伊IK Multimediaは、ロボットがサンプリングしたピアノを収録したソフト音源「Pianoverse」をリリースした。IK Multimediaオンライン・ストアおよび、beatcloud、IK Multimedia正規販売代理店にて販売を行なっている。

  • ロボットがサンプリングしたピアノ音源「Pianoverse」

「Pianoverse」は、ロボットがサンプリングしたピアノを収録したソフト音源。スタンドアローンおよび、Audio Units/VST 2/VST 3/AAXプラグインとして稼働する。従来のサンプリングでは、ばらつきのあるタッチで収録されたサンプルを、プログラミングして慣らす必要があったが、Pianoverseでは、各ピアノ、各鍵盤にとって最適なヴェロシティ段階にて打鍵するロボットを使うことで、高精細で、一貫性のあるサンプルを収録することを目指した。

  • サンプリング・ロボット

サンプリング・ロボットは、精密で静かなリニア・モーターと、ゴムと3Dプリンター生成パーツの組み合わせによる弾性のあるアクチュエーターで構成されている。アクチュエーターはモーターから切り離されており、機械的な振動が打鍵するロボットに伝わらない仕組みになっており、アタックからリリースまで人間の指の繊細なタッチをシミュレートする。ロボットが弾いたマイクからの信号はコントロール・ルームのコンピューターに接続されており、そこでは独自のレコーディング・ソフトウェアにより、各ピアノの特徴的なヴェロシティなどの情報と、各サンプルを紐づけした状態で記録される。こうして、各ピアノの全鍵盤、強弱ダイナミクスの全域にわたって正確なサンプルを用意することが可能となり、ばらつきのある人間の演奏をプログラミングにて平坦化、単純化する必要がないため、自然な強弱表現をそのまま、リアルに再現できるという。

  • 細やかなパフォーマンス・コントロールを搭載

求める音色にあわせて最適な鳴り方を追求するために、細やかなパフォーマンス・コントロールを搭載。リリース、ハンマー・ノイズ、ペダル・ノイズ、弦の共鳴、蓋の開閉、音色の明暗など、これまでフィジカル・モデリング音源のみで可能と思われてきた設定のほか、ヴェロシティ・オフセット、カーブの調整も行える。また、ハーフ・ペダル、キャッチ・ペダリング、ウナ・コルダ等のペダル操作にも対応する。

  • サウンド・シェイピングやミキシングに必要なツールも装備

サウンド・シェイピングやミキシングに必要なツールも装備。インストゥルメントとルームのペア・マイクでは、それぞれ複数のモードを備えたEQとコンプが利用可能となっている。最終のマスター・チャンネルには、EQ、VCAスタイルのリミッター、ステレオ・イメージを調整するWIDTH、プレイヤー視点と観客視点の切り替えるFLIPスイッチを用意している。

  • 開発のジェネレーティブ残響エンジンによる空間ジェネレーターを搭載

空間演出のために新開発のジェネレーティブ残響エンジンによる空間ジェネレーターを搭載。全30種の仮想空間に配置できる。コンサート・ホール、スタジオ、クラブ、教会といった演奏スペースから、倉庫、金庫室、氷山、砂漠、火星まで選択が可能。空間を選び、SPACEツマミで響きの量を調整すれば、他のリバーブ・プラグインで試行錯誤するよりも短時間に、効果的な響きが得られるだろう。スペースの中には、空間の響きをさらに変化させるための追加コントロールが使用できるものもあり、これまでに聴いたこともないような、映画的なサウンドやテクスチャが作成できる。

空間ジェネレーターに加え、12種類のエフェクトも搭載。同時に3種類が利用可能となっている。エフェクト・スロットは、センド・エフェクト×1、インサート・エフェクト×2の構成で、4系統のモジュレーション・ソース(エンベロープ×2、LFO×2)を使って、これら3つのスロットのエフェクトのパラメーターを変調できる。

なお、Pianoverseは、1つのインターフェースで、複数のピアノを切り替えて演奏できる。第一弾として「Yamaha CFIII Concert Grand」「Yamaha U5 Professional Upright」「Bösendorfer 280 Vienna Concert」「Steinway & Sons New York D-274」の4種がリリースされた。価格はいずれも20,140円(IK Multimediaオンライン・ストアでの価格は129.99ユーロ)だが、2023年10月31日23:59までの期間限定で、発売記念イントロ価格15,490円(IK Multimediaオンライン・ストアでの価格は99.99ユーロ)での提供を行う。

単体で発売された製品とサンプリングされたピアノは以下の通り。

  • Concert Grand YF3(Yamaha CFIIIをサンプリング)
  • Royal Upright Y5(Yamaha U5 Uprightをサンプリング)
  • Black Diamond B280(Bösendorfer 280VCをサンプリング)
  • NY Grand S274(Steinway & Sons New York D-274をサンプリング)

また、以下の製品の発売を予定しており、計8種のラインナップとなる。

  • Black Pearl B200(Bösendorfer 200を参照)
  • Hamburg Grand S274(Steinway & Sons Hamburg D-274を参照)
  • Gran Concerto 278(Fazioli F278を参照)
  • Liberty Upright(Koch & Korselt Uprightを参照)

単体販売のほか、全音源が使用できるサブスクリプションプランも用意。販売はIK Multimediaオンライン・ストアのみで、月額プランが14.99ユーロ、年間プランが179.99ユーロ。年間プランについては、発売記念イントロ料金として149.99ユーロでの提供を行なっている(提供終了日不明)。