スマートフォンと接続してデータ収集や、細かなカスタマイズを行えるスマートデバイスが増えているが、今回は発売されたばかりのスマートフォンと接続できる電動歯ブラシ「Oclean X Pro Digital」をお借りできたので、使い勝手を紹介しよう。
コストパフォーマンスの高いハイエンド電動ハブラシ
Ocleanは2016年に中国・深圳で創業した深圳雲定信息技術有限公司が展開する、デジタルオーラルケア機器のブランドだ。同社は電動歯ブラシや口腔内洗浄機(ウォーターフロッサー)をリリースしており、総合的な口腔ケアデバイスメーカーとして成長を続けている。日本でも各オンライン通販サイトの公式ストアで販売されている。
今回紹介する「Oclean X Pro Digital」(以下、X Pro Digital)は、同社の電動歯ブラシのフラッグシップに位置付けられるモデルだ。
X Pro Digitalは駆動部に駆動部にリニアモーター(回転軸のないモーター)を搭載した、いわゆる「音波振動式」の電動歯ブラシだ。現在、電動ハブラシ市場の主流となっているのがこの方式となる。
X Pro Digitalは同社の最新式リニアモーターを搭載しており、ヘッド部の振動は最大で毎分42,000回(700Hz)に達する(同社の下位モデルは36,000回/分、他社の競合モデルも概ね30,000回クラス)。ちなみに手磨きの場合は300回/分程度と言われているので、実に140倍だ。
音波振動式の特徴として、ヘッドは毛先まで高速で振動しており、これを歯に当てるだけで歯垢を分解し、洗浄できるというもの。従ってゴシゴシと手を動かして磨くのではなく、歯に軽く毛先を当てて満遍なく歯面を磨いていく、というようなスタイルになる。
また、「スマート電動ハブラシ」を名乗るだけあって、スマートフォンと連動する機能もある。詳しくは後述するが、どのエリアを磨いているかを検知し、歯の磨き残しがないように指導してくれる。また電動ハブラシの動作モードが20種類以上搭載されており、目的や好みに応じたモードを切り替えることで、しっかり歯磨きできるようになっている。
スマートフォンと連動できる電動ハブラシは各社から登場しているが、基本的にいずれも2~3万円以上のハイエンド製品が中心。そんな中に2万円を切る低価格で勝負する格好だ。
本体にディスプレイを内蔵
X Pro Digitalの本体サイズはW25×H245×D25mm。重さは約96gと、一般的な電動歯ブラシと同程度。防水はIPX7(一時的な水没に耐える)なので、洗面所で使っていて多少水がかかる程度であればまったく問題がない(本体の丸洗いはやめたほうがいいだろう)。
前述のとおり、Bluetoothを搭載しており、スマートフォンと接続して、専用アプリで様々な設定の切り替えや、歯磨きの状況を記録できる。この点が「スマート歯ブラシ」たる所以となっている。
ユニークなのは、タッチ式のディスプレイを搭載しており、ここに各種のインフォメーションが表示される。磨いているエリアの確認はこのディスプレイにも表示されるので、スマホが手元になくても磨き残しはチェックできる。
充電は専用のスタンドを使用する。スタンドにmicroUSBケーブル(付属)をUSB電源アダプター(別売り)に接続して充電する。今時microUSBなのが少々残念だが、X Pro Digitalセットの場合は、ポータブルケースを使えばUSB Type-Cケーブルでも充電できる。バッテリーの充電時間は約2時間で、1日2回・2分ずつの利用の場合、最大で約30日利用できる。
スタンドの裏側には粘着シートが付いており、これを利用して鏡面などに貼り付け、X Pro Digitalを壁掛けとして使うこともできる。ただし、縦型でぶら下げているときは充電できないので、あくまでそこに固定するだけになる。スタンドを貼り付けた状態でも、接点にX Pro Digitalを差し込めば充電は可能だが、壁から突き出した状態なのであまり見た目がよくないし、不安定なので落下等も心配だ。できればぶら下げ状態のまま充電できればよかったのだが、少し残念だ。「セット」の場合はポータブルケースで充電できるので、こうした心配はない。
「セット」に含まれるポータブルケースは、ブラシヘッド2つと本体を収納できるケースで、USB Type-Cケーブルを接続することで充電機能も装備する。しっかりしたハードケースなので、持ち運ぶ際にも安心感がある。
消耗品としてはブラシヘッドがある。ブラシヘッドは日常使用に適した「デイリークリーン」(堅さは柔らかめ)、歯垢の除去に適しており、舌クリーナーも備えた「プラークコントロール」(堅さは標準)、歯茎に優しい「デリケートケア」(堅さは柔らかめ)の3種類がある。価格はそれぞれ1,980円、2,280円、2,080円で、いずれも2本セットだ。
新興ブランドということで入手性が気になるところだが、各種ネットショップで購入できるので、あまり問題にならないと思われる。ただし、競合他社の替えブラシと比べるとやや高価なので、4本セットなどで割安に購入できる選択肢もほしいところだ。
電動歯ブラシに不慣れな人には衝撃的な体験
それではさっそくX Pro Digitalを使って歯を磨いてみよう。スイッチを入れてみると、ブーンと少し高めの振動音が発せられ、ヘッドが振動を開始する。振動音は公称で45dBだが、少し離れればそれほど気にならないレベルだ。
一度スイッチを入れると、設定したモードに合わせた強さや振動数で2~3分間動作し、自動的に停止する。音波振動式の流儀に沿って、歯面にタッチして1本1本、滑らせるように動かすのを念頭に置いて磨いてみると、2分でほぼ歯全体を磨き終えられた。
ここで本体のディスプレイを見ると、右側下段の外側に少し磨き残しがあるようだ。X Pro Digitalには6軸のジャイロセンサーが搭載されており、これを使って口腔内を上下、左右、表裏の組み合わせで8つのエリアに分けて検知し、歯磨きで磨き残しがある部分を認識しているのだ。足りない部分は再度スイッチを入れて磨き直そう。ちなみに、動作中にスイッチを押せば一時停止できるので、ちょこちょこと停止して確認して磨けば、1回でちゃんと磨ききれるだろう。
筆者は平素、回転式電動ブラシを使っているのだが、音波振動式で磨いた実感としては正直「ちゃんと磨いた気がしない」。しかし歯を触ってみると、ちゃんとツルツルになっている。洗浄力は思いのほか高いようだ。
また、回転式電動ハブラシ使用時はしばしば歯茎から出血が見られていたのだが、音波振動式だとまったく出血がなかった。単に筆者の回転式電動歯ブラシの使い方が悪かったとも言えるが、原理的に歯茎に負担をかけることが少ないのは、歯茎の腫れや出血に悩んでいる人には嬉しい点だろう。
iPhoneユーザーなら「ヘルスケア」と連動
X Pro DigitalはBluetoothを搭載しており、スマートフォンとペアリングすると、専用アプリ「Oclean Care+」を使える。もちろん、AndroidとiPhoneの両方に対応。一度ペアリングすれば、歯磨き終了後に自動でスマートフォン側に情報を同期してくれる。
Oclean Care+アプリでは磨き残しの確認に加え、いつ利用したかも確認できる。歯磨きが習慣化されていない人がモチベーションとして自分の歯磨きを振り返るのにうってつけだろう。
またiOSの場合、歯磨きの記録はOS標準の「ヘルスケア」アプリとOclean Care+アプリを連動することで、「ヘルスケア」内で記録・確認もできる。「ヘルスケア」は体重や血圧などのバイタル情報や、歩数や運動といったアクティビティの記録が行えるアプリだが、ここに「手洗い」や「歯磨き」といった、健康維持のための衛生行動の記録も行える。歯磨きの時間や回数を記録できるので、まとめてデジタルで管理したい人には嬉しいところだ。
スマートフォンと連動できる電動ハブラシは各社から出ているが、「ヘルスケア」と連動できるアプリは、実はほとんどない。小さい点かもしれないが、せっかく「スマートデバイス」を名乗るからにはデータもきちんとまとめておきたいので、個人的には高く評価したい。
電動ハブラシ市場は大手4社がほぼ独占している状態だと言われているが、「X Pro Digital」は、ハイエンドクラスの性能と機能をリーズナブルな価格で実現している意欲的なモデルだ。特にポータブルケース等が付属する「X Pro Digitalセット」は、かなりお買い得感が高い。基本的な性能である洗浄力はもちろん、スマートフォンとの連動機能を重視したいユーザーにお勧めしたい。