みなさん、一度は職場やプライベートで同僚や後輩などから相談をもちかけられた経験があるはずです。ただ、"相談に乗る"って意外に難しいこと。

せっかく自分を頼って相談してくれた相手なのだから、納得のいくアドバイスを伝えたいものですよね。今回は、相談に乗るときのコツを7個のポイントに絞って紹介したいと思います。

  • 「上手な相談の乗り方」を知ってる? 臨床心理士がリアルに使う"7つのコツ"とは

そのコツを教えてくれるのは、Je respire代表取締役であり、臨床心理士の松島雅美先生。松島先生は、これまでに医療・教育・福祉・一般企業など、延べ2万5千人以上のカウンセリング経験を持つ、相談のスペシャリストです。

  • Je respire代表取締役であり、臨床心理士の松島雅美先生

先生も実際にやっているという方法は、今日から実践できることばかり。相談に乗る人だけでなく、誰かに相談したいと思っている人もぜひ参考にしてみてください。

■相談に乗るときの7つのコツ

「相談する側は、いろんな意味で緊張しているはず。まずは、"話していいんだ"と思える雰囲気づくりが必要です。聞く姿勢を整えることから始めましょう」

相談に乗ることの第一歩は雰囲気づくりだと、松島先生は言います。では、どんな風に話を聞けばいいのでしょうか。これから順番に説明していきたいと思います。

1. 相談の方法と時間を決める

まずは、いつ、どんな方法で相談に乗るか約束をすることが重要です。事前に口頭、またはメールなどで相談するタイミングをすり合わせます。

「そもそも自分が忙しいタイミングだと、余裕を持って話を聞くことができません。なので、しっかり話を聞くための事前準備として、先に相談内容をメールで聞いておくといいかもしれません。心算があるかないかでは、対応の仕方も変わってきます」

アポイントを取ることで、相談する側は相談内容を整理でき、相談に乗る側は事前にある程度の答えを用意できるかもしれません。相談する側の人は、相手の都合を確認するようにしましょう。ちなみに、内容によりけりではありますが、時間を効率よく使い、より建設的な話をするためにも"話す時間"を決めておくのも良いそうです。

2. 座る位置に気をつける

普段は案外気にしないものですが、相手を緊張させない向き合い方があります。座る位置は真正面、対角線、真横、コの字では、どれが一番相手にリラックスしてもらえるでしょうか? 予想してみてください。

松島先生によると、「緊張しづらい度合いでいうと、コの字が一番理想的。相手はもちろん、自分自身もリラックスできる位置です」とのこと。

この座り方であれば目線がぶつからないので、対面に座ったりするよりも緊張せずに話しができるそうです。些細なことですが、試してみる価値はありますね。

3. あいづちを打つ

「うなずくことで、相手は話しやすく、また(自分自身も)肯定的に話を聞くことができます。これは誰でも簡単にできる、相手に安心感を与える方法です。例えしかめっ面でも、うなずいているのといないのとでは全然違います。安心感は好印象につながるので、頼れる人だという認識になり、報連相が円滑になります。うなずくことは、相談を受ける側にとっても良いことなのです」

もちろん、キツツキのようにあいづちを打ちすぎるのは逆効果。全体の4割程度を意識して、話の切れ目(句読点)にうなずくといいそうです。

4. 相手の話を"そのまま"繰り返す

「相手の言葉をそのまま繰り返すことも効果的なあいづちです。相手の言葉を勝手に解釈して言い換えてしまうと認識のズレが起こりやすくなります」

先生によると、自分の言葉を繰り返されることで、反すうし、思考の整理になり新たな気づきにつながることもあるそうです。もちろん、場合によっては『要するにこういうこと?』と、話を要約してあげることも大切ですが、まずは相手の言葉を"そのまま"繰り返すことを意識してみてください。

"この人と話すと自分の言いたいことが伝わり、一緒に考えてもらえるな"と、思ってもらえることが上手な相談の乗り方のポイントです。

5. 優先順位をつけ何が問題かを明確に

人によっては、話しているうちに何が問題か見失ってしまうことも。

こんなときは、「課題の優先順位を整理しましょう。一番大きな問題、最初に解決したいことなど、解決すべき課題の流れを整理して、まず何をするべきかを明確にすることが大事です」。

人が不安になるのは「わからないとき」。相談者が何のために何をすべきかがわかることが、相談する目的なので、相談したけど結局どうすれば良いかわからなかったということがないようにしたいですね。

6. "3つのクエスチョン"を操る

質問の仕方も重要なのを知っているでしょうか? 大きく分けて3つの質問方法を駆使しましょう。

まず1つ目は"クローズドクエスチョン"。これは、『○○と○○、どちらがいいと思う?』や『賛成? 反対?』のように、あらかじめ答えの選択肢が決まっている質問です。

「これは相手を緊張させづらい質問の仕方なので、会話のきっかけに取り入れるといいですね。特に関係が浅い人に効果的で、答えやすいところが特徴です。例えば、まだ仕事の全容や自分の役割が見えていない新人さんなどには、選択肢を示して質問する方が効果的かもしれません」と松島先生。

しかし、ずっとクローズドクエスチョンだと話は広がりません。そんなときに使えるのが、『~~についてどう思う?』というように、相手の意見を聞くことのできる"オープンクエスチョン"。メリットは、相手の自由な回答や意見を聞くことができる点です。話を広げたり、相手がどんなことを考えているのかを深く知りたいときに使いましょう。

そして3つ目は、例外を聞く質問"ミラクルクエスチョン"。相談する人は、うまくいっていないからこそ相談をしているはず。そんなとき、例外的にうまくいった経験がないか、現実を加味せずどうなることが望ましいかを聞いてみる質問です。

「これは相手に想像させることが目的の質問法。どうなることが一番理想なのかを、相手に考えてもらいましょう。実現するかしないかは別として考えて大丈夫です。相談者が詰まってしまっている場合、"できるかできないかは別にして、どうなったら楽になる?"と問いかけてみてください。このミラクルクエスチョンは、ほかの二つと比べてスキルが必要で、一度視野を広げて最終的に現実的な行動に落とし込んでいく方法です」

この空想をすることで、どうにもならないという思い込みを一度飛ばし、凝り固まってしまった考えをゆるめることができるのだとか。

7. 相手に一般論は言わない

相談する側は一般論を知っている上で困っている場合も少なくありません。そういう相手に一般論を話しても「わかってるよ」と思わせてしまうだけ。

この場合は、「私だったら~とか、同じようなケースでうまくいった方法は~、のような言い方をしましょう。経験に基づいたアドバイスをしてあげると、相談する側も気持ちに寄り添ってもらえている印象になりやすいです」と、松島先生。

一般論がわかっている相手であれば、『普通は~』や『みんなこうしている』は、NGワードということを覚えておいてください。

■最後は"アクション"を示して終わろう!

では、話を聞いたあとはどうするのでしょうか。

最終的にはやるべき行動やアクションを導きだしてあげるのが重要です。「相談を終えたらこうしよう、と思わせてあげるまでが相談」だと松島先生。

「勇気づけて帰してあげるだけでなく、相談者がそこから何か行動を起こせるように導いてあげられることが最適。その後は"これをやってみてどうだったか報告してね"など具体的なフィードバックをもらうようにすることがベストです」

相談は最後に、"こうしてみよう"と行動を決めることが大切。そして、それがうまくいったのかどうかをきちんと振り返ってあげましょう。"●月●日のタイミングで一度、その結果を報告しにきてね"など、振り返るタイミングをその場で決めてしまうのも効果的ですよ。


いかがでしたか? 相談に乗る際の7つのポイントを紹介しました。どれか一つでも覚えておけば、役立つことは間違いないはず。みなさんもぜひ実践してみてください。