JR西日本が3日、芸備線(備中神代~備後庄原間、68.5km)について全国初となる「再構築協議会」の設置を国に要請したことを受け、広島県知事の湯崎英彦氏は「地域公共交通の持続可能性とは何か、議論が必要」とするコメントを発表した。

  • 三次発備後落合行の普通列車。JR西日本のキハ120形で運転される

10月1日に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」(改正地域交通法)が施行され、国による関与の下、鉄道の在り方を検討する「再構築協議会」が新たに創設された。10月3日、JR西日本は芸備線の備中神代駅(岡山県新見市)から備後庄原駅(広島県庄原市)までの区間について、「再構築協議会」の設置を国に要請。人口減少、少子高齢化、道路整備等により、芸備線を取り巻く環境が変化し、利用が大きく減少しており、とくに備中神代~備後庄原間に関して、JR西日本は「将来の地域のまちづくり計画と移動ニーズに適した持続可能な交通体系の実現に向けて、地域の皆様と議論をすることが必要」との認識を示している。

芸備線備中神代~備後庄原間の「再構築協議会」設置が要請されたことを受け、広島県の湯崎知事は、「今後、法に基づき、国から沿線自治体に対して意見聴取がされた場合、本県としては、協議会の趣旨や、協議会で検討すべき内容などを踏まえ、改めて沿線市と協議し、対応を検討したい」「その検討においては、一部区間だけでなく、広域的な観点から、ローカル鉄道と沿線の活性化を含めた幅広い議論がされるべきという点からも考えていきたい」とコメントしている。

加えて、広島県がこれまでも強く主張してきたこととして、持続可能な地域の公共交通を考える際、とくに中山間地域において「全体の予算規模が小さい中で、公共交通に係る補助金等の経費を増やし、将来に渡って負担し続けることは、今後ますますの増大が見込まれる医療、介護といった社会福祉分野など、他の政策的経費に割り当てる予算を結果として圧迫する可能性があり、地方自治体にとって非常に重い負担」となっており、「地域公共交通を担う人材の確保は、少子高齢化による慢性的な人手不足の状況から、現時点においても地方公共団体や地元交通事業者にとって大きな負担となっていることを考慮する必要があります」と説明した。

改正地域交通法の基本方針では、仮にモード転換した場合のJR各社の責任について、「その持続的な運行及び利便性の確保に向け、JR各社が十分な協力を行うべきであること」が基本方針に定められているという。具体例として、「グループ会社による運行」「地元企業への運行委託」「代替交通への共同出資」が明記されたが、その協力については「努めるべき」とされている。「本県としては、こうした協力が確実に行われるよう、今後も、国に求めていきたい」と湯崎知事。「内部補助等の事業構造も踏まえた全国的な鉄道ネットワークの方向性について示すこと」も国に求めた。

  • JR西日本が「再構築協議会」の設置を要請した備中神代~備後庄原間のうち、東城~備後庄原間は広島県庄原市内を走る

なお、国土交通大臣の斉藤鉄夫氏は、10月3日に行われた会見で、改正地域交通法が施行されたことについてコメント。「一つでも多くのローカル鉄道において再構築が進むことを期待しています」とした上で、「国土交通省としても、事業者任せ、地域任せにするのではなく、地域公共交通はなくしてはならない、最も地域の方に便利な、そしてずっと続く持続可能な地域公共交通はなにか、ということを責任を持って国としても後押しをしたい」「事業者、地域、国が一体となって、再構築協議会を活かして地域公共交通を守っていきたいと考えているところです」と述べた。