旬とは?
その野菜の味が最もよい食べごろの時期を旬といい、その栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなり、安い価格でおいしく栄養価の高い野菜を手に入れることができます。
旬のなかにはさらに三つの時期があります。「走り」「盛り」「名残」へと推移し、時期を追って食味が変わっていきます。走りの野菜はみずみずしくフレッシュで、水分を生かした調理法がおすすめ。盛りは、最も食味のよい状態で、どんな調理法でもおいしく食べられ、レシピの幅も広がります。名残は、水分が抜けて味が凝縮されるので加熱調理のほか、保存食への加工にも向いています。
涼しくなる10月は、葉物野菜も復活し、きのこや山芋などと合わせた料理もおいしい季節。旬の野菜には人間に必要な栄養が多く含まれています。走り、盛り、名残の野菜を知ることで、毎日の食事がより豊かに季節の移ろいを感じるものになるでしょう。
10月が「走り」の野菜
やっと訪れたと思いきや駆け足で過ぎる秋。冬にはまだ早いけれど、西洋野菜の青菜とネギ類で走りを味わってみてはいかがでしょう。生でも食べられ、調理方法も幅広いヤマノイモは、秋の食事にも合いそうです。
リーキ(ポロネギ)
西洋ネギの一種で日本でも少量ですが作られるようになりました。根深ネギと同じで冬が最盛期ですが、早いものは10月頃から出回り始めます。一般的な根深ネギとの違いは、根元の白い部分がより太く、緑の葉の部分が筒状ではなく扁平(へんぺい)でV字型に重なっている点。甘みがあってやわらかくネギ特有の刺激臭もほどんどありません。加熱調理で甘みが引き立ちます。主な栄養素はタミンB6、K、葉酸など。新聞紙などに包んで冷暗所に立てて保存します。
調理例:グリル焼き、リーキとジャガイモのクリームシチュー、グラタン
ロケット(ルッコラ)
地中海沿岸地方が原産のハーブで、ごまの風味とピリッとした辛みが特徴。春と秋に収穫され、日本でも気軽に手に入ります。サラダやピザのトッピングで生で食べるのが一般的ですが、おひたしや炒め物でもおいしく食べられます。βカロテン、ビタミンE、C、カルシウム、鉄分も豊富。鮮度が落ちると香りも落ちるので、保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1~2日程度で食べきるようにします。
調理例:生ハムとルッコラのペペロンチーノ、洋風おひたし、ルッコラときのこのソテー
イチョウイモ(銀杏芋)
自然薯(じねんじょ)、長いもと並ぶヤマイモの一種。扁平でイチョウの葉のような形をしており、粘りが強いことからトロロイモと呼ばれることも。関東ではヤマトイモ(大和芋)という呼び名が一般的です。秋から冬までが出回る時期。ビタミンB群、C、カリウム、食物繊維をバランスよく含んでいます。生食はサクサクとした歯応え。すりおろすとトロトロで、それを加熱するとふわふわとした食感に。保湿のため新聞紙に包んで冷暗所で保管します。
調理例:イチョウイモの磯辺焼き風、団子汁、お好み焼き
10月が「盛り」の野菜
秋の味覚といえばきのこ類。一年中出回るようになりましたが、秋らしい料理で楽しんでみてはいかがでしょう。珍しいむかごも調理は簡単なので見つけたらぜひ味わってみませんか。肉厚の葉物はボリュームにも満足できます。
チンゲンサイ(青梗菜)
中国原産の結球しない白菜の仲間。日本でも定着している春と秋が旬の中国野菜です。カロテン、ビタミンC、Eのほか、カルシウム、鉄などのミネラル類も多く、栄養価の高い緑黄色野菜ですが、味は淡泊でくせがないのが特徴。煮崩れしにくく、加熱すると緑色が一層鮮やかになり、分量があまり変化しないので調理に重宝します。保存は湿らせた新聞紙などに包み冷蔵庫へ。
調理例:チンゲンサイのカニあんかけ、中華風スープ、青菜炒め
マッシュルーム
日本名はつくりたけ。アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど各地で栽培される生産量世界一のきのこです。日本では、くせのない淡泊な味わいのホワイト種、香りが高いブラウン種があり、10~12月が旬です。ビタミンB2、食物繊維が比較的多く、うまみ成分のグルタミン酸を含んでいます。数少ない生食できるきのこですが、ホワイト種は切るとすぐに褐変するのでレモン汁をかけておきます。傷みやすいので早めに食べきりましょう。
調理例:ホワイトマッシュルームのサラダ、マッシュルームのオイル焼き、ポタージュスープ
むかご(零余子)
長いもや自然薯のつるの葉のつけ根にできる直系1~2cmほどの小さな芋(球芽)。むかごは、土に埋めておくと自然薯などが発芽して種と同じ働きをします。9月頃からでき始め、11月中旬頃まで収穫できます。栄養素はカリウム、食物繊維を多く含みます。皮をつけたまま調理でき、塩ゆで、蒸し焼き、炊き込みご飯、汁物の具にも使えます。乾燥しやすいので、保存は湿らせたキッチンペーパーに包みビニール袋に入れて冷蔵庫へ。
調理例:むかごの炊き込みご飯、素揚げ、塩ゆで
なめこ
全体がぬめりで覆われ、つるりとしたのどごしとシャキシャキとした歯ざわりが特徴。市販品の多くは菌床栽培されたものですが、野生種はブナ林に自生して秋に天然物が出回ることがあります。水分が多く、カルシウム、鉄、銅、マグネシウムなどのミネラルも含んでいます。軽く湯通しすれば同じく消化を助けるダイコンと好相性。傷みやすいので早めに食べきりましょう。
調理例:なめこおろし、パターしょうゆ炒め、揚げだし豆腐きのこあんかけ
10月が「名残」の野菜
近年は収穫シーズンが伸びている夏野菜ですが、長くても10月までで一区切り。栄養価の高いものや色形のよい野菜が多いので、冷凍保存したり、みそ・しょうゆ・油などの調味料とあえて保存食にして少しでも長く名残を楽しんでみてはいかがでしょう。
青ジソ
日本では最も古い野菜の一つ。青ジソは大葉とも呼ばれ1年中出回っていますが、旬は7〜10月。ビタミン類、ミネラル類が多く、特にカロテンとカルシウムは豊富。また香り成分には防腐作用があることが古くから知られ、最近ではシソの実を絞って採れた油に強い抗酸化作用が認められるなど、健康野菜として注目されています。保存は、キッチンペーパーに包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で2~3日程度。
調理例:大葉(青ジソ)のしょうゆ漬け、ジェノベーゼソース、大葉みそ
ツルムラサキ
熱帯アジア原産のつる性植物で、つる先の若い葉と茎を食用にします。日本ではもともと染料として使われていましたが、健康野菜として再認識されるようになりました。旬は真夏ですが10月頃まで出回ります。栄養素は、カロテン、ビタミンC、カルシウムが豊富。さっと火を通すと独特のぬめりが出ます。保存は茎に湿らせたキッチンペーパーを巻き、ビニール袋に入れて冷蔵庫で2~3日。下ゆでしたものは冷凍で1カ月程度保存できます。
調理例:ベトナム風スープ、おひたし、ツルムラサキと納豆のあえ物、
パプリカ
唐辛子の仲間で、100g以上の大型の肉厚ピーマンをパプリカと呼びます。緑色のピーマンは未熟な状態で収穫されますが、パプリカは完熟で収穫されたもので、赤、黄色、オレンジ色などがあり、7~10月が旬。色どりもよく、栄養素はビタミンC、E、A、カロテンが豊富。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間。好みの大きさにカットして1カ月程度の冷凍保存もできます。
調理例:パプリカのマリネ、パプリカと豚肉のオイスター炒め、パプリカの甘酢あん
万願寺とうがらし
京都特産の辛みのない唐辛子。大型で果肉は厚めで柔らかく、種も少なく食べやすさが特徴。5月中旬から10月下旬まで出回ります。栄養はピーマンとほぼ同様で、ビタミンC、A、E、カロテンが豊富。カロテンは油で調理すると吸収率がアップします。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間程度。生のまま丸ごと約1カ月間冷凍保存でき、解凍せずに加熱して使います。
調理例:万願寺とうがらしの炒め煮、万願寺とうがらしとベーコンの炒め物、万願寺とうがらしみそ
まとめ
ようやく秋らしい風が吹き、食も進む10月。おいしさと栄養を増した盛りの野菜をたくさんとって食欲の秋を楽しんではいかがでしょう。走りや名残の野菜も上手に取り入れて、旬の野菜を中心とした献立で、お財布にやさしく、栄養価の高い毎日の食事を整えましょう。旬は日本語独特の表現で自然風土に根差しています。国産の野菜で旬の食卓を楽しみましょう。
参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|髙橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)