。
続いて焼きそばが運ばれてきた。焦げ目が付くまで生麺をじっくり焼くのが日田焼きそば。パリパリの麺とシャキシャキのもやしの食感が絶妙だ。
店は1972年創業。現在、主人の君人さん(74)と息子の正敏さん(50)の3人で切り盛りしている。夜はシャモ料理の名店として知られる。こちらの味も気になる。
■圧巻のひな人形4000体をアピール
■試食、試飲、しょうゆ味のソフトも
午後は江戸の風情を残す町並みを散策した。豆田町といえば、外国人へのアピールポイントの一つがひな人形だ。
日本最大級のひな人形展示施設「ひな御殿」が誇る約4000体の人形は、1800年代半ばに創業した日田醤油の3代目当主が全国から収集。常設展示としては、これまた日本最大級の段飾りなどが10部屋に並ぶ様子は壮観だ。
通りにはしょうゆや日本酒の醸造元が並び、試食や試飲、楽しみながらお土産の買い物を楽しめる。冨永さんの食への探究心は旺盛だ。町歩きの間、しょうゆ味のソフトクリームや、ウナギのかば焼きを混ぜ込んだ焼きおにぎりなどを購入。グルメ系ユーチューバーは胃袋も鍛えられている。
■韓国人注目の「三丁目」的なレトロ感
■九州人の持論熱弁、杯重ね夜は更けて
夕食の店選びは、日本の文化に関心のある韓国人の間で注目されている昭和レトロがキーワード。訪れた店は「天領酒場三丁目」(日田市隈)。店名がヒット映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を想起させる。
松田聖子、郷ひろみ、クリスタルキング…。店内には往年のヒット曲のレコードジャケットが掲示され、昭和感を演出する。
昼に続き、日田工場の生ビールで乾杯。注文したひな鳥の半身揚げや、和豚もち豚焼きがテーブルに運ばれてきて、冨永さんと筆者(※韓国勤務経験あり)は目を見合わせた。「韓国料理みたい」と。ひな鳥の半身揚げは韓国のチキンの丸揚げ「トンタク」に、和豚もち豚焼きは韓国の煮豚「ポッサム」に見た目や味がよく似ていたからだ。半身揚げをハサミで切り分ける食べ方も韓国っぽい。
韓国で暮らすと、九州と韓国の食文化のつながりを感じることがある。韓国の「スジェビ」という、小麦粉を水で練ってイリコだしで煮た食べ物がある。一般的には「韓国風すいとん」などと訳されるが、九州人としては「これ、だご汁やん」と思ってしまう。豚肉を煮込んだスープにご飯を投入して食べる釜山名物の「テジクッパ」の風味も、多くの九州人は豚骨ラーメンのスープの香りを想起するだろう。
静岡県出身の冨永さんに、九州人のそんな持論を熱弁しながら杯を重ねるうちに夜は更け、お開きとなった。
紹介したメニューなど詳細は、「福岡アジョシ」の公式YouTubeチャンネルでお楽しみのほどを。