生理痛がつらい、生理中の経血もれが心配、経済的な理由でナプキンが買えない……。
これまで個人が解決すべきこととされてきた、月経衛生対処(MHM/※1)の問題。それが近年、国際社会では「社会全体で解決すべき課題」に変わってきています。

例えば途上国では、月経(生理)が女性の学校の出席率やジェンダー平等にも深く関わる問題として支援の対象となっています。また生理用品の無償配布や消費税撤廃に動き出す国や地域も出てきました。月経の課題解決はいま、世界各地で大きなムーブメントになっているのです。

日本でも、2023年6月に「女性版骨太の方針2023」が閣議決定され、国の重要課題や政策の方向性を示す方針に、今年、生理の貧困への対策が初めて明記されました。また、2024年度には、女性の健康に特化した「国立高度専門医療研究センター」の開設を予定するなど、新しい取り組みが次々に発表され、社会からの関心の高まりも期待されています。

そこで今回は、開発人類学を専門とし、月経をめぐるウェルビーイングを研究テーマとする大阪大学大学院人間科学研究科教授の杉田映理先生に、海外の月経事情や日本の課題についてお話を伺いました。

月経のあるすべての人がより暮らしやすい社会を作るためには、どうすればいいのでしょうか。一緒に考えてみませんか。

※1 月経衛生対処(MHM) MHMとは、menstrual hygiene managementの略。定義は「女性と思春期の女子が経血を吸収する清潔な生理用品を使い、それをプライバシーが確保される空間で月経期間中に必要なだけ交換でき、石鹸と水で必要な時に体を洗い、使用済みの生理用品を廃棄するための設備にアクセスできること」(参考:WHO & UNICEF 2012, p.16)