楽天モバイルは10月1日、個人向けの携帯電話サービスに関する「楽天モバイル通信サービス契約約款」を改定した。特異なケースにおける“損害金”の徴収を予告する項目が加わった。
変更点は「楽天モバイル通信サービス契約約款」の「第15条(当社が行う契約の解除等)」と「楽天モバイル通信サービス(5G)契約約款」の「第16条(当社が行う契約の解除等)」の2カ所で、いずれも同じ内容が追記されている。追加された条文を以下に引用する。
「楽天モバイル通信サービス契約約款」の追加項目 |
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契約者が、本サービス利用の意志が無いにも関わらず本契約を締結したことにより、当社に損害が生じた場合、当社は、契約者に対して、別途当社が損害相当額として定める金額の支払いを請求することができます。また、本項に該当すると当社が合理的に判断した場合、当社は原則として本サービスの支払い手段として契約者が登録している支払い手段により当該損害金の徴収を行うものとします。 |
どのような場合に「利用意思のない契約」とみなし、「損害相当額」がどれくらいのものなのかは非開示の方針。ただし前提として、一般的なユーザーが「少し使ってみたけど合わなかった」と再び他社に出ていくような、悪質性のない短期解約にペナルティを課すようなものではない。
導入の背景として、総務省の有識者会議などにおけるモバイル市場の公正な競争環境の整備に向けた議論を経て、近年の大手キャリア各社では、一定の契約期間を満たさない短期解約に対する「違約金」や他社転出時の「MNP予約番号発行手数料」などは徴収しない方向となっており、楽天モバイルも例外ではない。
一方で、市場の流動化という題目を掲げたそのようなガイドラインの制定によって、MNP割引を目当てに契約後すぐに他社に乗り換えることを前提にした“MNP弾”と呼ばれる踏み台目的の悪用を防ぎにくくなってしまった側面もある。利益につながらない短期解約前提の契約が殺到することにより、商戦期の事務処理や発送作業など対応コストの増大に悩まされている事業者はMVNOを含めて多い。今回の“損害金”の導入は、抑止効果も含めてそういった悪用への対策のひとつとみられる。