第82期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)B級1組は、6回戦全6局が9月28日(木)に東西の将棋会館で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた羽生善治九段-増田康宏七段戦は116手で増田七段が勝利。1敗同士の直接対決を制して単独首位に躍り出ました。
相掛かりから相自陣角
ともに4勝1敗で迎えた上位対決は先手・羽生九段の注文で相掛かりの戦型に。銀が来ることの多い3八の地点に右金を上がったのが最新形からのマイナーチェンジで、羽生九段はクラシカルな中住まいに構えて戦いの時を待ちます。対する後手の増田七段は右銀をまっすぐ上がる現代的な駒組み。コンパクトな布陣で先攻を目指しました。
駒組みが煮詰まったところで増田七段が動きます。十字飛車の要領で横歩をかすめ取ったのがこの戦型頻出の仕掛けで、これに対し羽生九段が右からの端攻めで応じたことで局面は一気に激しさを増します。両対局者は5筋に自陣角を打ち合って敵陣をけん制。盤面全体を使った競り合いが一段落したところが中盤の勝負所となりました。
増田七段が攻め切って快勝
左辺から飛車を成り込んだ増田七段は右辺にも馬も作って好調の攻め。2筋に歩を打ってこの馬を捕獲したのは羽生九段期待の反撃でしたが、増田七段はここから読み筋とばかりに素早い指し手でリードを奪います。スパッと馬と銀を刺し違えたのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの好手で、手順に飛車を捕獲して先手に息つく暇を与えません。
防戦一方の時間が続く羽生九段は玉の上部脱出に活路を見出しますが、増田七段の寄せは正確でした。終局時刻は23時23分、最後は自玉の受けなしを認めた羽生九段が投了。羽生九段としては中盤に打った自陣角が最後まで働かなかった点が響いた形です。勝った増田七段は5勝1敗で単独首位に立ちました(羽生九段は4勝2敗)。
増田七段―近藤誠也七段戦、羽生九段―山崎隆之八段戦を含む次回7回戦は10月19日(木)に各地の対局場で行われます。
水留 啓(将棋情報局)