The Raspberry Pi Foundationは9月28日 (現地時間)、シングルボードコンピュータの新製品「Raspberry Pi 5」を発表した。2016年にRaspberry Pi 3 Model Bを発売してから、コミュニティで高まるパフォーマンスに対する要求に応えるべく、プラットフォームの抜本的な見直しを進めてきた。その成果であるRaspberry Pi 5は、Raspberry Pi 4に比べてCPUが2〜3倍高速になり、グラフィックス性能も大きく向上。さらにメモリとI/O帯域幅が約2倍に拡大している。また、Raspberry Pi独自開発のI/Oコントローラー「RP1」を搭載しており、I/Oのボトルネックを解消し、与えられたワークロードをより迅速かつ効率的に処理できるようになった。

新プラットフォームは、アプリケーション・プロセッサー(AP)の「BCM2712」、I/Oコントローラー「RP1」、パワーマネージメントIC(PMIC)「DA9091」の3つで構成される。

BroadcomのBCM2712は16nmプロセスで製造されるAPで、CPUは4コア/2.4GHzのArm Cortex-A76。コアごとに512KBのL2キャッシュと2MBの共有L3キャッシュを備える。Raspberry Pi 4に採用されてきたBCM2711 AP(28nmプロセス製造)に比べて、クロックあたりの命令数が増加し、命令あたりの消費電力は少ない。GPUはVideoCore VIIで、同時に2台の4Kp60 HDMIディスプレイの駆動が可能。

I/O機能については、従来は全ての機能をAPに統合していたが、高速処理を要するデジタル機能やSDカード・インターフェイス、高速インターフェース(SDRAM、HDMI、PCI Express)だけをAPで扱うようにした。それ以外のI/O機能はRP1にオフロードし、PCI Express経由でAPに接続する。この変更により、APのパフォーマンス・ボトルネックを回避できると共に、I/Oコントローラは古いプロセスノードのまま、APは新しいプロセスノードに移行できるようになる。

DA9091は、Cortex-A76コアやその他のデジタル・ロジックが必要とする様々な電圧を生成する8つの独立したスイッチモード電源を統合している。

Raspberry Pi 5の外観は、クレジットカードサイズのフットプリントはそのままに、新しいチップセットの機能に合わせて、いくつかのデザイン要素がアップデートされた。

4極のコンポジット・ビデオとアナログオーディオ・ジャックがなくなり、4極ジャックとカメラ・コネクタがあった場所に、2つのFPCコネクタが追加された。これらは4レーンのMIPIインターフェイスで、これまでCompute Module I/Oボードに採用されていたものと同じ高密度ピンアウトを使用している。つまり、これまでCompute Moduleが必要だったCSI-2カメラやDSIディスプレイをRaspberry Pi 5で扱えるようになった。

ディスプレイ・コネクタがあったボードの左側の場所に、PCI Express 2.0接続を1レーン提供するFPCコネクタが設けられた。また、Raspberry Pi 4では右上にある有線LANポートが右下に戻され、4ピンのPoEコネクターも移動した。ボードのレイアウトがシンプルになった反面、既存のPoEおよびPoE+ HATとの互換性が失われた。

USB3.0ポートは2つでポート数は変わらないが、2つのコントローラーを搭載し、同時にそれぞれ最大5Gbpsのデータ転送が可能。microSDスロットもより高速なSDR104モードをサポートする。そして、電源ボタンを初めて実装した。PCの電源ボタンと同じように、ハード/ソフトの電源オン/オフを行える。

以下は主な仕様:

  • CPU:2.4GHzクアッドコア64ビットArm Cortex-A76 CPU
  • GPU:VideoCore VII(OpenGL ES 3.1、Vulkan 1.2対応)
  • ワイヤレス:デュアルバンド802.11ac Wi-Fi、Bluetooth 5.0 / Bluetooth Low Energy (BLE)
  • インターフェイス:USB3.0ポートx2、USB 2.0ポートx2、microSDカード・スロット(SDR104モード対応)、Gigabit Ethernet、HDMI×2(4K/60p、HDR対応)、MIPI(4レーン)×2、PCI Express 2.0 x1、40ピンGPIO
  • その他:リアルタイムクロック、電源ボタン

メモリ容量が4GBと8GBのモデルがあり、価格はそれぞれ60ドル、80ドル。販売パートナーの予約受け付けをすでに開始しており、10月末までに最初のユニットの出荷を開始する予定だ。

アクセサリーは、Raspberry Pi 5のレイアウトやインターフェイス、特徴に合わせてアップデートしたケース(10ドル)、継続的な高負荷使用向けのアクティブクーラー(5ドル)、27W USB-C電源(12ドル)、MIPIコネクタにカメラやディスプレイを接続するためのケーブルなどが用意されている。さらに2024年初旬に新しいPoE+ HATとM.2 HATの提供を予定している。

  • アクティブクーラー